• テクノロジーを駆使したインフラの時代の招来は、想像よりも難しいことがわかっています。
  • 各国政府はインフラ・テックが盛んになるような環境を作る必要があります。
  • 分野と国を越えた先見性のある法と規制が、イノベーションのチャンスを開く可能性があります

テクノロジーを駆使したインフラ、つまり、インフラ・テックの将来性には目を見張るものがあります。よりスマートで環境にやさしい都市、相互に結び付いた輸送システム、効率的でカーボンニュートラルな建設、より高性能で長持ちする資産、パンデミック(世界的大流行)への一段と迅速な対応。ユビキタスな5G Wi-Fi環境の普及が、これらすべてを支えています。

しかし、その実現は想像よりも困難であることが明らかになっています。コネクティビティの悪さ、煩雑な規制、資金の不足、スキルの格差などが、進捗の妨げとなっています。

インフラ・テックの導入ペースを加速させ、デジタルインフラの新時代を切り開くことは、各国政府の継続的な努力と、官民の協力および投資による後押しがあってのみ、実現が可能です。

このプロセスを加速させる5つのステップをご紹介します。

1. 政府が主導権を握る

各国政府は、インフラ・テックが繁栄できる環境作りをする役割を担うことが極めて重要でし。国や地域レベルで協調したアプローチをとることで、政府はイノベーションを推進し、AI(人工知能)や自動化、モノのインターネット(IoT)、ドローン、その他のテクノロジーを活用したスマートな輸送や建設、クリーンエネルギー、デジタル政府を取り入れることができます。

そのためには、高速なコネクティビティ、クラウドコンピューティング、センサー、フィンテックへ多額の投資を行う必要があります。財源不足を考慮すると、政府は潜在的可能性が最も高く、大々的に提供可能なテクノロジーに焦点を絞る必要があるでしょう。

InfraTech readiness and use case
イメージ: KPMG

規制、法律、調達ガイドラインに柔軟性を持たせ、特定のテクノロジーよりも成果を重視するべきです。また、政府は特定のテクノロジーに置く比重を減らし、代わりに分野横断的なソリューションを通じて、テクノロジーの統合を促すべきでしょう。

デジタルコネクティビティは優先度の高い課題です。つまり、規制上の制約を緩和し、可能であれば租税優遇措置を利用して、「ラストマイル」コネクティビティへの投資を促すことが不可欠ということです。

政府がこうしたアプローチを採用することで、レジリエンス(適応、回復できる力)を高め、パンデミックやその他の打撃から経済回復を早めることができます。

2. 進化するテクノロジーとリスクへの適応

テクノロジーは急速に変化するため、次にやってくる画期的なテクノロジーがすぐに廃れてしまうこともあります。そのため、政府はテクノロジーと付随するリスクに対し、先を見越したアプローチをとらなければなりません。

法と規制が変化のスピードに追いつかず、刺激的な新しいイノベーションの実行を遅延させる恐れもあります。これに対する答えは、特定のテクノロジーより将来の成果に重点を置いた、可能なかぎり柔軟な規制と調達ガイドラインを策定することです。

リスク対処する場合にも同様のことがいえます。政策立案者は、新しいテクノロジーが環境、雇用、ソーシャル・インクルージョン、データセキュリティにどのような影響を及ぼすかを予測しなければなりません。厳格なデータ保護、環境基準、計画的な再教育などを通じて、及ぼしうる悪影響を予想・対処する必要があります。

3. データを政策の中核に据える

データは、インフラ・テックの原動力です。それは、私たちにとって最も貴重な資産であり、通信、電力、水、輸送、デジタルな公共サービスなどのインフラを牽引しています。

最先端のデータ分析によって、新型コロナウイルスの感染拡大をいかに正しく追跡できるか、また、食料と生産サプライチェーンのモニタリングをいかに正しく行えるかが、ここ数カ月の間に各国で証明されてきました。

政府のデジタル化が進む中、国民を中心とした見方に立つことで、保健、社会的ケア、教育、公益事業など、国民に必要なサービスへの平等なアクセスを徹底させることができます。

