• 新型コロナウイルス感染拡大により、製造業界におけるコスト削減とサプライチェーンの透明性の向上は、より差し迫った課題となっています。
  • 持続可能な回復の鍵は、製造業におけるデータアナリティクスのメリットを最大限に引き出すことです。
  • 企業は、生産性の向上、カスタマーエクスペリエンスの向上、社会的および環境的影響という3つの主要な目標のため、データ面で連携していく必要があります。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、医療機器、医薬品、その他の必需品の供給を中心に、製造業の社会的・経済的役割の重要性に対する認識が高まりました。しかし同時に、このパンデミックは、製造業に未曾有の経済的打撃をもたらし、コスト削減と透明性かつ柔軟性あるサプライチェーンの構築が急務となっています。

価値を最大限に引き出し、持続可能な成長を達成するためには、これまで以上に製造業者が力を合わせて、データとアナリティクスを業務への適用していく必要性が高まっています。

データとアナリティクスの面における協力関係が、製造業に利益をもたらす3つの方法を紹介します。

生産性の向上

世界の製造業のリーダー企業は、既に工場およびサプライチェーン全体で、アナリティクスを活用することにより、資産の生産性向上(予知保全による稼働時間の増加など)、労働効率の向上(計画活動の自動化など)、純運転資本の最適化(在庫レベルの削減など)を図っています。

企業は、資産の生産性を向上させるための機会を追求しています。例えば、東芝は、パフォーマンスと信頼性向上のため、世界的な水処理装置メーカーと提携。この提携により、プラントオペレーターから提供されたセンサーデータに基づき、主要な化学薬品の投入とスケジューリングの最適化を図っています。これにより、コスト削減だけではなく、環境フットプリントの低減も実現しました。

もうひとつの例として、スイスのアクセロスは、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)に関連するリスクを低減し、その寿命を延ばすため、ロイヤルダッチシェル社と提携しています。アクセロス社のアルゴリズムが、設計データと運用データを組み合わせてFPSOのデジタルツインを作成。物理学をベースにしたデジタルツインは、外部イベントが部品やシステムの疲労に与える影響をリアルタイムでシミュレーションし、メンテナンスコストの大幅な削減を可能にします。

さらに、サプライチェーンにおける機会を捉えている企業もあります。オートスフィアは、サプライチェーンの川上から川下まで、すべての資産をグローバルに可視化するために立ち上げられた、自動車OEMおよびサプライヤーの大規模コミュニティです。サプライチェーン上の各社が、共通のプロセスと処理を経てデータを共有することで、Surgereが提供するプラットフォームを通じて在庫やその他の資産をリアルタイムで正確に追跡をすることができます。この可視性は生産性を大きく向上させるだけでなく、サプライチェーンの弱点を特定し、レジリエンス(適応、回復できる力)を高めることにもつながります。

別の例として、ワインとスピリッツ業界のグローバルなリーダー企業は、ボトル製造と流通プロセス全体のサプライチェーンデータを追跡するため、EVRYTHNGと提携しています。リアルタイムデータと高度な予測アルゴリズムを活用することで、厳しい品質要件と求めるコマーシャル・エクセレンスの達成を支えるサプライチェーンの可視化を実現しました。サプライチェーン全体のリアルタイムデータを入手し、必要な時にすぐにアクセスが可能な製品クラウドのおかげで、ボトルが市場に出る前に不良品を検出して、その流出を阻止することができます。

カスタマーエクスペリエンス

製造業者は、よりカスタマイズされた製品を提供したり、製品の出どころの確認できるようにしたりと、カスタマーエクスペリエンスの向上にも、データとアナリティクスの連携を活用しています。

その一例は、個別化されたがん治療です。例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、がん患者の転帰改善を目指し、医療提供者、サプライヤー、検査施設からなる広範なエコシステムと連携しています。このエコシステムのすぺての関係者が、患者データが交換し、特定のがんの治療をパーソナライズしています、されます。このシームレスなエンドツーエンドのデータフローにより、患者自身の細胞を使用した治療が可能になります。

別の例として挙げられるのは、製品の認証です。ラルフ ローレン株式会社(RLC)はEVRYTHNGと提携し、同社の全製品ポートフォリオをウェブ化。各製品にデジタル製品IDを割り振りました。RLCの製造パートナー各社は、生産から販売、その先に至るまでの追跡が可能となるよう、工場内の各アパレルアイテムにタグをつけています。リアルタイムの可視性は、サプライチェーンの整合性のより適切な管理を実現し、より効率的かつアジャイルな運用に必要なデータインテリジェンスを提供します。また、消費者も、購入した商品が本物であることを確認できるようになるとともに、RLCとの直接の関わりを持てるようになります。

社会的、環境的影響

データとアナリティクスにおける連携は、特に持続可能性の面で社会全体に利益をもたらします。企業と政府がこのような問題に取り組むために力を合わせる時には、共通のデータエコシステムが不可欠です。

例えば、ボルボ・カーズは、バッテリーサプライヤーと連携し、電気自動車のバッテリーに使用するコバルトのエシカルな調達を検証しています。Circulorが開発したブロックチェーンソリューションを活用することで、ボルボはサプライチェーン全体でコバルトを追跡できるようになります。Circulorとボルボは現在、このプラットフォームの利用を、自動車メーカー向けのCO2フットプリントなど、他の素材や特性にさらに拡張していくことを計画しています。

同様に、オーストラル・フィッシャリーズは、環境保全団体、世界自然保護基金(WWF)が、BCGデジタルベンチャーズとの提携のもと立ち上げたIoT(Internet of Things)とブロックチェーンのプラットフォームであるOpenSCを、サプライチェーンネットワーク全体での魚の追跡に活用しています。このプラットフォームにより、「餌から食卓まで」魚の出どころを確認できるようになります。こうして、同社の魚は、ただの商品からブランド化された、追跡可能なプレミアム商品へと変貌を遂げるのです。

連携した取り組み

通常、単一の製造業者だけでは、このようなメリットを完全に享受することはできません。サプライチェーン全体をカバーする、またはプロセス全体を可視化する、完全なエンドツーエンドのデータセットが必要です。さらに、例えばAI(人工知能)のトレーニングのために統計的に有意な相関関係を確立するなど、有効な洞察を得ようとする場合も、十分な規模のデータセットが必要となります。

結果として、外部パートナーからのデータが重要な役割を果たすことも多くあります。このため、製造業界の各企業が連携して、データを交換できるエコシステムの構築が欠かせません。相互理解とコラボレーションを促進するため、信頼できる単一の情報源を提供する、共通のデータエコシステムを必要としているのです。

世界経済フォーラムは、世界をリードする製造業者、技術プロバイダー、学術機関、その他多くから成るユニークなマルチステークホルダー・コミュニティを形成しています。このコミュニティで、必要条件を提示し、成功した企業が障壁をどのように克服してきたかを明らかにするフレームワークの開発に取り組んでいます。詳細は、世界経済フォーラムのプロジェクトコミュニティに参加してご確認ください。

製造業者は力を合わせることでこそ、お互いの経験から相互に利益を得ることができ、高度なアナリティクスのアジェンダを作成し、持続可能な回復を実現できるのです。