Geo-Economics and Politics

パブリックセクターでリーダーがイノベーションを推進し、ガバナンスを変革する4つの方法

The Agile 50.

「アジャイル50」 Image: Apolitical

Stefanie M. Falconi
WEF Fellow to Global Future Council, Senior Researcher at Igarape Institute
Lisa Witter
Chief Executive Officer and Co-Founder, Apolitical
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  • 新興テクノロジーは、地球規模の脅威を監視、追跡、防止する能力を高めるツールを提供しますが、優れたリーダーシップとガバナンスに代わるものではありません。
  • 「アジャイル50」は、デジタルトランスフォメーションを推進するため、先駆者としてガバナンスに対する斬新なアプローチを実践したパブリックセクターのリーダーを表彰します。
  • 世界がある程度の常態に回復した後でも、リーダーたちはこの変化を政策として体系化し、長期的に持続させることが期待されています。

2020年はパンデミック(世界的大流行)の不確実性に直面し、あらゆるセクターで加速的な変化を余儀なくされた年でした。新型コロナウイルスのサンプルを検査機関に届ける自律走行型ドローンや、感染リスクを予測し接触者の追跡を支援するAI(人工知能)は、急激な変化のほんの一例です。なかでもパブリックセクターは、最も影響を受けた部門のひとつでしょう。変化に対応するためのルールの枠組みは、多くの場合、先例に基づきません。緊急プログラムや対応策は、開始後直ちに開発とテストが行われました。危機をきっかけに、多くのリーダー達は公共サービスを現代化し、変化に適応した驚異的なトランスフォメーションが可能であることを示したのです。

2020年のディスラプション(創造的破壊)以前から、第四次産業革命は技術的進歩に遅れをとっていた規制の妥当性や有効性を脅かしていました。新たなテクノロジーは地球規模の脅威を監視、追跡、防止する能力を強化しますが、優れたリーダーシップとガバナンスに代わるものではありません。パワフルなテクノロジーは、組織や政府にとって危機の時代に備える上で不可欠です。世界がある程度の常態に回復した後でも、こうした変化を政策として体系化し、長期的に持続させていくパブリックセクターのリーダーシップが期待されています。

アジャイル50の設立

この一年、リーダーたちは多面的でグローバルな脅威への対応を迫られました。2020年のアジャイル50受賞者からいくつかの事例を紹介します。この賞はアポリティカル社と世界経済フォーラムのアジャイルガバナンスに関するグローバル・フューチャー・カウンシルが主催し、著名人から知られざるヒーローまで、変革に向けたガバナンスへの新しいアプローチを開拓したパブリックセクターのリーダーたちを表彰しています。

受賞者は、市民の視点を重視しながら公共サービスの効率化を積極的に図り、継続的な学習と適応を支援する形で官民連携を活用し、素晴らしい成果を達成しました。

1. カルチャーシフトとオープンなマインドセット

政府にありがちな硬直した官僚主義ではなく、柔軟性と適応性を受け入れることが不可欠です。パブリックセクターのプロセス改善や規制の策定に向けてアジャイルな手法を活用し、政府は企業、市民社会、第三セクター、アカデミアなどのステークホルダーと連携する必要があります。

最新のテクノロジートレンドに沿って積極的な取り組みを行なっているリーダーのひとりに、エストニアのアクセレレート・エストニアの責任者であり、エストニア経済省のスタートアップ政策専門家であるミック・バイニク氏が挙げられます。このプログラムは、緊急事態に際し、効率的な規制改革をもってエストニア政府を躍進させることを目的としています。2020年3月に開始された「ハック・ザ・クライシス」という取り組みでは、48時間以内に1,000人から成るボランティア主体の30チーム以上が、同じ目的のため活動する仲間やパブリックセクター・民間ベンチャーのリーダー達にソリューションを提供しています。

また、経済産業省経済産業政策局大臣官房審議官(経済社会政策担当)の中原裕彦氏は、省庁横断的な組織である内閣府に単一の窓口を設け、全省庁横断的にイノベーションと官民連携を迅速化するシステムを設計しました。中原氏のアプローチは、新しいテクノロジーやサービスの実証と収集データに基づく規制の見直しを可能にし、よりアジャイルな政策立案を促進しています。

2. コンサルテーションと市民参加の新しい形

これは地球規模の課題解決に向けて、多様な利害をもつ市民の関与を含めたマルチステークホルダーによる取り組みの設計を意味します。現在、市民が強く求めているのは急速な変化に対応できる公共政策とガバナンス制度です。博識で積極的な市民は、ステークホルダー関与の強化とオープンで透明性の高い政策立案への圧力を強めており、これは必要不可欠だといえるでしょう。

あらゆるステークホルダーによる解決策を模索するため、地域や国レベルで取り組む運動を実現したのが、東アフリカのケニア、タンザニア、ウガンダの3カ国で実施されている調査「Voices of the People」の責任者であるエイダン・エヤクゼ氏です。市民の声を集約、拡大するというこの大規模な取り組みは、同地域で普及率の高い携帯電話を使って行われました。調査結果は逆進税から累進税への変更を後押しし、子どもや授乳期間中の母親、高齢者のための無料ヘルスケアアクセスの確保や新型コロナウイルスの安全対策に関する公式なコミュニケーションの改善に役立ちました。

