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世界を変える、2020年の新興テクノロジートップ10

Like VR and AR before it, spatial computing is the next step in merging physical and digital worlds.

先行するバーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)と同様、空間コンピューティングは、物理的な世界とデジタルな世界を統合させる次のステップです。 Image: Unsplash/Lucrezia Carnelos

David Elliott
Senior Writer, Forum Agenda
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技術的変革

  • 世界経済フォーラムは、最新の報告書で、世界を変えるインパクトを持つ革新的な「2020年の新興テクノロジートップ10」を発表しました。
  • 痛みのない注射を可能にするマイクロニードルや電動航空機など、画期的なイノベーションが選ばれました。

世界では、新型コロナウイルスワクチンの開発が急ピッチで進められており、記録的な速さでそれを実現できそうな有望な兆しもみられます。将来、同じような状況に陥ったとしたら、テクノロジーは一層迅速なワクチン開発を可能にするでしょうか。

世界経済フォーラムの最新報告書と科学誌サイエンティック・アメリカンでは、その答えをイエス、つまり可能だとしています。

デジタルレプリカ、つまり、人による治験の代わりとなるハイテク技術が、臨床試験をより迅速かつ安全にする可能性があります。報告書「2020年の新興テクノロジートップ10」によると、産業界やヘルスケア分野、社会を揺るがすイノベーションは、これだけにとどまりません。

電動航空機から、曲がり角の先が「見える」技術センサーまで、今年のリストは、刺激的な進歩で溢れています。専門家たちは、数ある候補の中から絞り込み、現状を大きく変え、真の進歩を加速させる可能性の高い幾つかの新しい成果を選び出しました。

From sun-powered chemistry to whole-genome synthesis, the 10 technologies span industry, healthcare and society.
太陽エネルギーを利用した化学から、全ゲノム合成まで、トップ10に上がったテクノロジーは、産業界やヘルスケア分野、社会に及びます。 Image: World Economic Forum

2020年の新興テクノロジートップ10をご紹介します。

1. 痛みのない注射と検査を可能にするマイクロニードル

厚みがわずか紙1枚分、幅が人間の髪の毛1本分しかないこの小さな注射針は、痛みのない注射や血液検査を可能にするかもしれません。「マイクロニードル」は、皮下の神経終末を傷つけることなく皮膚に穿刺でき、シリンジやパッチに取り付けたり、塗り薬に混ぜたりすることもできます。自宅で血液検査を行って検査室へ送る、あるいは、その場で分析を行うことが可能になります。使用にあたって、高価な機器や高度なトレーニングを必要としないため、医療サービスが行き届いていない地域での検査や治療に役立ち、医療がより身近なものとなるでしょう。

2. 太陽エネルギーを利用した化学

私たちが依存している化学製品の多くは、製造の際に化石燃料を必要とします。しかし、太陽光を使うことで、不要なものとして排出されていた二酸化炭素を有用な化学物質に転換するという新しいアプローチにより、化学分野における二酸化炭素排出の低減が期待されています。このほど、このプロセスに必要な、太陽光で活性化する触媒が開発されました。これは、廃ガスから有用な化合物を生成する「太陽光」精製の誕生に向けた第一歩となり、薬剤、洗剤をはじめ、肥料や繊維に至るまで、あらゆるものに変えることができます。

3. バーチャルペイシェント

人間の代わりにシミュレーションを用いて、より迅速かつ安全な臨床試験を行うという目標は、容易に聞こえるかもしれませんが、それを支える科学は単純ではありません。人間の臓器の高解像度画像から取得したデータは、臓器の機能を制御するメカニズムの複雑な数式モデルに取り込まれます。そして、その結果として得られた計算式をコンピュータアルゴリズムが解き、本物と同じように動作するようプログラムされた仮想臓器を生成。人間に代わって、仮想臓器や仮想身体システムによって薬剤や治療の初期評価が行われることで、評価プロセスのスピードと安全性が向上し、費用を抑えることができます。

4. 空間コンピューティング

空間コンピューティングは、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)のアプリにすでにみられる、物理的な世界とデジタルな世界を結びつける新たなステップです。VRやARと同じく、空間コンピューティングは、クラウド経由でつながれたモノをデジタル化し、センサーやモーターが相互に反応することで、現実世界のデジタル表現をつくり出します。さらに、空間マッピングが加わることで、コンピュータという「調整役」が、デジタルな世界と物理的な世界を移動するヒトのように、モノの動きとやり取りを追跡、制御できるようになります。このテクノロジーは、産業、ヘルスケア、輸送、家庭における、ヒトと機械のやり取りの方法に新たな進展をもたらすことが期待されます。

