危機に瀕する地球:ビジネスはその役割を果たせる態勢に
グリーン・テクノロジーのスケールアップ Image: RawFilm/Unsplash
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COP26への道
- COP26は、官民が一体となって気候変動対策に取り組む機会です。
- 世界経済フォーラムと米国国務省が共同で、米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使を指揮官とする「ファースト・ムーバーズ・コアリション」を立ち上げました。
- この新しいコアリションは、排出量の多い分野における世界のトップ企業が、新出のグリーン・テクノロジーを積極的に購入することをコミットするものです。
地球は危機に瀕しています。
気温上昇や厳しい気象パターンなど、かつてその兆しが見えていたリスクが現実のものとなっています。ヨーロッパやアジアでこの夏に起きた悲惨な洪水、秋にアメリカ大陸を襲った猛烈な暴風雨、そして北極圏における今年の記録的な熱波は、すべて同じことを物語っています。つまり、気候変動はリアルタイムで進行しているのです。
私たちの環境への壊滅的影響は、驚くべきことではありません。過去30年間で、世界の温室効果ガスの排出量は60%以上も増加しています。現在、気温は産業革命以前の水準から1.2℃も上昇しており、環境を守るために必要とされる1.5℃の制限値におぞましいほど近づいています。
これらは危惧すべき状況です。
一方、幸いなことに希望もあります。私たちは、すばらしいイノベーションの時代に生きており、画期的なテクノロジーによって経済や社会が再構築されています。私たちが、このイノベーションの舵取りを共に行えば、環境面での最悪の結果を回避することができます。
テクノロジーが気候変動に対応する可能性を秘めていることは、間違いありません。化石燃料の使用を削減するための重要な要素である太陽光発電と風力発電の急速な普及は、過去10年間で89%ものコスト削減を可能にする進歩があったからこそです。
その先には、まだ多くの可能性があります。
国連の推計によると、AI(人工知能)とデジタル化によって、温室効果ガスの排出量をこの10年間に10~20%削減できるとされています。実際、パリ協定では次のように述べられています。「イノベーションを加速し、奨励し、及び可能にすることは、気候変動に対する効果的及び長期的な世界全体での対応のために不可欠である」。
しかし、グリーン・イノベーションに関しては、まだ必要なレベルに近づいていません。2050年までに排出量ネットゼロを達成するのに必要なテクノロジーの半分は、現在も試作段階にあります。これらのパイプラインを加速させるためには、総計で78兆ドル~130兆ドルの投資が新たに必要です。
イノベーションへの期待を実現する唯一の方法は、企業と政府が連携を深めることです。企業は研究開発に投資し、政府はグリーン・テクノロジーに必要な資本を確保するための枠組みを構築する必要があります。
現に、各国のグリーン・テクノロジー開発を支援する国連機関である技術執行委員会は、「民間セクターの参加の『方法』に注意を払う必要がある」と、今春の重要な結論として出しました。というのも、世界中で気候変動対策のためのさまざまな協調的取り組みが行われていますが、新しいテクノロジーへの資金提供や導入に焦点を当てたものはほとんどありません。
企業と政府が一体となり、テクノロジーの潜在的な力を引き出すことが必要です。
”国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)(開催地:グラスゴー)で、世界経済フォーラムと米国国務省が共同で、「ファースト・ムーバーズ・コアリション(First Movers Coalition)」の発足を発表しました。この新たなコアリションは、米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使の指揮のもと、排出量の多い分野における世界のトップ企業が、新出のグリーン・テクノロジーを積極的に購入することをコミットするものです。
このコアリションは、メンバーの購買力を活用して市場に強い需要シグナルを送り、トラック輸送、航空、海運、鉄鋼生産などの分野で、炭素排出をなくすためのテクノロジーの開発を促進します。最終的には、現在、炭素排出量の30%を占めているこの業界全体で、グリーン・テクノロジーを拡大することを目指しています。
行動への勢いが増しています。昨年、ジョー・バイデン大統領は米国が2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させることにコミットし、また習近平国家主席は中国が2030年までに炭素排出量を減少に転じさせることを誓約したほか、EU、英国、日本やその他の主要国は2050年までに排出量のネットゼロを実現することを誓いました。
また民間セクターは、自分たちが献身的パートナーであることを示しました。世界経済フォーラムの「CEO気候リーダー・アライアンス(Alliance of CEO Climate Leaders)」は、2050年までにネットゼロ目標を達成するため、世界の大手上場企業全2,000社のうち、5分の1の企業と連携しています。
今こそ企業と政府が一体となり、テクノロジーの潜在的な力を引き出すことが必要です。それこそが、気候変動に対する目標の達成を可能にする唯一の方法です。
COP26は、米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使が、世界が環境問題で有意義な進展を遂げるための「最後のチャンス」と呼んでいるものです。だからこそ、気候変動をテーマとした交渉の場に、これまでにはないレベルで企業が参加しているのです。官民連携の国際組織である世界経済フォーラムが、国務省と協力して「ファースト・ムーバーズ・コアリション」を立ち上げたのも、このためです。
私たちが協力してイノベーションの潜在的な力を引き出すことで、より持続可能な未来を形作ることができるのです。
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