Davos Agenda

アジアのパンデミックからの復興を加速させるスタートアップ:ビッグテックにできること

Two Asian women sitting on sofa and floor looking at laptops.

世界トップのスタートアップのうち3分の1以上がアジアを拠点としています。 Image: Unsplash.

Ahmed Mazhari
President, Microsoft Asia
シェアする:
インパクト
世界経済フォーラムは、{Topic}}に関する行動を加速させるために何をしているのか
A hand holding a looking glass by a lake
クラウドソース・イノベーション
参加する クラウドソーシングのデジタルプラットフォームで、スケール感のあるインパクトを提供します。
最新の情報をお届けします:

Davos Agenda

本稿は、以下会合の一部です。ジョブ・リセット・サミット
  • 新型コロナウイルスの感染拡大は世界経済に損害を与え、デジタルデバイド(情報格差)を一層表面化させました。
  • デジタルエコシステムが構築されているアジアは、経済成長をリードする態勢が整っています。
  • 復興の鍵を握るテクノロジーは、雇用を創出し、革新的なスタートアップや中小企業に可能性を与えます。

パンデミック(世界的大流行)は数十万もの企業を窮地に追い込みました。さらに問題なのは、この1年半の新型コロナウイルス感染拡大による経済的影響が、何とか持ちこたえた企業に不均衡な形で及んだという点です。デジタル技術は一部の企業が最悪の事態を逃れるのを助け、多くの企業の成長をも可能にしました。

しかし、課題は山積みです。雇用の回復と、将来性のある新たな雇用の創出が急務です。そのためには、デジタルスキルの格差を解消しなければなりません。並行して行うべきことは、経済を活性化するアイデアを見つけ、サポートしていくこと。スタートアップと中小企業(SME)は、こうしたアイデアを探し出す最適な場と言えるでしょう。

アジアは、最も長くパンデミックの影響に耐えている地域であり、その一部はいち早く景気低迷から脱却しています。もし、アジア地域の厚みのあるデジタルエコシステムと長年にわたり築かれてきたイノベーション文化を、スタートアップや中小企業の起業家精神と結び付けることができるなら、パンデミック後の経済回復においてアジアは世界をリードすることができるでしょう。

この実現に向けて、官民両セクター、特に「ビッグテック」企業が協力し、以下の3つの経済成長のドライバーに注力することが不可欠です。

  • スタートアップと中小企業のデジタル・インフラへの良好なアクセス
  • デジタル・エコノミーで活躍する人材のアップスキリング(技能向上)と、人材プールの拡大
  • 起業家を成功に導き、その企業を雇用創出の原動力に変える強力なスタートアップ・カルチャー

コラボレーションは強固なスタートアップ経済の鍵

野心あふれる多くのイノベーターがアジアに拠点を置き、地域の人々の生活と生計を向上させるために取り組んでいます。アジア太平洋地域において、中小企業は全ビジネスの97%以上を占めており、労働力全体の半分以上を雇用しています。スタートアップと中小企業は重要な成長エンジンであり、両者を支援することはすべての人の利益につながります。

単独で繁栄できる組織はありません。これこそ、民間企業、雇用主、各国政府、非営利団体が連携し、持続的な影響力を持つパートナーシップやソリューションを促進し、セクターを越えて協力しなければならない理由です。ビッグテックを筆頭とする官民両セクターからの投資は、スタートアップや小規模企業、そこで働く人たちにチャンスを生み出します。これには、テクノロジーの発展によって情報技術者を支援するだけでなく、コミュニケーションの改善と生産性向上ツールを用いて最前線の労働者の能力を高め、これらの重要なグループためのインクルージョンやデジタル体験の向上を確実にすることも含まれます。

力を合わせることで「テクノロジー活用の強度」の成果を手にすることができます。テクノロジー活用の強度とは、信頼できる最高クラスの技術の採用と、使い手のスキルや能力の向上を組み合わせることです。このアプローチをうまく実現することがきれば、コラボレーションによって、急速な復興と包摂的な成長、雇用、再創造された未来を後押しする製品とサービスが生まれるでしょう。