3. デジタル化と情報、公共サービスへのアクセスに対する障壁を低くする

行政サービスをデジタル化してオンラインでアクセスできるようにし、市民が情報を効率的に入手できるように、アクセスの障壁を低くする必要があります。公共サービスを受けるためにあちこちに電話をかけたり、直接出向いて書類や情報を集めたりしなければならないことがよくありましたが、機関の視点ではなく、ユーザーエクスペリエンスの観点を導入することが公共サービスのアクセス改善に繋がります。

公務員を対象としたグローバルなプラットフォームであるアポリティカルが、2020年3月から4月にかけて会員を対象に実施した調査によると、パンデミック下で学習リソースとして必要なものに挙げられたのは、第一に在宅勤務に関するリソースで、第二に公共サービスのデジタル化に関する支援でした。

A survey conducted in March-April 2020 by Apolitical asks public servants to choose the most helpful learning resources during the pandemic.
2020年3月から4月にアポリティカル社が実施した調査では、公務員を対象にパンデミック時に最も役立つ学習リソースを選択するよう求めている Image: Apolitical

サービスのデジタル化を推進し、ユーザーエクスペリエンスの向上に取り組んでいるリーダーの一人が、ダン・ハイモウィッツ氏です。ハイモウィッツ氏は、ボルティモア市の清掃活動に、データを活用した新たな業績管理のイニシアティブを導入しました。データ活用により、公共サービスへのアクセスの不平等を解消できると考えたのです。同氏が統括するイニシアティブのひとつである「クリーンスタット」は、データ分析を活用して市のゴミや不動産のメンテナンスに関わる未処理案件を解消する取り組みで、市全体に不均衡な形で溜まっていた1万7,000件のサービス要請案件を削減し、サービスの公平性と効率性を高めることを目指しています。

公共サービスのデジタル化を主導してきたアラブ首長国連邦(UAE)のアブドラ・ビン・トゥク経済大臣も同様です。同国の経済省は、国民や企業が簡便にサービスを受けることができるデジタルチャネルの構築に向けた組織再編の一環として、2021年に75のサービスをすべてオンライン化し、サービスセンターを閉鎖した最初の組織です。同省の外国貿易部が新型コロナウイルス感染拡大の影響に対処するために、企業を支援する専用プラットフォームを立ち上げたのもその一例です。

4. テクノロジーの早期導入と政策アプローチ

変化に合わせて公共サービスを現代化する上で不可欠なのは、規制のありかたを理解するために政策をテストし、実施する能力です。ストレステストを通じて能力を高め、不確実性に直面しても、アジャイルで適応力のある行動ツールを提供するメンタルと、コンピューター上の実験が必要です。

データとテクノロジーを活用して業績の監視と微調整を行っているリーダーには、ブラジル中央銀行の金融システム規制部門の副責任者であるパオラ・エスタ・レイタオ氏がいます。この部門は、金融・決済システムの近代化を目的とした一連の動きの中でも、金融制度における規制サンドボックスの先陣を切りました。提案の募集は、イノベーションを柔軟に監視・評価できるようにするため、高度に規制された分野でアイデアを試す「ラボ」として活用されます。規制サンドボックスのプロセスは2021年2月に開始され、最初のサイクルでは競争を促進させ、オープンバンキングのソリューションなど新しいビジネスモデルや商品が金融システムに参入できるようにすることを目的として、9つの分野に優先的に取り組むことになりました。

この分野のもう一人のリーダーは、スウェーデン技術革新倫理委員会(Komet)の会長であるヨン・シモンソン氏で、その役割は新しいテクノロジーを採用した方針の策定を加速させることです。ガバナンスとインセンティブの構築における政府の責任には1)新しいテクノロジーとその影響を把握する、2)何が有効かを見極めるために大胆な実験を行う、3)アジリティとコラボレーションによる変革を行う、という3つの段階があると同氏は指摘しています。また、ガバナンスを再構築するためには、勇気が重要な役割を果たすと語っています。Kometはこのようなアプローチを通じてスウェーデンの電力網を拡大し、運輸部門や産業部門の電化を促進するための条件を整えるために必要な、許可や経営権の管理を迅速化する試みを政府に提案しています。

前を進むには勇気が必要

これらの傾向とリーダーシップの例を見ると、「安全性を確保した上での効率性とスピード」、「不確実な状況に直面しても適応できるレジリエンス(強靭性)と能力」、「社会的なセーフティネットの構築と強化」が必要であることがわかります。ほとんどの政府機関では、作業に費やせる資源も時間も限られており、他のグローバルリスクと同様にパンデミックは不確実性と複雑性に満ちています。テクノロジーのガバナンスが公共部門の適応能力を高める一方で、ガバナンスについてはアジャイルなアプローチが重要であると多くの人が指摘しています。これは、職員の知見や行動を向上させるデータに基づいて、政府のオペレーティングシステムをアップグレードするようなものなのです。

テクノロジーガバナンスを革新するリーダーたちは、パブリックセクターにおけるイノベーションが可能であることを示しています。結局、政府機関を構成するのは人であり、これらの取り組みに反映されているのは変化に対応する能力です。組織のレジリエンスを高めるためには、政府内でよりアジャイルなアプローチやツールを開発するための持続的な投資が必要です。リーダーシップの文化的変化も必要でしょう。新型コロナウイルスのパンデミックのような変化の激しい状況下では、勇気を持って抜本的な変革に取り組むことが唯一の道です。

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