東南アジアで数十年続く紛争を終わらせる和平合意が脅威にさらされている。どうすれば守れるのか

Activists display a banner and a mural of President Rodrigo Duterte to denounced the declaration of martial law in Mindanao island, one year after Islamic militants occupied parts of the southern Philippine city of Marawi during a protest outside the presidential palace in Metro Manila, Philippines May 23, 2018. REUTERS/Romeo Ranoco - RC138137AEC0
Despite peace agreements, Mindanao is still under martial lawImage: REUTERS/Romeo Ranoco
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この記事は、世界経済フォーラムの地政学プラットフォーム

紛争に苦しむミンダナオ島では、住民が今年、画期的な和平合意を承認することに投票した。これにより、東南アジアで最も血なまぐさく、解決が最も困難な反乱の一つに終止符が打たれることが期待されている。1970年代初頭以来、分離独立派は、抑圧されてきた地域のモロ系イスラム教徒の完全独立、またはより大きな政治的自治を求め、マニラの中央政府に対する武装闘争を続けてきた。1976年、1989年、1996年の和平合意の失敗と期待外れを経て、昨年は大きな進展が見られた。

2018年7月、歴史的な和平協定が締結された。締結したのは、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領率いる政府と、ミンダナオ最大のイスラム系反政府組織、モロ・イスラム解放戦線(MILF)だった。バンサモロ基本法(BOL)として知られるこの合意は、問題の多かったムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)に代わる、新たな自治地域を設置するために必要な法律を定めた。

1月と2月の2日間にわたり住民投票が行われ、各管轄区域でBOLを批准するには過半数の賛成が必要だった。投票率は85%を超え、住民は圧倒的多数で新地域の設置に賛成した。この地域は、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治地域(BARMM)と呼ばれる。

既存のARMMを構成するバシラン、南ラナオ、マギンダナオ、スールー、タウィタウィの5州では、合計154万人が賛成票を投じ、反対票はわずか19万8,000票だった。ARMM以外の地域で投票が締め切られた後、コタバト市も新BARMMへの編入に賛成し、政府所在地となることが明らかになった。北コタバト州では20を超える村が賛成票を投じ、BARMMは前身のARMMより広く、人口も多くなることが確実となった。

新たな管轄区域には、首相を長とする80人の議員から成る独自の選挙制議会が設置される。この地域は域内で徴収される税金の75%を受け取り、中央政府からの交付金や天然資源収入へのアクセス改善の恩恵も受ける。反政府勢力の指導者たちは、新地域が、汚職との関係を指摘され、名ばかりの自治だと批判されてきたARMMを大きく改善することにも期待を寄せている。

マラウィ後の攻撃

政府とMILFが和平を進める一方、ISISに同調する複数の勢力は活動を続けている。マラウィ包囲戦の主な当事者であるアブ・サヤフ・グループ(ASG)とマウテ勢力は、紛争で大きな損害を受けたものの、今も存続している。ASGはバシラン、スールー、タウィタウィの離島の隠れ家から再び攻撃を仕掛けており、マウテ勢力は南ラナオで勧誘を続けているとみられる。地域で最も強力なジハード主義組織はBIFFで、マギンダナオ、北コタバト、スルタン・クダラット各州に約400人の戦闘員を擁する。

これらの勢力は和平プロセスを妨害する狙いで、注目を集める一連の攻撃を行ってきた。昨年7月にBOLが署名されてからわずか5日後、ASGとつながりのあるモロッコ人の自爆犯が、ラミタン市近郊の陸軍検問所で爆発物を起爆させ、11人を殺害した。BIFFによる爆弾攻撃は、スルタン・クダラット州の町イスランを8月28日と9月2日に標的とし、民間人5人を殺害、49人を負傷させた。2018年後半にIED攻撃がBOL締結後に急増したのは、BIFFの顔役アブ・ミスリ・ママによる次の明確な警告を受けてのことだった。「我々は自治に賛成ではない。独立のために戦い続ける」

攻撃は2019年に入っても続いた。1月27日、BOLの2回の投票日の間に最大の混乱を引き起こすタイミングで、ジョロ島の満員の大聖堂を2度の爆発が襲い、礼拝者22人が死亡した。この攻撃は、ジハード主義勢力がフィリピン南部の脆弱な平和を打ち砕く意図をなお持ち続けていることを改めて示した。

