タイ南部のジハード主義――幻の脅威

Thai security forces patrol the railway in the troubled southern province of Yala March 27, 2013. The first round of formal peace talks between Thai government and the insurgent group Barisan Revolusi Nasional (BRN) will take place on March 28 and will be mediated by Malaysia. Although the first round is set for Thursday, there has been no halt in the fighting and people in the region see no early end to one of Southeast Asia's bloodiest conflicts. REUTERS/Surapan Boonthanom (THAILAND - Tags: CIVIL UNREST CONFLICT MILITARY POLITICS) - GM1E93R16KT02
Thai security forces patrol the railway in the troubled southern province of YalaImage: REUTERS/Surapan Boonthanom
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イスラム国(ISIS)の衰退と、東南アジアでISISに関連する暴力が出現したことは、この地域で越境ジハード主義テロの新たな時代が始まる可能性を示している。

タイでISISの活動に関する根拠のない報告が繰り返され、同国のイスラム教徒が多数を占める深南部、特に長年続くマレー系イスラム教徒の反乱がジハード主義の影響を受けやすいのではないかとの懸念が生じている。

これまでのところ、故郷パタニの解放を目指して戦う分離独立派勢力にジハード主義者が浸透した証拠はない、と国際危機グループの報告書は論じている。報告書の題名は、『タイ南部のジハード主義:幻の脅威』。

しかし、この紛争とタイで相次ぐISISをめぐる騒ぎが、新たなテロの脅威への懸念をあおっている。こうした懸念は不合理ではないが、その多くは見当違いであり、反乱の惨状と終結の必要性を見えにくくしてはならない。

反乱勢力の指導者と政府による直接協議が優先課題である。分権型の政治体制は、タイの単一国家体制を維持しながら、南部の主な不満に対処する一助となり得る。

越境ジハード主義

アルカイダとISISは、イスラム世界各地の長期化する紛争を利用して自らの目的を推進してきた。その中には、有力な国家の主権下にありながら中央政府の権限が弱い地域も含まれる。

ISISの時代における東南アジアの越境ジハード主義は、主として「下から」の現象だった。インドネシアやフィリピンなどでは、既存の武装組織がISISへの忠誠を表明した。これらの国々に加え、マレーシアやシンガポールでも、武装ネットワークに属さない個人や小集団がISISへの参加を試みたり、その名の下に行動したりしてきた。

しかし、これまでのところ、ISISや他のジハード主義組織へのこうした関与はタイ最南部では見られない。その理由の一つは、タイのマレー系イスラム教徒社会が越境ジハード主義に共感する土壌ではないことだ。同国のイスラム教指導者は、伝統主義者も改革派も、ISISとアルカイダが掲げるサラフィー主義ジハード思想を圧倒的多数で拒絶している。

ジハード主義組織に加わる動機はさまざまで、イデオロギーや宗教的信念とは結びつかないことも多い。

未定義

動機とプロパガンダ

確かに、こうした事情は一部のマレー系イスラム教徒がジハード主義に傾くリスクを低減するが、なくすわけではない。

ジハード主義組織に加わる動機はさまざまで、イデオロギーや宗教的信念とは結びつかないことも多い。ジハード主義のプロパガンダが一部の人々の心を動かす可能性はある。しかし、仲間意識やアイデンティティ、あるいは大義への献身を求めるマレー系イスラム教徒は、タイ国家への不満もさることながら、地域社会に根を張るパタニ解放運動に取り込まれる可能性の方が、越境ジハード主義組織に加わるより高いとみられる。

実際、マレー系イスラム教徒の反乱は、その地域性の強さを特徴としている。

この武装組織は、特定の領土における民族自決を追求し、国際秩序を破壊するのではなく、その一員となることを目指している。パタニ・マレー系武装勢力の指導者たちはISISなどの組織に敵対し、自らの勢力をジハード主義の影響に対する防壁と捉えている。

彼らによれば、ISISやアルカイダと同盟を結んだり、自爆攻撃や無差別の大量殺傷攻撃といった特徴的な戦術をまねたりすれば、国際的な正統性を主張する根拠を失い、地元の支持を損ない、敵対的な外国の介入を招くことになる。

国内でISISに触発された脅威に対処するマレーシアは、同国に亡命中のパタニ武装勢力の指導者がそうした関係を持つことを容認しそうにない。

だからといって、安心してよいわけではない。膠着状態の継続、戦術的な後退、バンコクと一部の分離独立派勢力との遅々として進まない和平対話への焦りや反対、あるいは現行戦略全般への不満さえも、影響力を得ようとする分派に極端な暴力を用いるよう促す可能性がある。指導者に不満を抱く武装勢力にとって、ジハード主義者の模範や支援は魅力となるかもしれない。

しかし、だからこそ、過度に危機をあおる一部の論調には疑問を呈すべきだ。

パタニ解放運動には派閥争いの歴史があり、主要な武装勢力であるパタニ・マレー民族革命戦線(BRN)は極めて秘密主義的だが、世代間またはイデオロギー上の深刻な対立を示す明確な兆候はない。

「状況は変わり得る」という主張を主な根拠とするジハード主義の影響への懸念は、既存の武装組織の指導部にISISや同様の組織との連携を望む声がないという証拠と照らし合わせて考える必要がある。

タイ政府とマレー系イスラム教徒の武装勢力が優先すべきなのは、2004年以降ほぼ7,000人の命を奪った紛争の終結であり、ジハード主義者が浸透する可能性についての憶測に基づいて行動することではない。

不安定な地域情勢の収束

紛争が長引くほど、分極化の進行、深南部の外にも広がりかねない反乱の激化、そして越境ジハード主義者につけ込まれる誤算が生じるリスクは高まる。

中東からのISIS戦闘員の流出、フィリピン・ミンダナオ島のマラウィ市での親ISIS戦闘員によるプロパガンダ上の勝利、そしてミャンマーからの避難を余儀なくされたロヒンギャへの報復をISISとアルカイダが呼びかけていることは、この地域にとって不安定化を招きかねない要因が重なり合っていることを示す。

こうした複数のリスクに対処するため、バンコクとパタニ・マレー民族革命戦線(BRN)は、より広範な社会的願望や懸念と、さまざまな反乱勢力の不満の双方を真剣に受け止めていると、深南部の人々にはっきり伝えるべきだ。そのためには、バンコクが和平対話を再活性化し、BRNが対話に参加する必要がある。目標は、分権化に基づく深南部の政治的解決策を策定することだ。

より一般的には、政府は表現の自由と政治集会の権利を回復し、人々が地域の意向を表明し、平和的に変化を実現できるようにすべきである。

『タイ南部のジハード主義:幻の脅威』、国際危機グループ

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