世界経済フォーラムの取り組み

仕事の世界を形作る5つのトレンド:官民連携でより良い未来を構築する方法

働き方は変化しています。

働き方は変化しています。 Image:  Getty Images/iStockphoto

Steffica Warwick
Specialist, Work, Wages and Job Creation, World Economic Forum
Tarini Fernando
Lead, Equitable Transition, World Economic Forum
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インパクト
世界経済フォーラムは、{Topic}}に関する行動を加速させるために何をしているのか
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ダボス議題

本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム 年次総会2023
  • 雇用と労働力不足から賃金の低下まで、5つの主要なトレンドが仕事の世界に影響を与えています。
  • これらのトレンドにうまく対応することができれば、国の発展や企業の繁栄に大きなチャンスをもたらすでしょう。
  • CEOや閣僚、他のリーダーが連携する世界経済フォーラムの「ジョブ・コンソーシアム」は、年次総会で仕事の未来の新しいビジョンを示し、行動のロードマップを議論しています。
  • 同コンソーシアムの7人のメンバーが、官民連携を通じて、すべての人にとってより良い未来を創造する方法を紹介します。

世界の労働市場は、国により異なる方向に向かっています。低中所得国では、高い失業率の中で労働年齢人口が増加する一方、先進国は、高齢化、労働力の減少、労働市場のひっ迫に直面しています。

テクノロジーの継続的な進歩、グリーン・トランジション、バリューチェーンの再構築は、いずれも国の成長と企業の繁栄に大きなチャンスをもたらすものです。

しかし、これらは雇用の流動性を高め、ある職種や分野では大きな成長やチャンスが生む一方で、他の分野では衰退や混乱をもたらすことになります。

各国政府は、どのようにして新しく、より良い仕事の機会を積極的に開拓し、マイナス面を最小限に抑えることができるのでしょうか。企業は、より良い仕事の未来への移行をどのように支援すればよいのでしょうか。

仕事の世界に影響を与える5つの主要トレンド

1.低中所得国における雇用の不足

世界の雇用は、まだ新型コロナウイルス感染拡大以前の水準まで戻っていません。国際労働機関(ILO)の報告によると、2022年第3四半期の世界の労働時間は、パンデミック(世界的大流行)以前の水準を1.5%下回り、この数字は、4,000万人分のフルタイム雇用に相当します。特に、低中所得国や低中技能職において顕著であり、国や労働者層によって雇用回復に差があることがわかります。一方、世界の生産年齢人口は、低中所得国を中心に大幅に増加しています(今後10年間で約7億人)。国連は、今後10年間で、ケア、デジタル、グリーン経済などを含む4億人の雇用の創出を目指しています。

2.高所得国での労働力不足

逆に、高所得国の多くは労働力不足に陥っています。例えば、米国では、2022年11月時点で1,000万以上の仕事に欠員が生じています。これは、失業者一人あたり1.74の求人があることを意味します。特に、外食産業や製造業などの産業が影響を受けています。パンデミックが始まって以来、140万人が製造業から離職し、業界は、空いたポジションを埋めるために、新入社員や熟練労働者を雇用するのに苦戦しています。経済協力開発機構(OECD)によると、欧州でも同様に、製造業とサービス業のほぼ10社に3社が、2022年第2四半期に労働者不足による生産制約を報告しました

3.世界的に高まる転職の波

グリーン・トランジション、技術導入の増加、地政学的な変化により、世界の労働市場は変化し、世界的に転職が増加しています。世界経済フォーラムの「仕事の未来レポー ト(Future of Jobs Report)」では、2025年までに人間と機械の分業が変化することで、9,700万人の新たな雇用が創出される一方、8,500万人の雇用が代替えされると予測しています。同時に、気候危機は、労働市場におけるグリーン・トランジションを促しています。世界経済フォーラムの「明日の仕事:包括的でサステナブルな経済を構築するための、社会的な仕事とグリーンな仕事に関するレポート(Jobs of Tomorrow: Social and Green Jobs for Building Inclusive and Sustainable Economies Report)」は、このことが、農林水産業従事者・アドバイザー、ライフサイエンス技術者など、グリーンな仕事への需要を高めているとしています。

農林業が最も需要のある仕事の上位を占めています。
農林業が最も需要のある仕事の上位を占めています。 Image: World Economic Forum

4.世界的な賃金への圧力

さらに、賃金が懸念事項となっています。新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の多くの労働者の実質賃金を引き下げる圧力となりました。ILOによると、世界の労働者の5人に3人は、労働所得が2019年第4四半期に見られた水準まで戻っていない国に居住しています。そして、世界的な高インフレと生活コストの上昇が、パンデミック後の賃金上昇を損なわせており、15年以上ぶりに実質賃金は0.9%の低下となりました。.

