• サーキュラー・エコノミーは、廃棄物が発生しない世界を築いていく仕組みです。
  • 循環型ビジネスモデルは、今後10年間で4兆5,000億ドルのビジネスチャンスを生み出します。
  • 自然界は、サーキュラー・エコノミーを実現するための、重要な教訓を与えてくれます。

サーキュラー・エコノミーは、ビジネスリーダー、投資家、活動家、エコノミスト、環境問題の専門家にとって、数少ないディスラプティブな概念のひとつで、普遍的な魅力を持っています。環境再生型農業や物々交換から、修理と再利用、再生可能エネルギー、植物由来の代替肉に至るまで、サーキュラリティ(循環性)という概念は脚光を浴びていますが、何世紀にもわたって存在してきたものです。

経済成長と希少な天然資源の利用をデカップリング(切り離すこと)させることで、地球を枯渇させることなく消費することができる、サーキュラー・エコノミーが地球にもたらす利益は、これまでになく明確になっています。今後10年間で生み出されるビジネスチャンスは莫大で、4兆5,000億ドル。そして、経済成長と社会的進歩を再びカップリング(連係)させることで、新たな仕事、製品、サービスの利用、健康の改善という形で、社会に利益がもたらされるようになります。

生産と消費の新しいモデルが必要である理由とは。

第一次産業革命以来、経済成長と天然資源の利用の間には一対一の関係がありました。しかし、今日で、私たちは、地球が再生できいる天然資源の約2倍の量を消費しています。2030年までに、世界人口が85億人に達すると推定すると、世界の需要は、食料が35%、水は40%、エネルギーにいたっては50%増加すると見込まれています。なぜ、これが問題となっているのでしょうか。制約のない消費と生産は、大気や土壌の汚染、海洋生態系の破壊、異常気象、食料不足、エネルギー不足など、深刻な影響が現れます。

The Circular Economy offers a clean, green approach
サーキュラー・エコノミーは、クリーンで環境に配慮したアプローチを提供します
イメージ: World Economic Forum

サーキュラー・エコノミーには、経済成長、消費、天然資源の利用という三者の間に存在する有害な関係に終止符を打ち、これらの関係を改善させることができる説得力のある方法を提示しています。サーキュラー・エコノミーのビジネスモデルは、廃棄物が発生しない世界を想定しています。バリューチェーン全体で廃棄物の発生源(無駄な資源、容量、ライフサイクル、エンベディッドバリューなど)を排除することで、環境に有害な行動様式を断ち、数兆ドルもの経済価値を実現し、健全な商品とサービスの利用を促進することができます。

サーキュラー・エコノミーは説得力のある仕組みですが、今日の世界経済のサーキュラリティは8.6%にとどまっています。このサイクルを断ち切る必要と価値があるにもかかわらず、希少なバージン資源への世界的な需要は増加し続けています。ポストコロナの世界を再構築するにあたって、リニア型から循環型への移行を加速させるにはどうすればよいのでしょうか。

より良いバランスの取り方は、自然界から学ぶべき

答えは、私たちの周りにあります。自然界は、バランスを保ちながら再生し、成長し、消費しています。米ナショナルジオグラフィックのエクスプローラー・イン・レジデンスであるエンリック・サラ博士は、その著書「ザ・ネイチャー・オブ・ネイチャー」で、「人間以外の生態系では、すべてのものが再利用、または、別の目的で再び用いられています。自然界は、理想的なサーキュラー・エコノミーの仕組みを実現しており、あらゆるものがその寿命を終えた後に他の何かの源となっているのです」と説明しています。

自然界から4つの教訓を詳しく学んでいきましょう。この教訓は、サーキュラー・エコノミーのビジネスモデルやソリューションにすでに活かされています。

1. 更新と再生。自然界における、サーキュラー・エコノミーの典型的な例は、資源の循環です。つまり、水、炭素、ミネラルなどの資源を新しいシステムや既存のシステムに戻すことです。

ファストファッション業界は廃棄物問題への取り組みに奮闘しています。現在、使用後にリサイクルされる衣類は1%未満で、年間5,000億ドル以上の衣類が廃棄されています。革新的な繊維素材を開発する米エバニュー社は、「元の繊維分子を新しく高性能な再生可能繊維に転化させる、再重合」を活用した「ニューサイクル(NuCycl)」技術を用いて、廃棄物の解消に取り組んでいます。つまり、古い衣料は分子レベルに分解され、何度でも新しい素材として再生されるのです。