5. デジタル医療

デジタル医療がすぐさま医師に取って代わることはないでしょう。それでも、状態をモニターしたり治療法を管理したりするアプリが、医師によるケアを強化し、医療サービスの利用に制約がある患者のサポート役となる可能性はあります。すでに、多くのスマートウォッチにより、装着者の不整脈が検出できるようになっており、呼吸障害やうつ病、アルツハイマーなどに有益な類似のツールも使用されています。さらに、センサーを搭載した錠剤も開発されています。この錠剤に含まれたセンサーにより、データがアプリに送信され、体温、胃の出血、発がん性のあるDNAなどの検出をサポートします。

6. 電動航空機

電気推進が航空機移動による二酸化炭素排出量と燃料費を削減し、騒音の大幅な低減を実現できるかもしれません。エアバスやNASAなど、多くの組織がこの分野の技術に取り組んでいます。電気による長距離飛行は、まだ実現に遠く、コストや規制上のハードルもありますが、この分野には、多額の投資が行われています。開発途上にある電動航空機プロジェクトは、およそ170にのぼり、その多くは、個人や企業向け、通勤用途ではあるものの、エアバスは、100人乗りの電動航空機の飛行態勢が2030年にも整う可能性があるとしています。

7. 低炭素セメント

コンクリートの主要な構成要素であるセメントは、現在、年間40億トン生産されています。生産工程では化石燃料の燃焼が必要とされ、その二酸化炭素排出量が世界の排出量に占める割合はおよそ8%。今後30年余りにわたって都市化が進むにつれ、セメントの生産量は年50億トンに増加すると予測されています。こうした中で、研究者やスタートアップ企業が、低炭素化を目指すアプローチに取り組んでいます。工程で使用する原料のバランスの微調整、排出を削減するためのカーボンキャプチャー(二酸化炭素回収)や貯留技術の導入、コンクリートからセメントを完全に除去するといった取り組みがその例です。

8. 量子センシング

曲がり角の先が「見える」自動運転車や、人間の脳の動きをモニタリングできる携帯型スキャナーを想像してみてください。量子センシングは、これらのことやそれ以上のことを実現可能にするかもしれません。量子センサーは、異なるエネルギー状態の電子の差を基本単位として活用するなど、量子という物質の本質を利用することにより、極めて高い精度で作動します。こうしたシステムの多くは複雑で高価ですが、より小型で手頃な価格のサンプルの開発が進められており、新たな活用の道が開かれることが期待できます。

9. グリーン水素

水素の燃焼時に生成される副産物は水だけです。また、水素は、再生可能エネルギーを利用した電気分解で生成することで「グリーン」になります。今年に入り、グリーン水素市場が2050年には12兆ドル規模に拡大するとの予測が出されました。その理由は、グリーン水素が、海運業や製造業など、高エネルギー燃料を必要とするため電化がより困難な分野において脱炭素化を促し、エネルギー転換における重要な役割を担う可能性を持っているからです。

10. 全ゲノム合成

微生物に導入する遺伝子配列の設計に必要なテクノロジーの向上により、かつてないほど大量の遺伝物質のプリントと、より広範なゲノム改変が可能になるかもしれません。これにより、ウイルスがどのように拡散するかについての洞察を得たり、ワクチン製造やその他の治療法の開発に役立てたりできるようになります。将来的には、バイオマスや廃ガスから化学製品や燃料、建設資材をつくる持続可能な生産を促進するかもしれません。さらには、この技術的向上を利用して、科学者が病原体に耐性のある植物を設計したり、私たちが自分のゲノムを書いたりすることすら可能になります。誤用のおそれも当然ありますが、遺伝子疾患の治療の扉が開かれる可能性もあります。

世界経済フォーラムは、テクノロジー・パイオニア・コミュニティとグローバル・フューチャー・カウンシルズのネットワークなどの活動を通じ、経済成長と社会の将来的なウェルビーイング(幸福)に欠くことのできないこれらのイノベーションをサポートし、その推進を後押ししています。

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