小規模ビジネスの背後にある大きなチャンス

中小企業は数多くの国の経済を支えています。

中小企業は数多くの国の経済を支えています。 Image:  Unsplash/Bench Accounting

Olivier Woeffray
Practice Lead, Strategic Intelligence, World Economic Forum
Olivier M. Schwab
Managing Director, World Economic Forum
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中小企業

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  • 中小企業の67%が生き残りをかけて闘っており、全世界の雇用とGDPの70%を牽引していると言われています。
  • 中小企業や中堅企業は、数多くの国の経済を支える存在であり、こうした企業の成功を確かなものにするための協力は欠かせません。
  • スマートなデジタル、サステナビリティ、人材戦略は、中小企業や中堅企業の将来的な対応力を高めることができます。

中小企業や中堅企業は、数多くの国の経済を支えています。こうした企業の成功と、世界で最も差し迫った課題に対するインパクトを確かなものにするために、私たちは連携する必要があります。

小規模企業は全企業の90%を占め、世界の雇用と国内総生産(GDP)の70%近くを担っています。世界経済フォーラムの最近の調査によると、中小企業と中堅企業の67%が生き残りをかけて闘うことを最重要課題と位置づけ取り組んでいることが明らかになりました。


こうした背景を踏まえると、世界経済フォーラムが発表した「中小企業・中堅企業の将来への備え:1年後の現在(Future Readiness of SMEs and Mid-Sized Companies: A Year On)」の内容は、驚くべきことではありません。同レポートは、小規模企業が世界経済、地域経済、地方経済全体を成長、革新、持続させるために必要なものを備えている、と報告しています。今こそ、そのポテンシャルを生かすべき時なのです。

世界の激動の最前線にいる中小企業

ポストコロナ時代は、多くの人が当初期待していたよりもかなり厳しいものとなっています。地政学的緊張の高まり、エネルギー危機、サプライチェーンの混乱、ハイパーインフレ、異常気象などは、今後10年を厳しい時代にする要因のほんの一部に過ぎません。

こうした激動の最前線に立たされるのが中小企業です。新型コロナウイルスの感染拡大による小規模企業の廃業は、パンデミック(世界的大流行)による倒産の3分の1に達するという試算もあるほどです。

そのため、生き残りと成長が重視されるあまり、長期的な成功に不可欠な要素に目を向けることができなくなるのです。

レポートによると、現在、中小企業・中堅企業の経営者の67%が頭を悩ませている最重要課題は「生き残りと拡大」で、経営者の約半数が「人材」を主な課題の一つに挙げています。一方、「テクノロジーとイノベーション」を重点分野に挙げる企業はわずか25%、「サステナビリティ」を重要な課題とする企業はわずか7%でした。

中小企業・中堅企業の経営者が直面する課題の上位。
中小企業・中堅企業の経営者が直面する課題の上位。

つまり、問われるべきことは、中小企業と中堅企業が当面の生き残りを確実にし、なおかつ独自の能力を活かして長期的な成功と将来へ向けた準備を徹底するためできることは何であるか、ということです。

スマート戦略で未来に対応した能力を開発

未来への備えとして、次の3つの能力が重要になります。

  • 長期的な成長:革新的なビジネスモデル、製品、サービスによって持続的な財務力を生み出す能力。
  • 社会的な影響:外部に与えうるプラスとマイナスの影響に対処する能力を備えるだけでなく、最も重要なのは、あらゆる事業上の成果が環境、社会、ガバナンスの目標に合致したプラスの影響を社会に与えることです。
  • 適応能力:困難な状況下でも立ち直り、チャンスを見定めて逃さず、将来のビジネスモデルにおけるディスラプション(創造的破壊)を創造する、高いレベルのレジリエンス(強靭性)とアジリティを身につける能力。
    こうしたコア能力は中小企業と中堅企業の成功を実現するだけでなく、世界経済、地域経済、地方経済の成長、革新、持続可能性の本質的な形成につながるでしょう。

未来に向けた準備を企業戦略に組み込む

未来に向けて備える能力の開発は、その場しのぎの取り組みに終わらせず、主要な企業戦略や意思決定プロセスに組み込むことが効果を確実にする上で重要になります。最初から企業の基本的なビルディングブロックの一部となるように組み込むことができれば、理想的でしょう。

