新型コロナウイルス感染拡大により加速する「仕事の未来」の到来 - 労働者を守るためにすべきことは?
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Image: Christina @ wocintechchat.com/Unsplash
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ダボス議題
- 新型コロナウイルスの感染拡大と第四次産業革命は、労働市場に二重のディスラプション(創造的破壊)をもたらしています。
- 新しく発表された「仕事の未来レポート2020」によると、2025年までに26ヵ国で8,500万人の雇用と、15の産業の大中企業で8,500万以上の雇用が取って替わられる一方、9,700万人の雇用が新たに追加されることになります。
- 労働者を守るため、企業と政府は、社会的セーフティネットを確保し、リスキリング(再訓練)とアップスキリング(スキル向上)の機会を提供、ESGを取り入れて、従業員の福利厚生に力を入れる必要があります。
ここ数年、第四次産業革命による技術の変化に促されて、「未来の働き方」がますます現実のものとなってきています。新たに誕生した最先端技術が、さまざまな産業や職務において、作業プロセスの自動化をもたらし、新たな機会を創出しています。そこに、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生し、これらの変化に一層拍車がかかりました。
「仕事の未来」は、もうすぐそこまで来ています。
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の経済活動に甚大な影響を及ぼし、多くの国で失業者が急増し、経済や社会全体で不平等が深刻化しています。歴史的な事実と比較して言えば、このパンデミックは、グレートリセッション(大不況)によってアメリカで2年の間に失われたよりも多くの雇用を、わずか2カ月で奪いました。
今月発表された世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2020」によると、雇用主の80%以上が、テレワークのさらなる普及と業務プロセスのデジタル化を予定していると回答しています。また、全体の約半数の雇用主が、業務の一部を自動化する準備を進めています。しかし、成長性のある仕事や分野へのさらなる投資を行わなければ、「雇用なき景気回復」を招く危険性があります。世界経済フォーラムのパートナー企業のデータによると、現状で雇用の代替の煽りを受けて失業する傾向が概して高いのは、女性、若年者、低賃金労働者です。
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第3版となる今回の「仕事の未来レポート」は、雇用創出のペースが雇用喪失のペースを上回る状況が依然として続くと予想していますが、それでも、雇用創出のペースは減速し、雇用喪失のペースは加速していると指摘します。そして、2025年までに26の国と15の産業の大中企業において、8,500万以上の雇用が代替されると予想されています。わずか5年後には、労働現場において人間と機械が仕事に費やす時間が同じになるのです。
同じく、2025年までに、データやAI(人工知能)などの新興産業や、営業、マーケティング、コンテンツ制作などの産業において、人間、機械、アルゴリズムが分業する新しい労働分野に9,700万の雇用が新たに創出される可能性があることも明らかになりました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークが普及したことから、職場環境自体も変容しつつあります。雇用主は、従業員の44%にテレワークを適用することを望んでいます。データによると、すべての労働者をテレワークに移行させるのは絶対に不可能であることが明らかになっており、どの程度テレワークに移行できるかは、各国の所得水準やデジタル化の進捗度によって左右されます。「働き方の未来」を根底で支えることになるのは、おそらくハイブリッドワークという方法でしょう。テレワークやハイブリッドワークという新興市場の誕生は、働くことの意味を再定義する契機となる可能性を提供していますが、それは主に、インターネット接続環境があり、自宅で業務に従事できるホワイトカラーのオンライン労働者に関係する話です。
こうした前例のない衝撃的な事態と、その根底にある長期的な構造転換に直面し、政府とビジネスリーダーに求められることは、即座に行動を起こして、現在職を失っている人たちや将来的にこの潮流に最も影響を受けそうな人たちを支援することです。
自動化の波とパンデミックという二重のディスラプション(創造的破壊)は、リスキリング革命の実現は待ったなしの課題だということを、痛烈に明らかにしました。
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「仕事の未来レポート」の調査データによると、全労働者のほぼ半数がリスキリング(再訓練)を必要としており、その割合は昨年よりも4%上昇しました。雇用主は、雇用者のスキル開発に投資することの重要性をますます認識するようになっています。調査対象の雇用主の平均66%がリスキリング(再訓練)とアップスキリング(スキル向上)への投資に対する成果が1年以内に見込めると回答しました。こうした取り組みが、オンラインをベースで行われる傾向も強まっており、デジタルファーストラーニングへの大きなシフトが進んでいることがうかがえます。
労働者の支援策として求められるのは、次のような相互接続型の取り組みです。
ひとつ目は、この移行期にある労働者を保護すると同時に、未来の雇用を積極的に創出すること。政府は、失業者の保護するための適切な社会的セーフティネットを構築し、それを的確に張り巡らすことが求められます。また、エドテック、ケアエコノミー、グリーンエコノミーなど、社会的利益をもたらす未来の市場への投資を支援することも求められます。これが結果的に新たな雇用の創出にもつながります。
二つ目は、ミッド・キャリア層の転職と、リスキリング(再訓練)、アップスキリング(スキル向上)、訓練プログラムに投資すること。企業と政府は、労働者を未来の仕事に移行しやすくする取り組みを連携して進める必要があります。具体的には、学位ではなくスキルや可能性を求めて雇用を決める新しいアプローチの合意、訓練プログラムへの共同出資、労働者を支援するオンラインラーニングの導入が挙げられます。2020年1月に発足した「リスキリング革命プラットホーム」は、2030年までに10億人により良い教育スキルと仕事を提供することを目指しています。
三つ目は、ビジネスにおける優先事項と慣行を見直し、気候変動と社会的不平等という地球規模で高まりつつある脅威に対処すること。ビジネス上の意思決定の中核に、環境、社会、ガバナンス(ESG)の問題を据えなくてはなりません。健全な「働き方の未来」の実現に向けて、企業が注力するために求められる主な測定基準は、従業員に対して実施した訓練の時間、企業による訓練への平均投資量、そして賃金格差の継続的な追跡が挙げられます。
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そして最後は、すべての取り組みが、労働者のウェルビーイング(幸福)を確保する目的のもと行われること。新型コロナウイルスの感染拡大は、ウイルスの脅威から、介護の必要性に応じることまで、私たちの日常における、生活、健康、ウェルビーイング(幸福)に、無数のストレスを与えています。今回発表された「仕事の未来レポート」の新しいデータによると、雇用主の約78%が、現在のテレワークモデルでは、人々がこうした余分なストレスに対処することを強いられているために、生産性が損なわれる恐れがあると考えていることがわかりました。そして、雇用主の34%以上がコミュニティ意識とコミュニケーションの感覚を高める慣行を取り入れようとしていると回答しました。
新型コロナウイルスの感染拡大は、仕事における「グレート・リセット」を目指す契機をもたらすとともに、それを追求する機会と責任が私たちにあることを知らしめました。今回の不況により、2020年には最大1億1,500万人が極度の貧困に追い込まれ、さらに何百万人もの人々の生計が立ち行かなくなる可能性があります。今こそ、まさに行動を起こすときなのです。
*本記事は、はじめにCaixingに掲載された記事の和訳を転載したものです。
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