「無人販売」と聞いて真っ先に思いつくのは、田舎の道路沿いにポツンとある野菜の無人販売ではないだろうか。代金を空き缶などに入れて野菜を持ち帰るもので、購入者との信頼関係の上、成り立つ販売形態とも言えるだろう。

こうした手法がコロナ禍で幅広い業種の中で取り入れられている。中には、古着や牛ホルモンなど意外なものを販売している店や、人件費を削減し、食品ロスを防ぐための手段として無人営業を取り入れているケースも見られる。この記事では、最新の無人販売の形態について紹介しよう。

通常価格より3〜5割割安に。目的は「食品ロス削減」

食品ロス削減を目的とした無人販売機「fuubo」
イメージ: みなとく

食品ロス削減のための無人販売機「fuubo」は、商品の規格外や賞味期限が迫っているものを24時間販売している。この販売機は、東京都台東区の「みなとく」が提供するもので、那覇空港や、JR名古屋駅、新宿郵便局など多くの人が出入りする場所に設置している。提携する菓子メーカーが複数あり、品質には問題がないが、販売規定に至らないものを買い取って通常価格より3〜5割安く販売しているのだ。

支払い方法は、事前に公式サイトにてクレジットカード決済するとパスワードが発行され、それを販売機に入力すると扉が開いて受け取れる仕組みだ。提携先の企業は食品ロスが削減でき、購入者は通常よりも安い値段で購入でき、関わる人すべてが得をする「三方よし」のビジネスと言える。

購入・解除システムのスマートフォン画面
イメージ: みなとく

古着の無人販売も。利用者とのコミュニケーション法は。

「日本一ゆっくり買い物ができるお店」をコンセプトに掲げ、古着の無人販売店を2020年8月から中野区で始めている「ムジンノフクヤ」。無人で24時間古着を販売する店で、国内ブランドの古着や、リメーク品が300点ほど店内に並んでいる。購入方法はいたって簡単。古着を掛けるハンガーが色分けされており、白は500円、グレーは1000円と値段が決められていて、自分のほしい服の値段分を券売機にてチケットとして購入して支払う仕組みだ。

券売機にてチケットとして購入する。
イメージ: dharman

以前は、インターネットで古着を販売していたが、ネット上で他社と差別化を図るには値段を下げるしかなかった。無人販売することによって実際に試着できるようになり、購買者の満足度が上がっているという。

防犯対策として、店内には複数のカメラを設置。撮影した動画は店内のモニターに映り、来店客から見えるようにしている。また、店舗の立地にもこだわった。店舗を構える場所は人通りの多い商店街を選び、外から店内の様子が見えるようにと道路に面する壁はガラス張りにした。

また、無人ならではの利用者とのコミュニケーション法がある。店内には、利用者が意見や要望が書ける連絡帳を設置。ノートには、「久しぶりに来ました」「こんな商品がほしい」などと書かれており、その書き込みに対してスタッフが返事を書いているという。こうした人情味ある対応は売り手と買い手の心地よい距離感を作っているのかもしれない。

高品質ホルモンを低価格で24h無人販売

恵比寿にオープンした「naizooホルモンショップ」
イメージ: ニュートファンダス

恵比寿にオープンした「naizooホルモンショップ」も24時間営業の無人販売を採用している。一見すると雑貨屋のようなポップな店内には瞬間冷凍のショウチョウやテッチャン、ミノなどのホルモンが並ぶ。黒毛和牛ホルモンの専門卸問屋と提携し、無人販売という形態で人件費を削減することでスーパーには出回らないような鮮度の高いものを低下価格で購入できる仕組みを取っている。

鮮度の高いホルモンが販売されている。
イメージ: ニュートファンダス

支払いの際は、カウンターに設置されているiPadからメニューを選択し、クレジットカードや交通系ICカードにて決算する。防犯対策としては、ウェブカメラによる監視を行っているという。

無人営業にすることで人件費を削減し、販売価格を下げることで高品質なものを低価格で提供できる仕組みが人気の秘訣だ。

コンビニ大手、ファミマ無人店舗のいま

2021年3月31日に開店した「ファミマ!!サピアタワー/S店」
イメージ: ファミリーマート

ファミリーマート(東京都)は、無人決済店舗の開発を進めるTOUCH TO GOと2月に資本業務提携を締結。2024年度末までに無人販売店を1000店舗に拡大するという。

ファミリーマートの無人店舗は、棚に設置されたカメラやセンサーで利用者の行動を追跡し、手に取った商品を記憶するほか、棚に戻したものも記録されている。商品を持ってセルフレジの前に行くと商品名と金額が自動的にディスプレイに表示され、現金や電子マネーで支払うことができるのだ。

支払いが確認できない場合は、ゲートが開かず外に出られないようになっている。無人店舗といっても、商品補充などの管理スタッフは駐在する。セルフレジもリモートで監視できるようになっており、アルコールを販売する際は年齢確認を行う。また、カメラやセンサーで利用者の行動を追跡することから、店内に入れるのは最大10人までとなっている。

コロナ禍により、無人店舗ビジネスの多様化が加速している。無人店舗にすることによって、スタッフの目を気にする事なく買い物できたり、気兼ねなく来店できたりとそれぞれのコンセプトにあった方法で取り入れることで人件費を削減する以上のメリットがあるといえるだろう。今後も非接触型のビジネスの展開に目が離せない。

*この記事は、Forbes JAPANの記事を転載したものです。

文=アステル 編集=石井節子