ファッション産業に変革を求める最近の潮流。劣悪な労働条件のもとで生産され、かつ、想像以上に環境への影響が大きい「資源の投入・生産・消費」モデルからの脱却がファッション産業に求められています。この問題は、過去のアジェンダで掲載した「知られていないファッション産業のコスト」や、より詳細には「ファストファッションが環境にもたらすもの」でも取り上げています。将来の世代を念頭におき、具体的な事例や実行可能なプランに基づいたボトムアップ・アプローチや解決策が必要です。ファッション業界に持続可能な変化を生み出し、変革を起こす新たな有望な考え方を導く先駆けとなる5つの方法を見出しました。

1. 行動変化の促進

より環境などに配慮したファッションを選択することができるように消費者の意識改革を進める動きがあります。そのような行動を促すのは個人的で人間的な動機が前提に。周りを認めさせたい、あるいは認められたい、そして自分自身を表現したいという願望が衣服を購入する理由となっていることを忘れてはいけません。情報へのアクセスや多くの選択肢があれば、消費者は明確な意思と十分な知識に基づいて購入を論理的に判断することができるのです。例えば、自分の服を査定するグッド・オン・ユー(Good On You app)は、クローゼットの中を見直して、ブランドを比較し、より環境に配慮した取り組みに参加できるように促します。レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)を使えば、高級ブランドのシェアエコノミーを利用して、デザイナー服を格安でレンタルすることができます。後者のスタートアップ企業にはアリババ創始者のジャック・マーが2,000万ドルの投資を行っていることからも、有望ビジネスとして注目されていることが分かります。

このほかにも、組織的に新しい考えに基づいて作られたツールを用いてファッションの専門家を育成するイニシアチブがあります。いくつかの例を紹介しましょう。

アムステルダム・ファッション・インスティテュートの循環型ファッション起業研究修士課程がその一つです。オランダの社会的企業サークル・エコノミーとファッション・フォー・グッドと共同で設立予定のこのコースでは、社会的、環境的な価値に配慮したファッションビジネスを教えます。

センター・フォー・サステナブル・ファッションは今年で設立10周年を迎えるロンドン芸術大学のロンドン・カレッジ・オブ・ファッション内に設置された研究センター。ファッションを通じて行動を変化させることでより持続可能な未来を築く取り組みを進めてきました。

ユース・ファッション・サミットは国連グローバル・コンパクトとグローバル・ファッション・アジェンダのパートナーシップ事業。学生を対象としたこの2年間のプログラムでは、持続可能な開発目標35を実現するためのより環境に配慮したファッションの枠組みを設計します。

2. スケールの大きなコラボレーション

体系的に変化する中でみられるように、環境の持続可能性を目標としたコラボレーションを促す先進的な取り組みがファッション産業で数多く展開されています。利害関係者はファッション産業に存在する「資源の投入、生産、廃棄」のサイクルによって根付いてしまった境界を壊そうとしています。例えば、ブランドとバリューチェーンのパートナー企業との協力。こうした企業は環境の持続可能性や環境社会影響を測る共通のツールを利用し、互いに情報共有と共通認識を図ります。比較や長期的な進展、マンネリ化の回避に焦点を当て、同じ規則に従い、「共通言語」を使用することを目的とします。大規模なコラボレーションを推し進める先進的な取り組みもあります。シェイピング・ファッションは、グローバルシェイパーとファッション・レボリューションのネットワークを連携させたプロジェクト。ファッション産業が抱える地方や地域の問題に対応し、グローバルなキャンペーン活動を通じてインパクトを増大させます。また、サステナブル・アパレル・コーリションはバリューチェーンの全関係者を繋ぎ合わせた大きなスケールで環境への取組みの成果を測定します。一方で、有害化学物質排出ゼログループが設定する「ゼロ排出に向けたロードマップ」 は、繊維や皮革、靴業界と連動して有害化学物の使用廃止を掲げています。

3. 循環型イノベーション

ファッション産業をより持続可能なものにしようとする先進的な方法の3つ目として取り上げるのは、「循環型イノベーション」の推進。アップサイクルからリサイクルまでのプロセスを、機械や化学物に頼らず環境にやさしい方法へと移行する動きがあります。これにより、ファッション産業から投入/生産の枠組みが取り払われ、原材料を浪費する必要がなくなります。新しいビジネスモデルがその実現を実証済みであることからも、ファッション産業はもはや方法論ではなく、完全に循環型となるのはいつかという段階にきています。循環型イノベーションの事例をいくつか紹介します。

