国連で35年間働いて学んだこと

A worker trims hedges outside the United Nations Headquarters in New York City, U.S., August 29, 2017 REUTERS/Andrew Kelly - RC15F3B5B210
At heart, the work of the United Nations depends on one powerful human emotionImage: REUTERS/Andrew Kelly
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国連人口基金(UNFPA)のアジア太平洋地域事務所長を務めた直近の期間も含め、国連で35年間働くなかで、私は国連の活動の根底にあるのは愛だと、しばしば述べてきました。

国連は二度の世界大戦の灰燼のなかから、人類が二度と同じ悲劇を繰り返すまいと抱いた切なる希望を体現するものとして設立されました。このため国連憲章は、「基本的人権、人間の尊厳と価値、男女および大小すべての国の同権に対する信念」を改めて確認しています。

この信念を実践に移すために必要な愛とは、すべての人を人として認め、誰もが人間らしい生活を送る同じ権利を持つと理解する、意識的で理性的な努力です。それは、「他者」を理解しようとする骨の折れる取り組みであり、私たちが相手の立場に立つことです。知らない人、意見の合わない人、さらには私たちに深刻な害を与えたかもしれない人も含まれます。

それは、どれほど痛みを伴おうとも、時には大切なものを敵対者に譲ることを意味する愛です。そうしなければ、互いに滅ぼし合うことになるからです。

それはまた、共感と思いやりに根ざし、誰もが参加できる公正で民主的な公共政策、制度、社会、そして国際社会を築く探求としての愛でもあります。持続可能な開発のための2030アジェンダが掲げる「誰一人取り残さない」ことを目指します。

魔法の薬はない

このように定義される愛を実践することは、人間にとって最も難しいことの一つです。国連が生まれた悲惨な状況が、それを物語っています。

その後、幸いにも新たな世界大戦は避けられてきましたが、愛が失われ、その残虐で悲劇的な結果をもたらす例を、私たちは今もあまりに多く目にしています。シリア、ミャンマー、中央アフリカ共和国などで激化し続ける過酷な紛争、紛争や深刻な人権侵害によって故郷を追われた6,500万人の人々がその例です。

世界では8億人を超える人々が極度の困窮のなかで暮らしています。一方、オックスファムの不平等に関する調査によれば、8人の男性が、人類の最貧困層の半分が持つのと同等の富を独占しています。また、妊娠・出産に関連する原因で毎日830人の女性が亡くなっており、その大半は防ぐことができます。

人々に振りかければ、突然大勢が協力して世界をより良く変えようとするような魔法の薬はありません。

国連システムにできるのは、粘り強く、執拗に、そして大半は華やかさとは無縁の努力を積み重ねることです。提言し、対話し、説得することに、技術面、資金面、政治面での協力を組み合わせ、可能な限り最善の決定と行動を支えます。

歴史を動かす成果

こうした取り組みもまた、愛の営みです。異なる信念や利害の調整を伴う場合、可能な限り最善の決定であっても、欠点があり、もどかしい妥協となることがあります。

それでも、世界が時にどれほど嘆かわしく見えようとも、私たちは目覚ましい進歩を遂げてきました。

戦争による死者数は二度の世界大戦後、減少傾向にあり、武力紛争の数も冷戦以降、減少傾向を示しています。

極度の貧困は1990年から2015年の間に半分を大きく上回る割合で減少し、5歳未満児の死亡数も同様に大きく減りました。妊産婦の死亡数は45%減少し、初等教育年齢で学校に通っていない子どもの数は4,000万人以上減りました。

Image: Our World in Data

米国が離脱を表明したにもかかわらず、世界のほぼすべての国が気候変動を抑制するための世界的な合意に署名しました。これは歴史的な成果です。

国連は、さまざまな形でこうした前進に関わってきました。

私自身は主に国レベルの開発協力に携わり、政府内外の国内機関や組織と緊密に連携してきました。多様な、ときには対立する関係者を結び付け、適切な政策や計画について合意できるよう支援してきました。

各国のパートナーがしばしば最も高く評価するのは、国連システムが寄り添うこと、そして重要な国家的取り組みに寄せる道義的な支援だと、私は感じてきました。

対話が重要な理由

同時に、国連は何よりもまず加盟国のためのフォーラムです。組織のこの側面は、具体的な成果がほとんど生まれない「話し合いばかりの場」だと、しばしば揶揄されます。

しかし、愛を育み実践するには、人々も国々も話し合わなければなりません。意思を伝え合い、互いを理解し、相手を思いやることを学ぶ唯一の方法だからです。

これは常識です。しかし、国連の場でそれが機能してきたことを示す科学的証拠もあります。たとえば、オハイオ州立大学とダートマス大学が最近行った研究では、総会での投票をめぐって形成される国家間の「親和性のコミュニティ」が、紛争の抑制に役立つことが分かりました。

安全保障理事会は、今日世界で続く最も残虐な紛争のいくつかについて、解決に向けた合意に至れないとして、正当に批判されています。理事国、とりわけ常任理事国5か国は、自国民と世界の人々から、より良く、より真剣に取り組むよう圧力を受けるべきです。それでも、理事会の責任のもとで行われる重要な取り組みの一つである平和維持活動は、国々が再び戦争に陥るのを防ぐ助けとなっています。

国連で行われる対話は、人権、気候変動対策、貧困撲滅、不平等の解消など、共通の価値観や目標をめぐる世界的な合意形成にも役立っています。

具体的な変化

国レベルでの仕事を通じて、こうした合意が具体的な変化に結び付く様子を目にしました。たとえば、子どもの権利条約の採択を受け、南北アメリカでは一連の法改正が進み、子どもにも確かに権利があると認められました。また、独立した少年司法制度など、その権利を守るための具体的な仕組みも整備されました。

ミレニアム開発目標をめぐって生まれた世界的な機運は、各国で貧困削減、保健、教育の分野における前進に確実に貢献しました。

MDGsは、統計上の平均値で示される目標の達成に大きく重点を置いていたため、人口の重要な層が取り残されました。この不公正をどう正すかについて、持続可能な開発のための2030アジェンダの採択に至る過程で、真剣な議論が行われました。同アジェンダは「誰一人取り残さない」こと、そして「最も取り残された人々にまず手を差し伸べる」ことを明確に掲げています。

これらは愛の勝利であり、私たちは祝うべきです。

しかし、これだけでは到底不十分です。勝利は遅すぎ、数も少なく、取り残された人々にはなかなか届きません。その結果、多くの人々が、既存の世界秩序と、それを段階的かつ平和的に変えていく道を暴力によって否定する選択へと向かっています。

マーティン・ルーサー・キングはかつて、「道徳的宇宙の弧は長いが、正義へと曲がっていく」と述べました。私たち一人ひとりが、より強い決意と勇気、寛大さをもって愛し、その弧をさらに、より速く正義へと曲げていく必要があります。

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