現在の状況を踏まえた結果、適応能力、つまりレジリエンスとアジリティを重視することで、変動が激しく不確実な環境において、小規模企業の未来に向けた準備に段階的な変化をもたらす可能性があることがわかりました。

調査によると、中小企業や中堅企業は大企業に比べてレジリエンスが低い傾向にあるものの、アジリティが非常に高いレベルであることが分かっています。

レジリエンスに取り組むことで、企業は短期集中型、生存重視型から脱却し、中小企業の最も重要な競争優位性の一つである高いアジリティを最大限に活用することができるのです。

中小企業や中堅企業が、成熟度合いに応じてレジリエンスを高めるために、以下の点を参考にすることができます。

  • エマージェンス:真のリーダーは自社の将来的な備えに関して、ポジティブかつ強い影響を与えます。彼らは、ビジョンと価値観、自己認知、自己規制、ポジティブなモデリング、信頼性の促進によってリードします。その結果、従業員が組織のミッションを達成するためにより一層の努力をするようになるのです。
  • 人材開発:小規模企業にとって、適材適所がレジリエンスの主要な推進力であると理解する必要があります。ここでいう「適切な」人材とは、会社の目的に賛同し、他者と協調して働き、与えられた役割を果たすための才覚や情熱といった補完的な資質を備えている人のことです。小規模企業は、価値観を訴求し、その価値観に沿った環境を提供することができます。
  • 整合性:小規模企業では、リーダーと人材の適材適所がレジリエンスや将来への対応力に大きく影響しますが、成熟した企業は、方向性、ビジネスモデルの柔軟性、ネットワーク、デジタル・インフラ、ガバナンスなどの事業フレームワークの開発を重視する必要があります。

中小企業にとってガバナンスを明確な事業戦略として活用することは、未知の領域なので、特に重要な鍵となります。さらに、小規模企業が高いアジリティを活用できる機会として、3つの分野を特定しました。

  • デジタル:大企業は、惰性を克服し、従業員の変革への意欲を高めることに苦労する傾向にありますが、小規模企業は迅速なコミュニケーションチャネルと密接な関係を活かして、デジタルトランスフォーメーションを大規模企業より早いスピードで開始・実行することができます。
  • サステナビリティ(持続可能性):ホリスティック(全体論的)なビジネスライフサイクル分析を体系的に行い、このデータを活用して低炭素化イニシアチブの戦略と優先性を周知し、サステナビリティ分野における組織の成熟度に合わせた取り組みを構築します。
  • 人材:組織文化や組織の価値観の優先化と周知を行い、非公式な人事慣行を会社のために活用し、さらにスキルや経験と同じくらい(あるいはそれ以上に)従業員と組織のマッチングを優先させます。

中小企業への幅広いサポートが必要

中小企業や中堅企業は、必要な作業の多くを自社で行うことができますが、それを支援する幅広いエコシステムと政策環境が必要です。

これは、こうした企業にとって大きな課題として強調されており、24%~25%が資金調達と資本へのアクセス、政策環境を課題に挙げています。

特に、小規模企業の国際的な取引をサポートするため、デジタル商取引に関する支援に加えて、国境やサプライチェーンを越えた貿易データの調和と相互運用性の促進に向けた施策を実施することができます。

また、より広範な政策環境が、小規模企業の成功力に与える影響を認識することも重要です。政策立案者、投資家、その他のステークホルダーは、経済圏内の小規模ビジネスセグメントが、未来に向けた準備を構築できるよう支援するために、できることを確実に行う必要があります。

中小企業の大部分が生き残りをかけて闘っている状況は、解消されなければなりません。こうした企業に世界の労働力の大部分が依存している現状や、廃業の危機にある企業によって、世界のGDPの大部分が生み出されている事実も見過ごすことはできません。中小企業や中堅企業は、未来に向けてビジネスモデルを方向転換させる独自の能力と強さを備えています。こうした企業の可能性を最大限に引き出す手助けをしなければなりません。

フォーラムはこの研究で得られた知見を活用して、中小企業や中堅企業の未来志向の取り組みをさらにサポートしていきます。未来への準備である自己評価とベンチマーキングツール、企業間のピアツーピア学習や専門家との交流のための中小企業デジタル・コミュニティの創設、そして、ミッション志向の中堅企業で構成されるニュー・チャンピオンズの拡大などを通じて支援していく予定です。

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