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大規模な一時解雇を防ぐため、週4日労働制度を検討するドイツ

Germany's largest trade union has made the call for a 4-day week.

ドイツ最大の労働組合は週4日労働制の導入を求めている Image: Unsplash

Charlotte Edmond
Senior Writer, Forum Stories
本稿は、以下会合の一部です。持続可能な開発インパクト・サミット
  • ドイツ最大の労働組合であるIGメタルは、パンデミック(世界的大流行)により高まる経済的圧力を相殺するため、組合員が週4日労働制を求めて声を上げることを提案しています。
  • 賛否両論で迎えられた提案でしたが、基本的に反対の声が多い中、ドイツの労働社会相は可能性を前向きに検討したいとしています。
  • 週の労働時間の短縮というアイデアは既に他の国でも検討されており、新型コロナウイルスがさらなる広がりを後押しする可能性もあります。

週平均労働時間が34.2時間と、既にヨーロッパで最も短いドイツで、さらなる短縮を求める声が高まっています。

ドイツ最大の労働組合であるIGメタルは、自動車産業における失業を食い止めるため、週4日労働制を提案しています。新型コロナウイルスがもたらした困難は、この分野の既存の構造変化による経済的ダメージをさらに悪化させています。

IGメタル委員長、イェルク・ホフマン氏は、南ドイツ新聞に対しこの業界での雇用の維持は可能だと主張し、週4日労働制の導入を各企業に強く求めると語りました。

Average hours worked by employees.
従業員の平均労働時間 Image: Eurostat

ホフマン氏は、時間短縮に応じて給料を引き下げるべきではないとし、それが実現できなければ、労働者がこの変化を受け入れられることはできないだろうと言います。

金属加工や電気分野の労働者の代表であり、強い影響力を持つIGメタルは、その組合員だけにとどまらない、賃金と労働基準に関する議論の先駆者となってきた前例があります。2018年には、特に介護や育児を抱える労働者が、週労働時間を2年間の間35時間から28時間へ短縮できる権利を勝ち取りました。

ドイツにおける移行は実現するか?

ドイツにおけるブルーカラー労働者の多くは、電子化に苦戦している自動車産業で働いています。労働時間の短縮は、電子化への取り組みに不可欠な熟練の労働者や専門家の雇用を守ると同時に、退職金の支出を抑えるひとつの方法になりえるとIGメタルは主張しています。

フベルトゥス・ハイル労働社会相は、この考えに反対の立場をとっていません。もし、各企業の賛同が得られ、時給を上げ、従業員が不足しないようにすることが可能ならば、政策を前向きに検討したいと述べています。

ドイツは、何百万という人々に今も恩恵をもたらしている一時帰休スキームを24か月へ延長することを予定しています。このスキームは、特に製造および小売分野で普及しています。

The total percentage of the working age population in employment, as of the second quarter of 2020.
2020年第二四半期の生産年齢人口における雇用率 Image: OECD

週労働時間を短縮することへの理解はまだあまり得られていません。加盟企業合わせて労働力の約70%を雇用していることになるドイツ経営者連盟の理事は、タイムズ紙に「給与調整を行い、週4日労働制度を導入することは、 このショックをさらに悪化させるだけです」と語っています。

労働時間短縮を求める声の高まり

週労働時間の短縮という考え方は、数年間にわたり議論されてきており、注目を浴びている支持者もいます。

昨年、日本マイクロソフト社では給与減なしの従業員の週休3日制を試験的に導入、その期間の売り上げが40%近く伸びたと発表しました。フィンランド首相のサンナ・マリン氏は、稼働日の労働時間を8時間から6時間に短縮することを検討しています。2019年にイギリスの影の財務大臣であったジョン・マクドネル氏は、10年以内に週労働時間を32時間に短縮することを提案しました。そして、ニュージーランド首相のジャシンダ・アーダーン氏も、観光業を後押しし、パンデミック後に国を立て直す方法として、労働時間の短縮を提案しています

Average working hours by sex and occupation.
性別および職業別の平均労働時間 Image: Eurstat

他にも、ワークライフバランスの向上という誰もが想定する可能性に加え、労働時間短縮がもたらす地球へのメリット、生産性向上、メンタルヘルス向上への貢献を主張する声もあります。

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