少子高齢化が加速する日本「実感としての幸せ」に影響を与える要因
国連の世界幸福度ランキングで、54位に位置する日本 Image: Unsplash
- 高齢化の課題解決において、日本は世界をリードするチャンスを手にしています
- 労働人口の減少に伴い、日本の社会構造は変革期を迎えています
- 豊かさと幸福を実感できる社会作りに動き出す時がきています
少子高齢化は世界が直面する喫緊の課題です。そして、その「最前線」を走る日本の人口急減、超高齢化に歯止めがかかりません。目下進む少子化の最大の原因は、若い世代の未婚化・晩婚化で、その背景には若者世代の将来への社会的、経済的不安があります。安定した生活を維持するためには、結婚や子育てなど家庭を作っていく将来設計よりも、仕事、キャリア形成を優先せざるを得ない意識が形成されてしまっていることが考えられます。
同時に進んでいる高齢化もまた、諸外国に類を見ない速度で進行しています。内閣府が発表した2022年版高齢社会白書によると、日本における65歳以上の人口は現在3,621万人余りで、総人口の28.9%を占めています。この数は、2042年には3,935人でピークに達することが見込まれています。
労働人口の減少や社会保障費の増大など、日本の社会基盤を揺るがす危機的状況を回避する手立てが模索されていますが、私たちは、急激に社会構造が変化していくこれからの時代をどう生き抜けばよいのでしょうか。すべての人が、心も身体も健康で幸せに生きることができる社会の実現には、何が必要なのでしょうか。
日本の幸福度ランキング、先進国で最下位の理由は
1946年に、世界保健機関(WHO)が定義した「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」という概念に立ち返り、ウェルビーイングを中心に据えた社会の実現ついて考えてみましょう。ウェルビーイングは、客観的なものと主観的なものに分かれています。「客観的ウェルビーイング」は、GDPや健康寿命など数字で測れるものであるのに対し、「主観的ウェルビーイング」は、個人が自分の人生の充実度、幸福度、満足度などを評価するものです。
国連が3月に発表した「世界幸福度ランキング2022」において、日本の順位は54位と、先進諸国の中で最低順位に位置しています。この結果を詳しく見ると、「人生の選択の自由度」と「他者への寛容さ」の数値が目立って低く、その他の項目、「一人当たりの国内総生産(GDP)」、「社会的支援」、「健康寿命」に関しては、ランキング上位国とさほど大差がありませんでした。
つまり、客観的ウェルビーイングは高いにもかかわらず、主観的ウェルビーイングが低いということが分かります。国民それぞれが抱く「主観的幸福度」についても、1位のフィンランドの2.518ポイントに対して、日本は1.487という結果が出ました。
世界と幸福度格差を埋めるためには、自分の人生を自ら自由に選択できていると実感できることと、立場や意見の違いに対して理解を示し合う他者への寛容さ、の2点が日本の重要課題であることは間違いなさそうです。
日本の幸福度を高めるには?
主観的ウェルビーイングに関して、史上最も長期にわたり追跡調査をした研究、ハーバード大学の成人発達研究からもヒントを得ることができるかも知れません。経済的、社会的に異なる背景を持つ約700人の対象者を1938年から75年間にわたり追跡し、対象者の心と身体の健康状態を調査したこのプロジェクトの目的は「幸福と健康の維持に本当に必要なものは何か」を明らかにすることです。
「75年間にわたる研究からはっきりと分かったこと、それは、私たちを幸福で健康にするのは、富でも名声でも無我夢中に働くことでもなく、良い人間関係に尽きる」
”そして、大切なのは人間関係の質であり、数ではないということ。この温かな人間関係を築くうえで必要となるのが、自分と意見や立場が異なる人たちに、どれだけ理解を示すことができるかという「寛容さ」。やはり、日本人が実感として豊かさや幸福感を感じられない理由として先にあげた要因が、ここでも関係しています。
今後50年、かつてない少子高齢化の時代に突入する中で、気候変動、資源の枯渇、格差や分断など重要な地球規模課題に直面しながら、すべての人が豊かさと幸福感を実感できる社会を構想していくことが迫られています。
さらに、その社会を、豊かさと持続可能性が両立するものとして構築していかなければならないのです。日本は今、世界に先駆けて、高齢化、少子化などの課題に直面する国として、課題解決先進国となると同時に、一人ひとりが幸せを実感できる社会という、世界が共通して目指すべき未来を実現する先駆者としての役割を果たすチャンスを手にしています。これを叶えるためには、日本固有のアプローチを早期に確立、実践する必要があるでしょう。
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