世界的な半導体の品薄状態に対して、一部の企業は、ある程度慣れっこになる必要が出てくるだろう。新型コロナウイルスのパンデミックに起因する需要の急減とその後の急増、さらに以前からの貿易戦争のため、世界各地の工場が半導体不足に悩まされている。

半導体業界は今後、大金を新規設備投資に投じるものの、恩恵をより大きく受けるのはスマートフォンメーカーやデータセンターになるだろう。自動車メーカーではなさそうだ。

供給不足の影響自体は、さまざまな分野に及んでいる。米エヌビディアはかれこれ半年間にわたり、設計するグラフィックチップへの需要を満たせていない。ソニーは、次のクリスマス商戦期にゲーム専用機を十分にそろえられないかもしれないと警告した。

自動車メーカーはパンデミックでこれまで半導体の発注を取り消していただけに、直面する半導体在庫枯渇が特に深刻だ。米ゼネラル・モーターズ(GM)は、半導体不足のせいで今年の利益が最大20億ドル減少する可能性があると表明。米フォード・モーターは最悪の場合、25億ドルの利益が吹き飛ぶと見積もる。

通常ならば半導体が品薄になった後は、潤沢な供給がやってくる。半導体業界が需要への対応を急ぎ、投資も進むからだ。受託製造(ファウンドリ)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、今年の設備投資を約50%増やす計画。最大280億ドル規模になる見込みだ。

ただ、そうした供給能力の拡大がもたらすメリットを、半導体の購入者全てが等しく享受できるわけではない。設備投資の大半は、米アップルなどの顧客が使う最新型の半導体の増産に振り向けられる。半導体製造装置を手掛ける米アプライド・マテリアルズによると、同社への受注の約7割は、そうした最新鋭の半導体製造に使われる機器が占める。

半導体業界にとって投資回収期間はどんどん短くなっており、古いタイプの半導体を生産する新工場をつくる動機はあまり大きくない。最新の半導体を必要としない顧客向けには、昔からの工場がしばらく生産を続ければいいというわけだ。

だから比較的単純な構造の半導体を利用する産業は、まだ、しばらく品薄は解消されないかもしれない。デジタイムズ・リサーチの分析によると、自動車メーカーは2018年に約400億ドル相当の半導体を使った。この需要はさらに増加が続いている。

ドイツのインフィニオンの試算に基づけば、従来型自動車に利用される半導体は約400ドル相当だ。これが完全に電動化された自動車になると、その2倍が必要になる。完全自動運転車なら、はるかに膨らむ。

もちろん供給不足が、永遠に続くことはない。顧客はより先進的でより価格が高い半導体を早晩使えるようになる。

半導体メーカーも、さらなる投資拡大をする気にさせられるだろう。アプライド・マテリアルズによれば、過去10年間を見ると、比較的古いタイプの半導体用の製造装置の方が実際のところ、最新鋭半導体向けよりも販売が伸びていた。

そのうえ米国は自国内で、欧州連合(EU)は域内での半導体製造促進をそれぞれ財政支援する方法を検討中だ。

とはいえ、幾つかの業種にとって今年1年は半導体供給の「日照り」状態が続くのではないだろうか。

<背景となるニュース>

  • バイデン米大統領は2月24日、半導体の国内生産加速を支援する財源として370億ドルを確保する意向を示した。半導体不足により、自動車をはじめ各分野のメーカーの生産に支障が出ていることに対応した動きだ。
  • 欧州連合(EU)も、最先端タイプを含めた半導体の域内生産化を拡大する方法を検討している。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。