もうひとつの例は、米カンブリアン・イノベーション社による取り組みです。同社は、微生物や電極の相互作用から発電する技術に基づく、バイオ電気化学技術により、廃水を浄化するとともに、エネルギーを生成しています。

2. 保護と寿命延長。長年の研究により、植物や動物には自らを守り、環境をも保護する能力があることが分かっています。

蚕の研究により、米モリ社は、食品が腐敗する主な要因の発現を防ぐと同時に、保護層を開発しました。これにより食品パッケージを減らし、食品の貯蔵寿命を2倍に延ばすことに成功しました。生産される食品のおよそ3分の1が無駄になったり、廃棄されたりしており、その額は、年間約1兆ドルにも上っています。このように、食品ロスの削減に取り組むための膨大なチャンスが存在しています。

3. 薄い空気から価値を創出する。自然の生態系において、空気は重要な役割を果たしており、革新的な企業は、空気がいかに新しい価値の創出源となるのかについて注目し始めています。

世界経済フォーラム、テクノロジー・パイオニアである米エア・プロテイン社は、空気中に存在する元素(二酸化炭素、酸素、窒素などの)を利用し、代替肉のタンパク質に変えることで、農業を変革しています。

MITメディアラボでの実験を手始めに、インドのグラビキイ・ラボは、二酸化炭素排出ガスをリサイクルしてインクを生産しています。現在は、その技術を活用し、包装材や新素材に転化させる方法を探究しています。

4. 深刻な問題のある廃棄物をも、価値あるものに変える。「廃棄物」という概念は、自然界には存在しません。例えば、枯れ葉や動物の糞は、新たに生まれた生命に不可欠なエネルギー源となります。革新的な企業は、問題のある使用済み「廃棄物」をどのように対処できるかを考察しています。

イスラエルのホームバイオガス社は、生ゴミ、屎尿などの家庭から出る廃棄物を、貴重な肥料や調理用のクリーン燃料に転換して、廃棄物を低減し、経費を抑え、低質燃料が原因となる死亡事故を防止しています。

年間15億本のタイヤが使用済みとなり、その大半は焼却処分となったり、埋め立て地に送られたりしています。米エコール社は、無駄の出ない製造プロセスにより、廃タイヤを新製品に転換しています。紙やプラスチックと同様に、ゴムは劣化することなく継続してリサイクルできるため、タイヤを利用した製品は、無期限に再生することができます。

すべては生態系を守るために

自然からヒントを得たソリューションには、確実に希望があります。それは、私たちの社会、経済、地球全体に利益をもたらします。さらに、そのソリューションに、自然、テクノロジー、人間の創意工夫を組み合わせれば、活力ある地球を保護し、平等を促進しながら、世界の成長を促せることでしょう。地球は、このようなソリューションが、他者と連携せずには実現できないことも教えています。自然界と同様に、私たちは、サーキュラー・エコノミーの中で協調して機能するビジネスソリューションというエコシステムを必要としています。

プラスチックを例に挙げると、複数の企業が数10億ドルを出資して、プラスチックの廃棄物処理に取り組んでいることが話題になっています。包装用の新しいバイオ素材を開発する場合は、使用済の包装材を回収する収集システムやロジスティクスが必要になります。そのようなバイオ素材と他素材を確実に分けられるリサイクリング基盤も必要となります。また、この循環する資源から新しい商品を作り出す、製品デザインや製造設備が必要となります。米投資会社クローズド・ループ・パートナーズの「ビヨンド・ザ・バッグ・チャレンジ 」や世界経済フォーラムの「ミッション・ポッシブル・プラットホーム」などのバリューチェーン全体を視野に入れたイニシアティブは、システム全体に作用する、リニア型経済システムのエンドツーエンドの問題に、あらゆる部門のパートナーがどのように関与できるのかを示す一例です。

最後に、私たちは、循環型システムに価値を見出し、それを求める、消費者、イノベーター、投資家、政策立案者などを必要としています。私たち全員が協力し、より明るく豊かな未来の実現野ために尽力してはじめて、バランスを保つことができます。それは自然界の法則とまったく同じなのです。