Stakeholder Capitalism

中小企業の力を活用して、サステナビリティの未来を切り拓く

世界の企業のうち90%を占める中小企業は、サステナビリティに大きな影響を与える可能性があります。

世界の企業のうち90%を占める中小企業は、サステナビリティに大きな影響を与える可能性があります。 Image: Pexels.

Olivier Woeffray
Practice Lead, Strategic Intelligence, World Economic Forum
Zishu Chen
Engagement Specialist, Strategic Intelligence, World Economic Forum Beijing
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中小企業

  • 投資家から消費者、そして従業員から規制当局に至るまで、あらゆるステークホルダーからの、企業がESGに関する対策や基準をまとめるべきだとする圧力が高まっています。
  • 中小企業は大企業のバリューチェーンの中に組み込まれており、その財務面以外の実績は大企業の指標に影響を与えます。
  • 中小企業がサステナビリティを単なるコンプライアンス上の課題ではなく、イノベーション、インパクト、成長のベクトルとして捉えることでどのような変化が起こるのでしょうか。

環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する事項を、企業が自社の業務やビジネスモデルに組み込むようにというステークホルダーからの圧力はますます強くなっています。最近の世論調査によると、機関投資家の88%が、投資を決定する際、ESGを事業や財務と同様に重要なものと考え、従業員の60%が自分の信念や価値観に基づいて働く場所を選択し、消費者の58%が自分の信念に合ったブランドを購入あるいは支持していることが分かりました。

現在、世界の大企業の多くが、この高まりつつある圧力に対応しようと業務の転換に取り組んでいますが、その背後で起きていること、つまり、中小企業・中堅企業がこの問題にどう取り組んでいるかを見逃してはいけません。国際労働機関(ILO)によると、中小企業は世界の全企業の90%を占め、雇用の約70%に貢献し、世界のGDPの70%を下支えしているのです。

欧州で最も革新的な法律事務所の一つであり、長年にわたり世界経済フォーラムのニュー・チャンピオンに選ばれているヴィエイラ・ドゥ・アルメイダ・リーガル・パートナーズ(VdA Legal Partners)の会長であるジョアオ・ヴィエイラ・デゥ・アルメイダ氏は、「規制に関しては、大きな動きがあります。欧州連合(EU)は、具体的な義務を課す幅広い法的パッケージを導入しているところであり、これからの数年間が非常に重要になるでしょう」と予測。

さらにアルメイダ氏は、Corporate Sustainability Reporting Directive(企業のサステナビリティ報告に関する指令)や人権・環境に係るCorporate Sustainability Due Diligence Directive(コーポレート・サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令)などの新しい規制が徐々に発効され、これに続く法律が制定されるだろうと付け加えました。

表面に現れないものを見る

欧州の場合、「法律はバリューチェーン全体に着目するアプローチを採用しています。顧客である大企業がこれらの新しい指標を参考にサプライチェーン全体を精査するため、中小企業はますます影響を受けるのです」。これは、ヴィエイラ・ドゥ・アルメイダ・リーガル・パートナーズのESG・環境部門長であるアスンセオ・クリスタス氏の言葉です。クリスタス氏はさらに、「中小企業は現在ESGに対する意識を高めつつあります。(ESGを重視する)ペースは非常に速くなると予想されます」と付け加えました。

大手エネルギー企業のエニ社は、中小企業のESG能力の構築を支援するために具体的な方策をとっている大企業の好例です。エニ社の調達部門責任者であるコスタンティーノ・チェッサ氏は、「企業にとって、多様なステークホルダーから求められるESGパフォーマンスを遵守することは『悩みの種』です。このため、ボストンコンサルティンググループ(BCG)およびグーグル・クラウドと提携して、あらゆる人が利用できるデジタルプラットフォーム『Open-es(オープン-エス)』を提供することにしました」と発表。

「このプラットフォームの狙いは、当社のサプライチェーンに含まれる中小企業のサステナビリティ・プロフィールを向上し、世界経済フォーラムのステークホルダー資本主義メトリクスを参照しながらサステナビリティ・パフォーマンスを測定し、報告の一貫性、比較可能性、共有性を高めることです」。

この取り組みは、すでに目に見える成果を上げています。Open-esのプログラムマネージャーであるステファノ・ファサーニ氏は、「開始から1年で、76カ国、62産業分野の4,000社以上(うち80%が中小企業)がこのプラットフォームを利用しています。この取り組みはまた、ソーシャルネットワークも活用して、企業がサプライチェーンの中から新しいパートナーシップの機会を見つけ、持続可能な開発を加速させられるよう支援しています」と述べています。

必要かつ困難な変革

消極的なアプローチや現状維持では生き残れないことは明らかですが、一方で、サステナビリティに向けて内部から変化したり適応するのは困難を伴うことを認識することも必要。また、中小企業がすでに厳しい状況に置かれていることを考慮することも重要です。新型コロナウイルス感染拡大の影響が最も大きかった事業分野の多くは中小企業が担っており、中小企業は大企業に比べて資金に余裕がなく、サプライチェーンが脆弱であり、デジタルツールやテクノロジーの利用率も低いのです。

