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日本は4月初旬が山場、「コロナ自粛」続けば大きな波紋

3月5日、新型コロナウイルスへの不安に覆われた世界の金融市場は、いったん小康状態に入った。都内で2016年4月撮影

新型コロナウイルスへの不安に覆われた世界の金融市場は、いったん小康状態に入った。 Image: 2020年 ロイター/Issei Kato

Kazuhiko Tamaki
Columnist, Reuters

新型コロナウイルスへの不安に覆われた世界の金融市場は、いったん小康状態に入った。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁による声明や、米連邦準備理事会(FRB)の緊急利下げなど、「止血剤」が効果を発揮した形だ。それでも、新型ウイルスの感染がいつピークアウトするか、情勢は不透明なままだ。

日本国内では、2月26日に安倍晋三首相が要請した「イベント自粛」がいつ終了するのか注目されている。仮に「2週間」たった今月11日にもう2週間延長されても、社会やマーケットは織り込み済みと認識するのではないか。しかし、4月初めになっても国内で感染拡大が続き、イベント自粛や小中高の休校が継続するようなら、大きな反応がありそうだ。

コロナ問題の大きな山場は、4月上旬に来るだろう。

G7声明や米利下げ、市場沈静化に効果

4日のニューヨーク株式市場は大幅反発し、5日の日経平均.N225も2万1000円台で堅調に推移。G7の共同声明やFRBの0.5%利下げが市場の不安心理をいったん沈静化させたと言えるだろう。

日本国内では18〜19日の日銀金融政策決定会合への期待も高まっており、ETF(上場投資信託)の買い上げ増などの「緩和強化」が打ち出されるなら、その前に「日本株をショートにするのは無謀」(国内金融機関)との声が多く聞かれる。

しかし、先行きの視界が晴れてきたわけでは決してない。2週間のイベント自粛要請を受けて大相撲春場所が「無観客」で行われる事態となり、選抜高校野球も観客なし、あるいは開催中止が検討されている。

これまで国内経済を支えてきた消費関連が、大幅な売り上げ減少に直面している。市場は公的な統計が出るまで反応しづらいだろうが、この状況が長期化すれば、2011年の東日本大震災や2008年のリーマンショック時に直面したような経済的苦境に陥りかねないと、多くの人々がうすうす気付き始めている。

自粛要請から2週間後、再延長は織り込み

この先を展望する上で、1つの節目は今の自粛期間が終了する11日だ。テレワークも13日を当面の区切りとしている企業が多く、それ以降はイベントを含め、事態がどうなるのか大きな注目を集めている。ただ、新型ウイルスの感染者が増加している現状をみると、イベント自粛が解除される可能性は低いだろう。

マーケットもさらに2週間程度は自粛期間が延長されることを織り込んでいるとみられ、日銀決定会合を前に大幅な株安を予想する声は多くない。

再々延長なら市場動揺も

だが、4月初めになっても感染者の拡大ペースに衰えが見えず、イベント自粛期間がさらに延長された場合は話が別だ。複数の市場関係者は、大きな変動が金融マーケットに生じる可能性があると懸念する。

市場を圧迫するルートは4つ考えられる。

1つ目のルートは、自粛が1カ月を超えることで、消費関連の売上減少が広範な分野で顕在化し、パートタイムやアルバイトの解雇が増え、消費者に最も近いところで「異変」が鮮明になることだ。この部分の動揺は社会的なインパクトも大きく、内閣支持率にも波及しかねない。

2つ目のルートは、日本での感染拡大が誰の目にも明らかになり、外国から日本に対し、渡航制限を強化する動きが広がることだ。米国が日本との往来を禁止・制限する事態となれば、両国間のビジネスに大きな影響が出かねず、経済活動の大幅な制約要因となる。

3つ目は、こうした動きと連動して海外の市場参加者が「日本売り」の行動に出る懸念だ。日本株の下落率が相対的に大きくなることも予想される。

4つ目は、7月24日に開会式が予定されている東京五輪が本当に開催されるのかという疑念の広がりである。海外勢の投資行動に影響するだけでなく、日本国内における消費者や企業経営者の心理にも悪影響を及ぼすに違いない。

バイオベンチャーのアンジェス(4563.T)が5日、大阪大学と共同で新型コロナウイルスの感染を防ぐDNAワクチンを開発すると発表した。早ければ6カ月で臨床試験が可能という。こうした明るいニュースも出てくるようになった。

自粛が奏功し、4月上旬に感染のピークアウトが確認され、公立の小中学校の多くが4月7日に始業式を迎えられることを切に祈りたい。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。

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