ISIS系の武装勢力は、戦場でも政府軍兵士と衝突している。昨年、ミンダナオ本島ではモロ系およびイスラム主義系勢力が関与する衝突が119件発生し、そのうち少なくとも83件にBIFFが関与した。

BIFFの各派とフィリピン国軍(AFP)の衝突により、武装勢力の戦闘員173人と政府軍兵士21人が死亡した。マウテ勢力は南ラナオで陸軍と散発的な戦闘を行い、AKPはサランガニ州と南コタバト州で複数の銃撃戦を始めた。ISIS系勢力が関与する衝突の結果、昨年ミンダナオで少なくとも91,485人が避難を余儀なくされた。

BIFFの拠点であるマギンダナオ州は、IEDの脅威が高まる中、その中心地ともなった。攻撃は19件に上り、その大半は道端で軍用車両やフィリピン国家警察(PNP)の車両を狙ったものだった。

一方、バシラン、スールー、タウィタウィの離島にある隠れ家では、ASGが2018年に軍と63回の武力衝突を行い、161人が死亡し、少なくとも民間人5,000人が避難した。

これらの数字は、ISISに同調する勢力がなお活動し、地域の安定を脅かしていることを示している。しかし、武装勢力によるマラウィ市の占拠の試みが2017年10月に鎮圧されて以降、脅威は低下した。包囲戦に至る過程では、AFPの情報活動に不備があったとの指摘を背景に、ISIS系の4勢力が連携し、比較的自由に活動できていた。武装勢力の総合的な戦力と連携の度合いに軍は不意を突かれ、長期にわたる市街地包囲戦への備えが不十分だった。

警戒の強化

マラウィ後、AFPの認識と態勢は大きく変化した。ISISに同調する4勢力の残存勢力は、戒厳令下で続けられた攻勢によって弱体化した。また、フィリピンと近隣2カ国がスールー海で実施した3カ国による海軍哨戒により、インドネシアとマレーシアからの外国人戦闘員の流入は減速した。ミンダナオのISISに同調する勢力は現在、地理的に分断されており、連合して攻撃を仕掛けるために再結集するのは困難だろう。同様の事態が再び起きる可能性は否定できないものの、警戒が強化された現在の状況では可能性は低い。

BARMMが批准されたことで、ドゥテルテは戒厳令下でこれらの勢力を壊滅させようとしている。しかし、過去1年間に進展があったにもかかわらず、和平への障壁は残る。MILFが新たな地域議会選挙を前に政党へと移行するため、長期にわたる移行期間が待ち受けている。

MILFの武装解除と動員解除も難航する可能性がある。MILFの戦闘員は、BARMMの移行期政府に加わった上級指導者よりも、社会復帰が難しいと考えられる。政治を担うこと自体も骨の折れる仕事となるだろう。MILFの指導者たちは、同様の和平協定の実施について学ぶため、早くから準備を進め、インドネシアのアチェ州で元反政府勢力の指導者たちを訪問した。アチェでは、武装解除と引き換えにイスラム系反政府勢力の不満に対処する自治を認める合意が、2005年以来おおむね維持されている。

ミンダナオでは、ジハード主義勢力の存在により、アチェの和平の成果を再現できるかは一層不確かだ。軍の情報報告によれば、マラウィ包囲戦前に流入した外国人ジハード主義者は今もBIFFとともに戦っている。また、マウテ勢力は、弱体化した勢力を補強するため南ラナオで勧誘を続けているとされる。2019年を通じてAFPとの衝突がさらに起きる可能性が高いが、戒厳令の圧力の下でISIS系勢力はさらに分裂し、ゲリラ戦術に転じ、爆発物の使用を増やす可能性もある。

ミンダナオに持続的な平和が訪れるかどうかを測る鍵は、貧困を減らし、より公平な開発の条件を整えると約束する新たな自治地域が、モロ系イスラム教徒の心をつかめるかどうかだ。真の自治が実現し、政治的安定が定着すれば、ISISがモロ人の分離独立運動を乗っ取ろうとした大胆な試みは、短命に終わるかもしれない。

ミンダナオのモロ和平プロセスを脅かすジハード主義勢力の実態、マイケル・ハート、国際戦略研究所

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