いつかまた来る津波、官民連携とテクノロジーで災害リスクに備える
東日本大震災の教訓から、日本は防災の重要性を世界に強く訴えてきました。 Image: REUTERS/Carlos Barria (JAPAN - Tags: DISASTER ANNIVERSARY ENVIRONMENT)
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日本
- 東日本大震災の発生から11年半の歳月が流れた今、再び巨大地震と大津波の発生が切迫しています
- 日本は、津波に強いまちづくりの実現という観点で、世界をリードする取り組みを進めています
- 官民連携とテクノロジーの融合が、防災・減災への日本の革新的な取り組みの軸となっています
11月5日は「世界津波の日」。津波の脅威と対策についての理解と関心を深めることを目的に、2015年に制定されました。
東北地方を中心に、未曾有の災害をもたらした東日本大震災。2011年3月11日、14時46分発生したマグニチュード9.0の大地震は、岩手、宮城、福島県を中心とした太平洋沿岸部に巨大な津波を引き起こし、多くの市町村を飲み込みました。岩手県の沿岸を襲った津波は、国内観測史上最大となる40.5mにも達し、ここでも壊滅的な被害をもたらしました。
千島・日本海溝地震への備え
東日本大震災の発生から11年半の歳月が流れた今、再び巨大地震と大津波の発生が切迫しています。そのリスクが極めて高いのは、この震災の被災地を含む北海道から岩手県にかけての沖合にある「千島海溝」と「日本海溝」です。
9月末、日本政府は、千島海溝・日本海溝沿いで想定される巨大地震と大津波に備え、防災・減災対策を推進する地域を新たに指定。津波による甚大な被害の恐れのある7道県108市町村は、「特別強化地域」に指定され、国による財政的な支援が強化されることになりました。
千葉県の銚子市は、その特別強化地域のひとつ。同市では、津波避難タワーや避難のための道路などの整備が進められていますが、国はその費用への補助を2分の1から3分の1に引き上げることを決定しました。
千島海溝・日本海溝沿いで巨大地震が発生した場合、20万人近く死者が出る可能性もあると予測されています。日本政府は、その数を今後10年で8割減少させる目標を掲げた基本計画も公表しました。
確実な情報伝達で人的被害を最小限に
地震発生時、自治体は、多くの場合防災行政無線システムを利用して避難情報の伝達を行います。しかし、総務省の調査によれば、18,000人の犠牲者を出した東日本大震災発生時、津波で浸水した地域に住んでいた35%の人が、スピーカーから流れる音声案内が聞こえていなかったことが分かりました。津波の人的被害を最小限に抑えるために重要なのは、地震発生後、一刻も早く高台へ避難すること。できるだけ多くの住民に津波情報を確実に伝達する手段を確保することが課題として浮き彫りになったのです。
世界初、自動運行ドローンで津波避難の呼びかけ
銚子市と同様に、「特別強化地域」に指定された宮城県仙台市は、テクノロジーとビジネスを融合してこの課題解決に取り組んでいます。
その代表事例として開発と実証実験が続けられてきた、津波避難を呼びかける全自動運転のドローンが、本格運行を開始。ノキア、日立、ブルーイノーベーション、アンデックスの4社と仙台市による官民連携により実現しました。開発されたドローン2機は、仙台市宮城野区と若林区の沿岸部およそ8kmの区間で二手に分かれ、上空50メートルから避難を呼びかけます。
このドローンの最大の特徴は、災害時にも回線の混乱の恐れがない専用のプライベートLTE通信網を用いていることです。11年前の大震災発生時、車両で避難の誘導にあたった市の職員2人が津波の犠牲になり命を落としたことを教訓に、同市は、人手を介さずに安全かつ迅速な方法で避難を促すためにこのシステムを開発しました。ドローンに搭載された赤外線カメラが飛行中に被災者などを撮影して市の災害対策本部に送信することで、安全かつリアルタイムに、遠隔地の被災状況を把握できるようになります。
災害時でも繋がりやすい専用の通信網を使い、自動で津波からの避難を呼びかけるドローンの運用は世界で初めて。ヘリコプターよりも早く出動し、低空から呼びかけができるという点が利点です。将来的には、警察や消防などとも連携し、通行ができないルートや火災、停電状況などもタイムリーに共有することで、より迅速な救助活動の実現が期待されています。特に、危険な場所にでも簡単に飛んでいけるドローンは、二次災害の防止に役立つでしょう。
防災先進国の日本が世界で果たす役割
東日本大震災の教訓から、日本は防災の重要性を世界に強く訴えてきました。現在、災害関連に充てられている世界の政府開発援助(ODA)の約96%は、災害発生後の復旧のためであり、災害リスクの軽減のためにはわずか4%しか割かれていないと言われています。「この方程式を逆転させることが、災害による壊滅的な被害を防ぐ唯一の解決策です」と語るのは、国連防災機関(UNDRR)の事務総長特別代表である水鳥真美氏。日本は、開発途上国における早期警報システムの構築など、防災分野のODAプロジェクトに力を入れている数少ない国の一つです。
東日本大震災の教訓から得られた、人、地域、そして企業の防災に対する考え方は、日本の防災・減災への取り組みや技術を一変しました。官民連携があっての対策を進める今の日本は、気候変動が原因で引き起こされる津波の危機にさらされる国々を、津波に強いまちづくりの実現という観点から、防災・減災への道へとリードすることができるのです。
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