DXの温度差に乖離、現場の8割は熱望だが経営者は?
DXの温度差に乖離、現場の8割は熱望だが経営者は? Image: Unsplash/Headway
国内におけるBNPL決済サービスのパイオニア企業ネットプロテクションズは、企業の社員と経営者を対象としたDXに関する意識調査を行いました。それによると、集金業務などの現場で働く人たちと経営者との間に、DXに対して大きな意識の差があることがわかりました。
この調査は、訪問先での会計や本問集金を行っている人(回答数289)と、請求業務のあたる営業職(回答数361)と経営者(回答数360)を対象に2回に分けて、2022年12月27日から2023年1月4日にかけて行われています。
集金担当者に、自社にDXが必要な部署があるかと尋ねると、合計で82.7パーセントの人が「ある」と答えました。DXに期待される効果としては、業務の効率化、コスト削減のほかに、新規顧客の開拓、自社製品とサービスの品質向上といった建設的な意見が上位を占めました。また、8割近くの人が、業務の効率化で顧客対応のための時間が増やせると答えています。さらに、業務の効率化で得られた時間を使って価値創造を発揮できる業務に挑戦したいと考える人が、「とても思う」と「やや思う」の合計で85.1パーセントにのぼりました。現場の人たちは、DXをとてもポジティブに捉え、大きな期待を寄せていることがわかります。
請求業務の営業職と経営者とにDXに期待される効果を尋ねると、業務の効率化、コスト削減、新規顧客の開拓と、集金担当者とほぼ同じ結果が得られました。その割合は、営業職と経営者との間にあまり差がありません。DXへの期待はみな同じということです。
ところが、具体的にDXが必要な部署を尋ねると、営業職の50.7パーセントが「営業や販売」と答えたのに対して、そう考える経営者は18.6パーセントでした。以下、経理と財務を除いてすべての部署で、営業職よりも経営者のほうが必要性を低く見ていました。しかも、「特になし」では経営者が53.1パーセントと、すべての項目をつうじて最大の割合になっています。
お金を扱う業務では、現場作業でトラブルを経験した人は8割近くにのぼっています。そして、現場担当者のほぼ8割が現金の取り扱いを止めるべきと考えています。また、取引先から現金払い以外の方法で支払いたいと言われた経験がある人は7割でした。
経験したことのあるお金のトラブルで多かったのが、顧客の支払い遅延、未回収金の発生、売り上げと集金の額の不一致などですが、すべてにおいて営業職よりも経営者のほうが小さな数値となりました。しかも、「トラブルは発生していない」と答えたのは、経営者が56.4パーセントと、営業職の49パーセントを上回りました。
これらを総合すると、この調査に限って言うならば、経営者はちょっと呑気に見えます。DXの恩恵は同様に理解していても、現場の人間ほど切実にDXの必要性を感じていないうえに、現場の人たちのDXに対する思いを理解していないようです。現場の人たちはDXで楽がしたいと言っているのではありません。業務の効率化によって、もっといい仕事ができると意欲を示しているのです。どうか、そこに気づいてほしいですね。
文 = 金井哲夫
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