グローバルなプラットフォームを形成するファッション・フォー・グッドは「アクセラレータープログラム(accelerator programme)」を通じて多くのイノベーションを支援してきました。例えば、スピンダイの環境にやさしく、工程を追跡できる布地の染色技術、レザーテック(LeatherTeq)の革製品の製造過程で塩を使わずに革を鞣すことがでるライトハイド技術、ピリ・バイオ(Pili Bio)の微生物を用いた有機染色技術、そしてアグラループ(the Agraloop)の食用作物生産から出る廃棄物を集め、布地用の繊維に加工する技術などです。

サーキュラー・ファッション・ゲームスは専門性の異なるメンバーで構成するチームがファッション産業に循環型イノベーションをもたらす活動を行う短期集中プログラム。そこで生まれたソリューションには、繊維製造会社のレンチング向けのデジタルツールがあります。自社製の布地を使用するデザイナーに、循環型利用の選択肢を提供する技術です。

ファイバーソートは大量の使用済みの布を繊維の種類ごとに自動的に振り分ける技術です。リサイクル業者に信頼性があり着実な素材の投入を行うことで、廃棄物が大量に排出されるのを防ぎます。

ダイニーマは丈夫で軽量の繊維。衣服の耐久性と品質を高め、商品をより長持ちさせます。

4. 透明性

イノベーションの4つ目の領域は、ファッション産業の「透明性」。変化のツールとしてどの程度の透明性を求めるかが重要です。利害関係者は無駄に情報を公開することは避けたいと考えます。必要なことは目的にあった透明性であり、それにより関係者は環境に配慮した信頼性の高いバリューチェーンの情報にアクセスし理解することできるのです。透明性のイニシアチブには、ブロックチェーン技術を用いてバリューチェーンの透明性を創出するトランスペアレントカンパニー(A Transparent Company)のスタートアップ事業や、ファッション・レボシュ―ションが毎年150の有名ブランドを対象に社会・環境の取り組みに関する情報をどの程度公開しているかをランク付けして発表している「ファッションの透明性指標」、そしてモノのインターネットを活用してアパレル商品とそのバリューチェーンの全工程を繋げ、持続可能なイノベーションの向上に必要な情報を提供するEON-IDなどが挙げられます。

5. 現代の作り手

作り手の存在なくしてファッションは成り立ちません。先進的な取り組みの5番目はまさにそうした「作り手」に関する分野です。現代の作り手とは、職人や研究者、技術者、そして先駆者となる人たちです。彼らは地元や地域の伝統技術を積極的に再生させ重宝するとともに、最先端技術の開発や古いものと新しいものを組み合わせます。その一例を紹介しましょう。

エンスヘーデ・テキスティールスタッドはオランダの都市エンスヘーデで織物産業を再生する取り組みです。昔に使用されていた織機と再生した布地を新しい方法で使用する、循環型テキスタイル工法を提案しています。

マイコテックスは菌糸体を使って、布地を体に合わせた服型通りに成長させます。廃棄物の大量排出を防ぎ、100%の生分解性やスキンケアにも利点を持つ技術です。

ダイヤモンド・ファウンドリーはプラズマリアクター技術を使用してダイヤモンドを人工的に製造します。天然ダイヤモンドとは違って、環境や人体に悪影響を及ぼすことはありません。

ボルト・スレッドは、人工的なクモの糸やキノコの栄養体である菌糸体でできた革のような素材を用いた、動物を殺すことなく動物性由来の絹糸を生産する企業です。

フィリピン・イロイロ市のクラフツマンシップはかつてフィリピンの繊維都市として栄えた地域で活動するスタートアップ企業。マナナヒ(地元の裁縫師)の名録を作成しています。

いずれもファッション産業において高い期待を集める取り組みです。ファッション革命は順調に進展し、新しい考えや技術、取り組みが毎日のように生まれています。持続可能なファッションはあっという間に、単なるトレンドから新しい常識となっているでしょう。