これは、最近の世界経済フォーラムのレポートにも調査結果として示されています。このレポートでは、このような小規模な事業体には社会的な影響を与える力が十分にないことを強調。調査対象となった300人以上のCEOのうち、69%は自社のミッション・ステートメントにサステナビリティを盛り込んだと述べていますが、ビジネス戦略にサステナビリティを組み込んでいるのは51%にすぎず、自社の社会・環境面でのサステナビリティのパフォーマンスを役員報酬に反映させているのはわずか21%でした。

Image: World Economic Forum

価値創造の新たな方向性としてのサステナビリティ

世界経済フォーラムでは、この課題を違う視点で見ることが有効だと考えています。NYU Stern Center for Sustainable Business(ニューヨーク大学サステナブル・ビジネス・スターン・センター)所長のテンシー・ウィーラン氏が強調するように、「イノベーション、業務効率、リスク軽減、従業員エンゲージメントを促進できる」という意味で、サステナビリティは事実上、優れた経営を表す重要な基準になりつつあります。そのため、サステナビリティをコンプライアンス上の課題ではなく、長期的な成功のための経営手法として捉えることが重要です。

このようなアプローチを実行して成功させた中堅企業の事例を紹介します。

サステナビリティを中心に収益性を高める方法

カナダのトレーサビリティ事業者、オプテル社のCEO兼社長で、世界経済フォーラムのニュー・チャンピオンでもあるルイ・ロイ氏は、20年以上にわたって製薬業界で成功を収めたのち、幅広い業界の廃棄物削減と環境保全を支援するため、提供する製品の多様化に乗り出しました。これによって、大幅に影響力を高めて自社の価値観を実現する新たな機会を見出すことに成功したのです。

大きな成功を収めて利益を上げてきたオプテル社の本業の枠を超えることは、ロイ氏にとって容易なことではありませんでした。オプテル社の資金提供者や従業員の納得を得ることができないまま、彼はこの構想を推し進めました。ロイ氏の会社の新しいインテリジェント・サプライチェーンのソリューションは、現在毎年60億以上の製品を追跡し、製薬会社、コカ・コーラ、アンハイザー・ブッシュ インベヴ社、鉱業や農薬業界のトップ企業にサービスを提供し、サステナビリティの方向性を通じて会社の成長と拡大を支援しています。オプテルグループは、消費者向けパッケージ商品市場において、過去3年間で200%以上の収益増加を達成し、環境維持と成長のビジネスモデルを具現化する存在にまで成長しました。

社会的包括性が成長を促進する方法

しかし、ここで終わりではありません。ESGやサステナビリティの幅広い概念は、地球だけでなく、人にもあてはまります。その好例が、同じく世界経済フォーラムのニュー・チャンピオンであるグリーンデルタ保険です。国際金融公社(IFC)によれば、グリーンデルタ保険はバングラデシュで初めて個人向けに保険を販売したばかりでなく、初めて女性をターゲットにした保険会社でもあるということです。

バングラデシュの社会と経済における女性の役割の変化を認識していたグリーンデルタ保険は、都市部と農村部の女性向けの傷害保険商品Nibedita(ニベディタ)を発売し、今ではすべての所得階層にサービスを提供しています。グリーンデルタ保険の最高経営責任者(CEO)であるファーザナ・チョードリー氏は、「女性の社会的・経済的自立をケアしながら、女性が自信を持って前に進むことができるソリューションを導入したいと思っていました」と語っています。

2020年の事例によると、ニベディタの契約者数は4万5,000人を超え、前年比成長率は15%、平均更新率は60%。グリーンデルタ保険もまた、社会の持続可能性とビジネスの成長が両立可能であることを示しているのです。

未来志向の中小企業は軌道に乗っている

これらの事例と世界経済フォーラムの最近の調査から、未来志向が非常に強い中小企業は、社会と環境の持続可能性に明確かつ測定可能な目標を掲げることで生まれる機会を活用できていることがわかります。この新しい方向性は、成長・拡大、人材の獲得・維持、資金調達・金融へのアクセスなど、中小企業の最も重要な課題を解決するための様々な価値を創造する手段を提供してくれるのです。

それはまた、サステナブルな戦略の支持者として、企業の評判を高める機会にも繋がります。これは、個々の企業の生存と成功の鍵であるだけでなく、私たちが集団として世界経済、地域経済、地方経済の成長、革新、持続可能性の道を切り拓くための鍵でもあるのです。

今回の事例に挙げたような企業の持つ大きな可能性とその影響を踏まえ、世界経済フォーラムは中小企業の各分野の専門家との繋がりやネットワーク構築、社会的認知度の向上といった企業変革に向けたプロセスをサポート、フォローするために、ニュー・チャンピオン・コミュニティを拡大します。

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