5.仕事の質が課題

同様に、仕事の質をめぐる課題も表面化してきました。米国ギャラップ社の調査によると、学習や成長の機会、大切にされているという実感、期待値の明確さなどの要素が、労働者の仕事へのエンゲージメントを決定し、積極的に仕事にエンゲージしている従業員の比率は、そうでない従業員に対して、過去約10年間で最も低くなっています。仕事の質も従業員の定着率に影響しています。インドでは、マッキンゼー社の調査に回答した人の60%以上が、同等以上の給与や福利厚生が他の職場で得られると確信しているために、今の仕事を辞めたいと答えています。世界中で、従業員は仕事との関係を新たに構築しようとしているのです。

より良い仕事の未来が今こそ必要とされており、その実現は可能であると、ジョブ・コンソーシアムは考えています。

ジョブ・コンソーシアム

世界経済フォーラムの「ジョブ・コンソーシアム」は、すべての人にとってより良い仕事の未来を構築するための共通のビジョンを持つ、CEO、閣僚、その他のリーダーによる連合体です。彼らは、次の3つの重要な分野で連携、行動することを奨励しています。第一に、「未来の仕事レポート」など、世界経済フォーラムで深められた知見を活用し、将来に備えるために労働市場の動向に関する先見性を高めること。

第二に、雇用機会を改善する官民連携のプラットフォームである「ジョブ・アクセラレーターズ」や、社会と環境の変革に必要なグリーンな仕事や社会的な仕事を特定する、「明日の仕事の白書(Jobs of Tomorrow whitepaper)」シリーズ、「雇用創出についてのグローバル未来評議会(Global Future Council on the Future of Job Creation)」といったイニシアチブによって、より良い雇用創出につながる主要分野への投資を特定することです。


第三に、高い仕事の質、公正な賃金、ダイナミックな雇用の移行を支援することです。これは、140人以上の最高人事責任者から成るコミュニティ、「グッドワーク・アライアンス(Good Work Alliance)」の知見によってサポートされています。このコミュニティは、「グッドワーク・フレームワーク(Good Work Framework)」や「難民の雇用と就業能力支援イニシアチブ(Refugee Employment and Employability Initiative)」で定められた基準や指標を支持し、「良い仕事」の確保に向けて行動を起こしています。

ジョブ・コンソーシアムのメンバーや特別ゲストは、2023年の世界経済フォーラムの年次総会で、未来の仕事についてのビジョンを示し、行動のためのロードマップについて議論を進めています。すべての人にとってのより良い仕事の未来を、官民連携により実現する方法について、ジョブ・コンソーシアムの6人のメンバーと特別ゲストの見解を紹介します。

「変革を成功とその成果の持続性を左右するのは、人です。従業員に進化したツールやスキルを身につけさせ、彼らが成長し、活躍できる機会を創出する。これが、人材をエンパワーすることに重点を置き私たちが行なっていることです」

ファイサル・F・アリブラヒム サウジアラビア経済・計画大臣

「『グアテマラ前進計画(The Guatemala Moving Forward Plan)』は、ニアショアリング投資の誘致と中小企業の活性化により、10年以内にグアテマラ人に250万人分の質の高い雇用を創出することを目標としたユニークな官民連携プログラムで、この地域の先例となったものです。こうした取り組みは、世界経済フォーラムのジョブ・コンソーシアムのように、他国がより良い雇用を創出し、経済成長を加速させるための指針となるでしょう」

ジャニオ・ロサレス グアテマラ共和国経済大臣

「オランダ政府が今後数年間で取り組むべき最優先課題の一つは、仕事の世界における急速な技術発展の中で、誰一人取り残さない包括的な労働市場を作ることです。ジョブ・コンソーシアムという枠組みを通じて官民連携を強化することで、その実現に向けた大きなステップを踏み出すことができると確信しています」

カリン・ヴァン・ゲニップ オランダ社会・雇用大臣

「活気に満ちた包括的な雇用市場は、すべての社会が行うべき最も重要な投資です。さまざまな分野や職業において良い雇用を創出するだけでなく、生涯学習やアップスキリング(技能向上)、キャリアのアジリティ、将来の需要とスキルの効率的なマッチングを組織的に行うため、各国政府、雇用者、さまざまなソーシャルパートナーがパートナーシップを築き、計画的に努力を積み上げる必要があります」

ターマン・シャンムガラトナム シンガポール政府上級大臣

「リンクトインでは、リアルタイムの労働市場動向の分析により、職場の公平性、包括性、公正性を高めるための意思決定に役立つ独自の知見を引き出すことができます。世界経済フォーラムとのコラボレーションを通じて、私たちこれらの知見を活用し、すべての人のためのより良い仕事の未来を創造することができます」

米国リンクトイン 共同創業者兼製品担当副社長 アレン・ブルー氏

「リクルートグループは、世界中の人々と仕事の機会を、より速く、よりシンプルに、より人間らしく結びつけることを目指し、成長を続けるテクノロジー企業です。世界経済フォーラムのジョブ・コンソーシアムに貢献し、労働市場に関する洞察を共有することで、すべての人が共に繁栄できる世界を実現することを楽しみにしています」

リクルートホールディングス代表取締役社長 兼 CEO 出木場 久征氏

「ユニ・グローバル・ユニオンは、最低賃金を生活賃金とし、団体交渉権を含む労働者の権利が尊重・遵守されることを保証する仕組みを導入することで、不当な賃金や劣悪な労働条件の改善に取り組んでいます。強い労働市場を発展させる上で、公正な賃金と質の良い組合員の仕事が不可欠であることを強調するために、ジョブ・コンソーシアムに参加できることを光栄に思います」

ユニ・グローバル・ユニオン書記長 クリスティ・ホフマン氏
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