政府が、データの共有と相互運用性を促進すればするほど、アイデアの拡散が促され、イノベーションが喚起されます。そのため、政府は、官民双方のデータの収集、処理、アクセシビリティを優先課題に据え、データの質と精度に重点を置くべきです。

また、データのプライバシーと保護が国民の信頼の土台となることも認識する必要があります。これは、インフラ・テックの採用を成功させるために、欠かすことができません。カナダのデジタル憲章は、信頼に基づく国家ビジョンを示した好例です。

4. 幅広い政策手段を活用する

政府は、インフラ・テックを加速するために自己裁量で使える手段が多くもっています。将来を見越した法や規制によって、イノベーションのチャンスが開けることは、前述しました。これらは分野や国をも越えて施行されるのが望ましいといえます。

大規模で高価なインフラ資産は、別のものに取って代わられた場合行き詰まる可能性があります。プロジェクトの調達と契約をライフサイクル全体にわたってみることで、より新しいインフラ・テックが出現したとき、政府は従来のインフラ資産を補強する柔軟性を持つことができます。また、リスクを低減する目的から、「サービスとしての」調達も広がりをみせています。

新しいテクノロジーへの投資は、必然的に大きな不確実性伴います。投資家の期待に見合ったリスクおよびリターンのプロファイルを政府が作成しなければならない場合もあります。官民パートナーシップおよびガバナンスのベストプラクティスを取り入れ、利害関係者間でリスクを適切に移転することも一案です。

政府機関にインフラ・テックを後押しする体制が整っておらず、断片化した構造がイノベーションとデータ共有を妨げることは、珍しくありません。そのため、変革に重点的に取り組む公的機関を新設すると、新しいアイデアの普及と国の適応力および潜在能力の向上を促すことができます。

最後に、政府はインフラ・テックを受け入れるスキルを強化する必要があります。そのためには、企業に対して労働者の訓練を奨励し、公的な研修プログラムを策定し、学界と産業界の連携を促すことが必要です。

5. 民間資本を呼び込む

収益源の予測が不可能で、リスクの高いインフラ・テックベンチャーへの投資意欲をかき立てるには、どうすればいいでしょうか。

これまで多く試みられてきたアプローチのひとつが、特にプロジェクトの初期と後期の段階で、分野助成金を付与する方法です。これらは、租税優遇措置、低利融資、研究開発奨励金の形で提供することができ、米国や欧州、中国で行われた再生可能エネルギーへの助成金は、国内での採用を加速させ、コストの削減をもたらしました。

もうひとつの選択肢は、多数の小規模プロジェクトをより大きな集合体に束ねて、リスクを広く分散させることです。従量課金制や利用者払い制など、斬新でダイナミックな価格設定も、確実な収入源によって投資家の信頼を高める目的で考案されています。

世界持続可能エネルギー・イノベーション基金は、世界経済フォーラムとKPMGが最近立ち上げたイニシアティブです。民間投資家と公的投資家をひとつに束ね、国の垣根を越えて活動することを目指して設計された、初の世界的基金です。

この基金は、温室効果ガスの排出を大幅に削減する可能性を持つ製品やソリューションに投資対象を限定しています。低・中所得国に照準を絞り、投資家に競争力のあるリターンを提供します。同様に、持続可能性を目標に掲げ、革新的で環境に優しいインフラ・テックへの投資を喚起する基金が、ほかにも出現することが期待されます。

インフラ・テックのエコシステムの構築

コスト効率が高く、スマートで、環境にやさしく、長期にわたって持続可能なインフラを実現するインフラ・テックは、明るく新しい未来を約束します。インフラ・テックは、市民と、政府や物理的な世界との関わり方を変える可能性も秘めています。

すべての政府が目指すべきは、公共・民間部門、投資家、資金提供者、および利用者という複数プレーヤーから成る、効果的なインフラ・テックのエコシステムの構築です。こうしたシステムを整備されれば、持続可能で包摂的な成長の基礎を築くことができるのです。