移民と経済的成功の物語は、しばしば結びついています。
20世紀初頭、ニューヨークのエリス島に押し寄せた何百万人もの移民は、ニューヨークと米国を経済大国へと押し上げる一助となりました。
大英帝国を横断する人々の移動は、産業革命の中心で同帝国が成功を収めるうえで欠かせないものでした。
また、世界で特に名の知られた起業家の多くは、移民の背景を持っています。スティーブ・ジョブズの父はシリアからの移民でした。テスラの創業者イーロン・マスクは南アフリカで生まれ育ち、その後、カナダと米国で学ぶため北米へ移りました。
しかし、世界全体の人の移動の大半を今なお経済移民が占める一方、経済以外のさまざまな圧力によって、移民はメディア報道や現在の政治論争の中心に押し上げられています。
シリア内戦、アフリカ各地の紛争、世界各地の自然災害により、何百万人もの人々が生まれ育った土地を離れることを余儀なくされました。
国際移住機関(IOM)の事務局長、ウィリアム・レイシー・スウィング氏が述べているように、「近年、紛争、迫害、環境の悪化や変化、そして人間の安全と機会が著しく欠如していることを背景に、移住と避難が増加しています。」
IOMの『世界移住報告書2018』は、今日の世界における合法・非合法の移民の実態を詳しく紹介しています。
報告書の主な内容から、世界の移民について知っておくべきことがすべてわかる9つの図表を紹介します。
増え、移動する人々

世界全体で移住する人の総数は過去25年間で3分の2近く増加しましたが、世界人口全体に占める割合は比較的安定しており、約3%です。
男女ほぼ同数、働き盛りの世代

シリアなどから逃れてきた子どもの難民が大きく報じられる一方、データによると、移民の大半は就労年齢にあります。これは、移住の大部分が経済的な理由によることを反映しています。
移民の男女比は、おおむね世界人口全体の男女比と同じです。
移住先としてのヨーロッパ

現在、ヨーロッパは世界で最も多くの移民が向かう地域です。2015年時点で、ヨーロッパには7,500万人の移民がおり、世界の移民人口の3分の1を占めていました。その半数を超える4,000万人はヨーロッパ出身者で、EUの開放的な国境政策を利用して域内を移動しています。
北へ向かう人々

ヨーロッパへ向かう移民の多くは、アジア(IOMの定義ではトルコと中東を含む)から北西へ、またアフリカから北へ移動しています。
ヨーロッパへ移動する移民の数は、域内を移動するヨーロッパ出身者より少ないものの、2015年には約3,500万人に上りました。
ヨーロッパで最も多くの移民を受け入れているのはロシアで、1,160万人の大半は旧ソ連諸国の出身です。
ドイツが提供する避難先

移民全体を最も多く受け入れているヨーロッパの国はロシアですが、難民や庇護希望者の主な移住先はドイツです。
2016年、ドイツは世界のどの国よりも多くの新規庇護申請を受け付けました。申請者の多くはシリア・アラブ共和国、イラク、アフガニスタンの出身者でした。
2016年、難民と庇護希望者の受け入れ数でフランスは第2位となり、ロシア、スリランカ、コンゴ民主共和国出身の移民が多く暮らしていました。
シリア危機

現在、難民の数は史上最多です。
2016年末時点の世界の難民2,250万人のうち、550万人は自国の内戦から逃れたシリア人でした。
アフガニスタンでは、30年以上にわたり難民の主な発生源となってきた不安定な情勢と暴力が続いています。同国は難民250万人を数え、世界で2番目に大きな難民の出身国となりました。
さらに、2016年半ばに南スーダンで大規模な暴力が勃発し、同国は難民の出身国として世界第3位となりました。同年末時点で、その数は140万人を超えました。
トルコへ逃れる人々

シリアの北西に隣接するトルコへの難民流入は、戦火に見舞われたアラブの国から人々が逃れる動きをほぼ映し出しています。
2016年、トルコは3年連続で世界最大の難民受け入れ国となり、難民は290万人に上りました。その大半をシリア人(280万人)が占めました。
世界の難民に占めるシリア人の割合が高いことを反映し、隣接するヨルダンとレバノンも難民受け入れ国の上位10か国に入りました。
パキスタンとイラン・イスラム共和国も、難民受け入れ数の多い国に含まれました。両国は、難民の出身国として世界第2位のアフガニスタンから逃れた人々を主に受け入れています。
湾岸諸国の存在感

トルコは世界のどの国よりも多くの難民を受け入れていますが、移民全体で見ると、一部のアジア諸国に比べて規模は小さくなります。これは、移民の大半が経済的な理由で移動するという一般的な傾向を反映しています。
急成長するインド経済は多くの人々を国内に引き寄せていますが、それでも入国する人より出国する人のほうが多い状況です。
石油資源に恵まれたサウジアラビアとアラブ首長国連邦の経済圏は、総数で見ると中東・アジアで最も多くの移民を抱えています。
一般に、湾岸諸国は移民の割合が最も高い地域です。2015年には、移民が人口に占める割合はアラブ首長国連邦で88%、カタールで76%、クウェートで74%、バーレーンで51%でした。
自由の国

世界最大の経済大国である米国は、世界で最も多くの移民が向かう国でもあります。
実際、米国は1970年以来、国際移民の主な移住先となっています。
それ以来、米国に住む外国生まれの人の数はほぼ4倍に増え、1970年の1,200万人未満から2015年には4,660万人になりました。
米国への移民の主な出身国の一つはメキシコです。同国は、国外に暮らす国民の数が世界で2番目に多い国です。
2015年、世界の国際移民のほぼ半数はアジア生まれで、その主な出身地はインド、中国、アフガニスタン、バングラデシュ、パキスタンなどの南アジア諸国でした。

