金融と通貨システム

日本の物価上昇、金利市場の機能回復チャンスに

日本でもインフレ率がある程度押し上げられてきた時には、日銀はその機会を捉えて動くべきだろう。

Tohru Sasaki
Head of Japan Market Research, J.P. Morgan
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金融と通貨システム

1月17─18日に開かれた日銀金融政策決定会合は、久しぶりに海外勢も含めた市場参加者の注目を集めた会合となった。結果としてインフレ率予想を小幅引き上げ、リスクバランス評価も中立に引き上げた程度で、黒田総裁は記者会見で近い将来の政策調整の可能性を明確に否定し、特にサプライズは無かった。

世界のインフレ率上昇、構造的な動き

ただ、日銀の金融政策に関しては、今後、徐々に注目度合いが高まってくるだろう。世界におけるインフレ率の上昇基調は構造的な要因が影響している可能性が高い。

人口動態の変化、保護主義等の閉鎖的な政策の拡大、カーボンニュートラルに向けた動きなどを見ると、これまで30年近く続いてきたディスインフレの時代は終了し、今後はインフレ率が比較的高止まりする時代となりそうだ。

エネルギーだけでない輸入物価の上昇

世界がディスインフレからインフレの時代に変化していくのであれば、日本も一定程度のインフレ率の高まりは避けられないだろう。日本経済はグローバル経済と遮断して成り立っているわけではない。足元の物価上昇圧力に関してエネルギー価格の上昇に注目が行きがちだが、言うまでもなく日本が世界から輸入しているのはエネルギーだけではない。

例えば、電気機器の輸入は全体の17%程度を占め、鉱物性燃料より輸入額は大きい。一般機械と輸送用機器の輸入額を足せば、鉱物性燃料より輸入額は大きくなる。

日本の主要輸入相手国の生産者物価指数は、前年比二桁に近いか二桁の伸びとなっているところが多い。相手国でそれだけ物価が上昇しているのに、日本に輸入したら値上がり分を全て日本の輸入業者が吸収してしまい、日本の消費者物価に全く影響がないということはないだろう。

実際、日本の国内企業物価指数はオイルショック以来、41年ぶりに9%台まで上昇している。消費者物価指数との差もオイルショック以来の8%ポイント以上になっている。つまり、日本企業は今のところ8%分のコストを自社で吸収していることになる。

このまま消費者に転嫁せず全てを自社で吸収したら、収益がかなり悪化する可能性がある。今後、一定程度は消費者に転嫁される結果、消費者物価が予想以上に上昇してくる可能性は高い。国内企業物価指数を押し上げている大きな要因である輸入物価指数の上昇率は、昨年11月が45.2%、12月が41.9%だった。

ディスインフレからインフレの時代に変化してくるのであれば、これまで中央銀行の多くが目安としていた2%前後のインフレ率も意味が無くなる可能性がある。つまり、世界的なインフレ率のレベルが引き上がれば、2%以上のインフレ率が常態化する可能性がある。

YCC手直し、10年から5年へターゲット変更も

日本でもインフレ率がある程度押し上げられてきた時には、日銀はその機会を捉えて動くべきだろう。少なくともイールドカーブコントロール(YCC)政策のターゲットを10年金利から5年金利などのより短期の金利に変更し、日本国債のイールドカーブをスティープ化させるべきだ。

日本国債のイールドカーブをこんなに長い間フラット化させておくのは、経済にとって良くない。10年金利はもう6年間も0.1%台以下で推移しているのに日本のインフレ率は上昇せず、経済も活性化しなかった。

いつまでたっても金利が上昇しないと思えば、企業も今投資せず後からでもいいのではないかと先延ばしにしてしまい、日本経済の低体温状態が続いてしまう。日本経済を活性化させるためには、外的要因ながらもインフレ圧力が高まってきたこの機会を利用して、イールドカーブをある程度スティープ化させる必要があると思う。

懸念される円安のオーバーシュート

日米金利差との相関に注目すれば、日本の長期金利が上昇したら多少、円高方向に振れる可能性はある。現状の相関が続くと仮定すると、50bp程度金利差が縮小したら、3円程度円高となる計算だ。

しかし、もう今は、円高を懸念するのではなく、円安が止まらなくなることを懸念すべきだろう。そもそも新型コロナウイルス感染が世界的に広まった2020年前半からドル/円相場と日経平均株価の相関はほとんど無くなっている。

このまま日本人が購買力を失ってジリ貧となっていくのを放置しないためにも、日銀は経済の大きな転換点を察知して、金融政策の調整を始めるべきだろう。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。

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