デジタルスキルはスタートアップの動力源

デジタル時代は新世代のテクノロジーを生み出していますが、それを発明し、その技術が有する可能性を独自の方法で活用するのは、多くの場合、スタートアップです。ところが、スタートアップや中小企業には、適切なデジタルスキルを身につけた人材を育成するために必要な規模も資金がないことが通例です。スタートアップと中小企業を中心に据えて経済をリセットするのであれば、成長に必要な人材を訓練しなければなりません。デジタルスキルを育成することにより、個人の繁栄とアジアの経済回復を後押しすることができます。

マイクロソフトとリンクトインの「グローバルスキル構想」により、この1年間で249の国と地域において、アジアの約600万人を含む3,000万以上の人々がデジタルスキルへアクセスできるように支援を受けました。マイクロソフトは、同構想の次の段階として、2021年には25万社の企業におけるスキルベースの雇用の促進を支援することに力を入れています。世界では今後5年間に、1億4,900万ものテクノロジー重視の新たな雇用が生まれると推定されています。求職者がこのチャンスをつかむためには、スキル格差を解消することが絶対に欠かせません。

「デジタル・ニューノーマル」では、誰もが生活の基本的なことに問題なく対応し、キャリアで成功を収め、自分の可能性を最大限に発揮できるようにするために、幅広いデジタルスキルを身に付けることが求められます。こうしたスキルの習得には、技術革新に後れを取らないようにするための生涯学習が必要になります。テックリーダーである私たちには、人々の利益のため、またアジアの競争力を未来に向けて維持するためにも、人々のデジタルスキルの習得を支援する責任があります。

さらなるイノベーションへと導く企業家精神を支援

スタートアップはイノベーターとして、また、ディスラプター(破壊的イノベーター)やファーストムーバー(先行者)として、経済において極めて重要な役割を果たします。幸運なことに、アジア地域には多数のスタートアップが存在します。2019年4月の時点で、世界の「ユニコーン企業」331社中、3分の1以上(119社)がアジアに拠点を置いていました(ユニコーン企業とは、企業評価額10億ドル以上のスタートアップを指します)。この10年だけでも、シンガポールを拠点とするライドシェアアプリの「グラブ」、インドネシアのオンラインマーケットプレイス「ブカラパック」など、アジア全域で複数のテックユニコーンが急成長し、既存プレイヤーに名を連ねています。

テックリーダーは、学生やスタートアップの優れたアイデアを支援するために、開発プログラムや発表の場のためのプラットフォームなどを提供することができます。ビッグテックはスタートアップや起業家の貴重な資金源、助言者であり、ビジビリティを高めてくれる貴重な存在です。チャンスをつくり、デジタル・エコノミーに必要なスキルを育成することは、私たちの責務であると考えます。

包摂的なデジタルの未来は手の届くところに

アジアには、高度なデジタル・インフラ、多様なスキルセット、強力なイノベーション文化など、21世紀の経済で成功するために必要な多くの要素がすでにあります。より包摂的な未来を築くためには、こうした強みに加えて、民間セクターのリーダー、各国政府、非営利団体の協力を土台としていく必要があるでしょう。

これこそ、ビッグテックが重要な役割を果たせる分野です。スタートアップや起業家、中小企業への投資、重要なスキルを訓練する機会の創出、信頼できるテクノロジーを利用したイノベーションの推進-これらを実行することで、私たちは、すべての人に成功のチャンスがある、活気にあふれたスキルベースの労働市場を生み出すことができます。

パンデミック後の包摂的なデジタルの未来は、私たちの手の届くところにあります。そして、アジアがこの道の先頭に立つことができるのです。

このトピックに関する最新情報をお見逃しなく

無料アカウントを作成し、パーソナライズされたコンテンツコレクション(最新の出版物や分析が掲載)にアクセスしてください。

会員登録(無料)

ライセンスと転載

世界経済フォーラムの記事は、Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International Public Licenseに基づき、利用規約に従って転載することができます。

この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。

シェアする:
World Economic Forum logo
グローバル・アジェンダ

アジェンダ ウィークリー

グローバル・アジェンダとなる、重要な課題のウィークリー・アップデート

今すぐ登録する

メールに記載されているリンクを使って、いつでも配信を停止することができます。 詳しくはこちらをご覧下さい。 プライバシー・ポリシー.

「希望を持って行動を」- 気候変動対策キャンペーンが心を揺さぶる理由

Gail Whiteman and Gill Einhorn

2024年2月21日

世界経済フォーラムについて

パートナーとメンバー

  • 参加する

言語

プライバシーポリシーと利用規約

© 2024 世界経済フォーラム