Davos Agenda

人種差別と人種的不正義への取り組みに、「行動の10年」が必要な理由

Protestors stand with a sign reading "Racism is Our Longest Plague" at the "Get Your Knee Off Our Necks" Commitment March on Washington 2020 at the spot where Rev. Martin Luther King Jr delivered his "I Have a Dream" speech 57 years ago today in Washington, U.S., August 28, 2020. REUTERS/Tom Brenner - RC27NI957G52

世界経済フォーラムとGHR財団は、人種的正義と社会的正義を推進するために提携しています。 Image: REUTERS/Tom Brenner

Saadia Zahidi
Managing Director, World Economic Forum
Amy Goldman
Chief Executive Officer and Chair, GHR Foundation
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本稿は、以下会合の一部です。持続可能な開発インパクト・サミット
  • 私たちには、構造的な人種差別や、人種的不正義をなくすための、道義的、経済的な責務があります。
  • 世界経済フォーラムとGHR財団は、人種的・社会的正義の推進に向けて新たなパートナーシップを立ち上げ、組織内から取り組みを始めています。
  • 9月20日(月)から23日(木)まで開催された「持続可能な開発インパクト・サミット」では、マルチステークホルダーによるパートナーシップが、いかにして持続可能で包摂的かつ公平なリカバリーを実現できるかを協議しました。

この1年半の間に、世界中で「いつものこと」と考えられていた物事の多くが変わりました。より正確に言えば、経済、ジェンダー、人種的不正義など、何世紀にもわたって人類を悩ませてきた根深い不公平を浮き彫りにしたのです。

世界では、25年以内に初のトリオネア(1兆ドル規模の大富豪)が誕生する可能性がある一方で、9人に1人が毎晩空腹を抱えて眠りに就いています。低所得者層、女性、黒人、先住民、有色人種(BIPOC)のコミュニティは、パンデミック(世界的大流行)に起因する景気後退の影響を大きく受けており、過去数十年間積み上げられてきた社会的進歩の多くが、退行の兆しを見せています。

このように世界中が危機に直面する中、一つでも明るい見通しがあるとすれば、それは「不平等」という問題が、ついに世界的な政策議論のテーマとなったということです。「誰一人取り残さない」は、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のスローガンであり、持続可能な開発目標(SDGs)の目標10は、所得、性別、年齢、障がい、性的指向、人種、出自、民族、宗教、かつ機会に基づく不平等の是正を目指しています。

不平等をなくすことは道義上の責務であると同時に、経済上の利益にもつながります。例えば米国では、人種差別により消費や投資が停滞し、米国経済に年間1兆ドル以上の損失があると試算されています。構造的な人種差別は米国だけに限られたものではなく、この重要な時期において、誰もが可能性を最大限に発揮する機会をも奪うのです。

By closing the racial wealth gap, the US GDP could be 4 to 6 percent higher by 2028
人種差別により、米国経済は年間1兆ドル以上の損失があると試算されています。 Image: McKinsey & Company

持続可能で包摂的かつ公正なリカバリー、つまりBIPOCや社会から疎外された人々のニーズを対象とし、すべての人に利益をもたらすようなリカバリーを実現する上で必要な行動、政策、パートナーシップの実施において、マルチステークホルダーによるパートナーシップはどのような役割を果たせるのでしょうか。

今年の「持続可能な開発インパクト・サミット」で、不平等に関する次の3つの分野について取り上げ、上の問いかけに対する議論を深めました。

  • 経済成長指標の見直しと変革
  • 雇用の質と量の改善
  • 教育、スキル、学習機会の向上

この3分野で確実に改善を進める鍵となるのは、多様性、公平性、包摂性(DEI)、さらには社会的正義に関する取り組みを向上させることです。これは、持続可能な開発インパクト・サミットにおいて、「『行動の10年』における不平等への取り組み」というセッションでも取り上げられています。

そのために、世界経済フォーラムとGHR財団が、新たにパートナーシップを結んだことを心強く感じます。GHR財団は、米国ミネソタ州ミネアポリスを拠点とする、世界的な慈善団体です。

人種は文化的背景によって、さまざまな形をとることが知られています。しかし、人種差別、特に黒人や有色人種に対する差別は、あらゆるコミュニティ、国、大陸で根強く残り、蔓延しています。まず、不正義や人種的不平等問題に効果的に取り組むためにすべきことは、それらをはっきりと指摘し、その存在を認めるということです。そうすることで初めて、グローバルなシステム、組織、そして私たちの多様なコミュニティにおいて、疎外された人々の参加を阻む障壁に対処できるようになるのです。

2020年5月、黒人の命を大切にしようと訴える運動(ブラック・ライブス・マター)が世界中で再燃しました。この運動は、世界経済フォーラムやGHR財団を含む多くの組織が、組織内外に存在する不公平について考え、改めてこの問題に焦点を当てるきっかけとなりました。

有色人種や少数民族出身のプロフェッショナルは、職場での人種的不正義や不平等に直面し続けており、リーダーシップを発揮する機会は、さらに限られています。例えば、「フォーチュン500」の62年の歴史の中で、黒人の最高経営責任者(CEO)は15人しか存在しておらず、現在、「フォーチュン500」企業の全CEOのうち、黒人はたったの1%にすぎません。

Currently, 1% of Fortune 500 CEOs are Black.
現在、「フォーチュン500」企業のCEOのうち、黒人は1%にすぎません。 Image: Statista

人種的に公正な職場を作るためには、組織は構造的なレベルで人種差別に立ち向かわなければなりません。組織の構造的・社会的な仕組みから、組織が活動するコミュニティや地域の経済機構全体で果たす役割まで、組織はあらゆることに対処しなければなりません。

「学習する組織」のリーダーとして、私たちはいかに無知であるかを自覚しています。それでも私たちは、無知という居心地の悪さを受け入れ、学習と行動を約束し、斬新なコラボレーションに着手します。これは、世界経済フォーラムの複数のチーム、プラットホーム、問題を横断し、人種的・社会的正義を中心に据えた取り組みです。

私たちは、新しいモデルを開発・紹介し、官民のパートナーシップと行動を定着させ、コミュニティを有意義な協力関係に導いていきます。それにより、バリュードリブン型の企業、政府や市民社会のリーダーたちとともに、人種的・社会的正義を推進する世界的な運動を構築していきたいと考えています。すでに世界の主要な多国籍企業60社が、事業における人種についての考え方を変革することに署名をし、人材採用、従業員の待遇、サプライチェーンの考え方、さらに広く捉えれば、企業戦略構想などについて、職場内から変える必要を認めています。

このワクワクするような旅は始まったばかりです。皆さんも、私たちと一緒に学び、行動してみませんか。

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