大手銀行は新たな頭痛の種を抱え込むことになった。投資家や規制当局からの圧力で気候変動による金融リスクには目覚めていたが、今度は植物や昆虫、動物の保護についても気候変動と同じように緊急な対処を求められている。銀行に対応の備えが整っていない分野だ。

二酸化炭素の大気への放出中止は環境面で最も喫緊の課題だと広く認識されている。しかし人類は植物や動物、魚類の大規模な絶滅の責任も負っている。環境保護活動家は、生態的多様性を脅かす産業へのファイナンス業務で銀行が担っている役割に光を当てつつある。研究者ネットワークのポートフォリオ・ドット・アースは10月28日に公表した研究報告で、バンク・オブ・アメリカBAC.Nやみずほフィナンシャル8411.T、BNPパリバBNPP.PAなど大手銀行が昨年、生物多様性の破壊と関連する産業に2兆6000億ドル相当のファイナンスを行ったと指摘した。

驚くべき数字だが、はっきりした証拠はない。銀行が森林保護指定地域での作物育成などから利益を得ている企業向けのファイナンスを進めているのは疑いない。しかし部外者がどの企業向けの、どの融資がこうした問題を引き起こしているかを見分けるのは困難だ。一方、インフラプロジェクト向けファイナンスは、熱帯雨林を通る自動車道路の建設から再生可能エネルギーを供給する風力発電施設の建設まで、さまざまだろう。

銀行は二酸化炭素の排出状況をつかむため大量の情報にアクセスしている。ある企業の化石燃料からの移行の程度や、経済的に採算が取れない「座礁資産」になり果てているかどうかを判断するため、データベースを活用できる。生物多様性分野にはこうした開示情報がない。目標はもっと曖昧だ。パーム油産業が引き起こし得る破壊と鉱業排水を同一と見なすのは難しい。

しかし、それでも規制当局は生物多様性の問題に注意を向け始めている。オランダ中銀は6月に公表したリポートで、ハチの絶滅で農業が危機に直面するなど、生物多様性の消失は産業全体の継続性にとってリスクになり得ると指摘した。新たな規制導入や消費者の行動の変化は既存の事業モデルを脅かしかねない。

銀行は既に環境破壊に関連する悪評を避けようと大いに前向きになっている。しかし銀行が気候変動と同じように生物多様性の金融リスクへの対処に乗り出すには規制の強化が欠かせない。銀行が環境分野で監視役になるのなら、まず政府が関連する法律を定めるべきだ。

〈背景となるニュース〉

  • 世界の大手銀が昨年、化石燃料開発やインフラ整備など生物多様性の破壊が進む主因とされる産業活動に対して行った融資や株式・債券の引受業務は総額2兆6000億ドル相当に上った。研究者ネットワークのポートフォリオ・ドット・アースが10月28日発表した。
  • 報告は食品、林業、鉱業、化石燃料、インフラ、観光、運輸・物流などのセクター向けの最大の貸し手として、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン、みずほフィナンシャル、ウェルズ・ファーゴ、BNPパリバ、三菱UFJフィナンシャル、HSBC、三井住友フィナンシャルグループ、バークレイズを名指しした。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。