8つのトピックで振り返る、年次総会2020
2回目の登壇となる、ドナルド・トランプ米大統領 Image: World Economic Forum / Mattias Nutt
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- 年次総会2020、最大の焦点となったのは気候変動
- 資本主義、AI、仕事の未来に関しても議論が白熱
- 世界経済フォーラム50周年の節目となった年次総会
グレタ・トゥーンベリさんが2019年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に選出された時、米誌タイムは「普通の10代の少女でありながら、権力者たちに向け真実を訴えようと勇気を奮いたたせ、世代を象徴する人となった」と説明しました。
グレタさんは再びダボスの壇上に立ち、真実を訴えました。世界的な対応の遅れが気候変動を引き起こしたのだと十分に立証された結果を述べ、迅速な対応を求めました。
「異常気象をもたらすことに気づいていながら、しかるべき行動を怠り、子どもたちの世代につけを払わせることになった理由を、将来どう説明するつもりでしょうか?1.5°C目標が経済に悪影響を及ぼすように思えたので、試すことすらせず、未来の生活環境を守ることを諦めた。そう説明するのですか?」。
グレタさんは、金曜日にはダボスでの学校ストライキ、#fridaysforfutureに参加しました。
2. 「悲観的な予言者を拒絶するべきだ」
一方、ドナルド・トランプ米大統領は楽観論を展開し、米国のエネルギーおよび経済政策を擁護しました。
「我々はテクノロジーを遠ざけるのではなく、これまでどおり受け入れていきます。自由に革新できれば、数百万から数億人が幸福で健康的な生活をより長く送ることができます。米国はこれまでの3年間、労働者を最優先し、成長を選択し、起業家が自由にその夢を叶えられるようにすることで、豊かな未来への道が始まることを全世界に示してきました」と大統領は語りました。
トランプ大統領の特別演説の動画はこちら。
3. 「自然に対して人類は宣戦布告しました。そして自然は今、非常に激しい反撃に出ています」
もちろん、気候変動への対策を呼びかけたのは、グレタさんだけではありません。アントニオ・グテーレス国連事務総長から、英国のチャールズ皇太子、フィンランドのサンナ・マリン首相、パキスタンのイムラン・カーン首相にいたるまで、気候の非常事態や、自然との関係をいかに修復していくかといったテーマが、この週の議論の大半を占めていました。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、演説の中で、このように警告しました。「気候変動が地球を殺すことはなくとも、人類を殺す可能性はあるのです」。
世界で最も厳しい環境で暮らす人々にとって、気候変動は対岸の火事ではありません。現在進行形で命を奪う脅威です。「チャド共和国における先住民と先住民女性協会(Association for Indigenous Women and Peoples of Chad)」会長、ヒンドゥー・オウマロウ・イブラヒム氏の演説は、強烈な現実と向き合わせてくれるものでした。
4. アップリンク(UpLink)から1兆本の樹木まで、将来に向けた取り組みの数々
世界経済フォーラムは「アップリンク(UpLink)」を公表しました。アップリンクは、社会問題の解決を目指す起業家が、世界経済フォーラムのコミュニティから必要な支援を受けられるよう、両者を結びつけるためのオープン・プラットホームです。その目的は、2030年までにより公正な世界を実現するための、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、気候変動や貧困など、世界が直面している問題への解決策を増やすことです。
他にも、生物多様性を保全し気候変動に対処するため、世界中に1兆本の樹木を育成、再生、保全する取り組みや、2030年までにより良い教育、技能、仕事を10億人に提供できるようにすることを目標としたリスキリング革命といった、大きなイニシアティブが先週発表されました。
5. テクノロジー悪用が生み出しかねない、恐怖の世界
「人間をハッキングできる力は、よりよい医療サービスの提供等、正しい目的に使うこともできます。しかし、もしその力が21世紀のスターリンの手に渡ってしまえば、待ち受けているのは何でしょうか。人類史上最悪の全体主義政府の誕生です。そして、21世紀のスターリンの座を狙う人々は数多くいるのです」。
歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏はこう述べ、21世紀の三大脅威について概要を説明しました。他にも、グーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏が、AIに関して私たちが直面する最大のリスクは、その莫大な可能性を正しい目的のために利用できていなかったことだ、と警告しました。
ナオミ・ワドラーさんは、サンディフック小学校銃乱射事件が起きた時、わずか5歳。
17人の生徒が殺害されたパークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件の時には11歳でしたが、さほど動揺しなかったと言います。
「もちろんぞっとする事件でしたが、同じような事件が前から頻繁に起きていたので、どこか慣れてしまっていました。恐ろしいことに、感覚が麻痺してしまっていたのです。ほとんど日常の一部といった感じでした」。13歳の少女は、ミュージシャンでありドキュメンタリー『Parkland Rising』の共同制作責任者でもあるウィル・アイ・アム氏にそう語りました(ウィル・アイ・アム氏との対談の動画はこちら)。
ワドラーさんは、自らの小学校で抗議の授業ボイコット(ウォーク・アウト)を率いた学生活動家であり、パークランドの事件の生存者とも面会してきました。
「パークランドの子どもたちと語り合い、苦しみを分かち合い、私たちはこんな目に遭うべきではないとわかったことは大切な体験になりました」。
7. これまでの資本主義は終わった
企業は社会のあらゆる関係者に責任を負う、という世界経済フォーラムの基本理念、ステークホルダー資本主義の未来に関わるセッションでは、財界のリーダーが新時代について提言しました。
セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼共同最高経営責任者は、「私たちがなじんできた資本主義は終わりました。株主のために利益を最大化することだけが大切という妄念こそが、気候変動による危機的状態を招いたのです」と語りました。
8. アンゲラ・メルケル首相:「他者との話し合いは冷戦時代よりも困難になっている」
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、特別講演の中で、社会の断絶について懸念を表明しました。
「異なる意見の相手とは意思疎通の可能性がないから話したくない。そういう傾向が社会に顕著に見受けられることには、深刻な懸念を抱いています」。
「冷戦時代でも、両陣営間にはきちんとしたコミュニケーション・チャネルが存在していました。もしかしたら今の世界の方が、当時より話し合いの機会が欠如しているかもしれません。だとすれば、皆さんにお願いします。他者と話し合うことが困難だとわかっても、どうか話し合いを放棄しないでください。あきらめれば、我々はデジタルの波に呑み込まれてしまうでしょう。そして、同じ考えの人とばかり語り合うようになるでしょう。そうなれば、大惨事を招くことになります」。
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