この記事は、世界経済フォーラムの地政学プラットフォーム
平和プロセスにおける女性の役割強化は、2000年の国連安全保障理事会決議1325の採択以来、国際社会の優先課題となっています。同決議は女性・平和・安全保障(WPS)に関するものです。
政策立案者、研究者、実務家は、包摂的でジェンダーに配慮した平和プロセスを推進するため、取り組みを強化してきました。画期的な国連決議から約20年が経過した今も、なぜ実施は大幅に遅れているのでしょうか。
ジェンダーに配慮した調停とは、(i)女性の参加を確保すること、(ii)紛争の原因と結果について異なる理解につながる女性の視点を取り入れること、(iii)女性と少女、男性と少年それぞれの固有のニーズに応える和平合意を実現すること、と捉えることができます。
報告書『女性の包摂を阻む7つの誤解』で、Inclusive Securityは、平和調停を包摂的かつジェンダーに配慮したものにする取り組みを妨げる、広く根付いた誤解を明らかにしました。
それから5年が経ち、私たちは問いかけます。こうした誤解は今も残っているのでしょうか。それとも、すでに過去のものとなったのでしょうか。
5月、危機管理イニシアチブ(CMI)とSIPRIは、第一線で活躍する専門家を招き、円卓会議を開催しました。議題は「口先だけで終わらせない:交渉の場にジェンダーの視点を取り入れる」。
結論は明白でした。ジェンダーに配慮した平和調停を実現する取り組みは、今なお大きな誤解によって弱められています。議論で得られた知見を踏まえ、前進を妨げている根強い6つの誤解を紹介します。
誤解1:「女性の問題」は他と区別できる
和平合意に関しては、「女性の問題」が適切に扱われているかどうかが、しばしば問題になります。善意からの懸念ではありますが、的外れです。本当に女性だけに影響する問題があるのでしょうか。平和と安全保障に関わる事柄で、女性に関係しないものがあるでしょうか。紛争は男性と女性に異なる影響を及ぼしますが、これが特定の話題は一方のジェンダーにしか関係しないという意味に受け取られがちです。
このセッションの参加者は、この誤解が調停をめぐる議論や実務に広く浸透していること、また女性リーダーが他の問題と容易に切り分けられるかのように、「女性の問題」について意見を述べるよう繰り返し招かれていることを話し合いました。
「男性の問題」について意見を求められた男性はどれほどいるでしょうか。それはどのような問題でしょうか。「女性の問題」という言い方は、女性が意見を述べる政治的な余地を狭めるおそれがあり、平和プロセスで扱われるすべての問題が、男性、女性、その他のジェンダーに関わるという現実にもそぐいません。影響の現れ方はそれぞれ異なり、こうした違いを理解することがジェンダーに配慮したアプローチの核心です。
途中から女性を加えるのは、せいぜい中途半端な取り組みであり、「女性を加えてかき混ぜる」といった場当たり的な対策につながりがちです。
誤解2:平和プロセスは交渉の場から始まる
コロンビアからミャンマー、南スーダンまで、紛争の影響を受ける国々では、「いつも手遅れだ」という思いが広く共有されています。
女性の参加が議題に上るのは、正式協議が招集される段階が一般的です。その頃には、事前交渉や協議、議題設定はすでに始まっています。
皮肉なことに、この初期段階こそ、紛争と平和をもたらす要因について幅広い視点が最も必要とされる時期です。また、動員や能力構築、関心の形成に向けた準備もできます。途中から女性を加えるのは、せいぜい中途半端な取り組みであり、「女性を加えてかき混ぜる」といった場当たり的な対策につながりがちだとの指摘がありました。
誤解3:ジェンダー担当顧問を任命すればすべて解決する
調停チームにジェンダー担当顧問を任命することは一般的になっており、歓迎すべき進展です。しかし、顧問の存在だけでジェンダーに配慮したプロセスが保証されるわけではありません。
顧問を任命すればチェック欄に印を付けたことになるかのように、その存在だけでジェンダーに配慮したプロセスが保証されると見なされることがあまりにも多くあります。しかし、顧問の仕事の有効性は、より広い調停チーム、とりわけ国内の関係者との協力にかかっています。
ジェンダーに配慮した紛争分析と調停はチームで取り組むものであり、専任顧問は貴重な力になり得ますが、唯一の立案者や実施者ではありません。重要なのは、ジェンダー担当顧問が、当該国の女性代表の参加に取って代わるためにいるのではないということです。その役割は、むしろ国内の関係者と連携するための経路を強化することです。
誤解4:女性は「声」にすぎない
女性が平和プロセスに参加するうえでのもう一つの障壁は、女性を自ら主体的に行動する存在ではなく、政治性を奪われた対象、あるいは単なる「声」と見なすことです。
女性はまた、「女性の問題」について語る単一の声を持つ均質な集団として、繰り返し捉えられています。あるパネリストはこう述べました。「女性はしばしば声として見られてきましたが、私たちはそれだけではありません。私たちは 声にとどまらない主体です。女性をその役割だけに押し込めることは、女性から主体性と当事者意識を奪います。」
この認識は、世界の平和と安全保障をめぐる言説に根付いており、女性を受け身で傷つきやすい被害者として保護を必要とする存在に描きがちです。 国連安保理決議1325の「保護」の柱が、しばしば最も重視されてきました。その結果、WPSの課題のうち、参加や紛争予防の側面が影に隠れてきました。さらに、和平合意に具体的な条項として盛り込まれ、実施のための資源が確保されない限り、女性の声が真に聞き入れられることはほとんどありません。
誤解5:調停とは煙の立ち込める部屋で繰り広げられる政治の魔術である
国際的な平和調停は、煙の立ち込める部屋で行われる「政治の魔術」のようなものとして描かれることがよくあります。参加者は、こうした描写が女性の和平交渉への参加を妨げていると指摘しました。
調停をこのように狭く捉える考え方の根底にある理念は、特定の男性が任命されることを優先します。
調停者に軍事分野の専門知識や仲間意識が必須とされれば、女性をその職に選ぶ余地は限られます。カリスマ性があり謎めいた人物が繰り広げる、不可解な政治ゲームとしての調停というイメージを払拭することが不可欠です。むしろ、必要な政治的権限と地位に支えられた、専門的な技能と技術的知識に焦点を当てるべきです。
誤解6:証拠をもっと集めればよい
和平協議への女性の参加を拡大する取り組みを正当化するには、その利点を示す証拠がさらに必要だと、しばしば主張されます。円卓会議では、このような道具主義的なアプローチに疑問が呈されました。
参加者は、和平交渉におけるジェンダーの均衡を当たり前のものにする必要性を強調しました。「なぜ私たちは、参加するたびに正当性を証明しなければならないのでしょうか。男性の同僚はその必要がありません。」参加者は、女性の参加を実証的な証拠で正当化する必要が生じるのは、家父長制的な規範によるものだと述べました。男性を標準とし、女性をその標準から外れた存在とみなすことは、男性の優位性を再生産し、女性を自然な状態に後から付け加えるものとする認識を強めます。
これは女性の参加拡大を妨げ、根深い偏見を再生産します。したがって、女性の参加に関する研究課題を批判的に検討し、その根拠として用いられる議論を見直すことが重要です。円卓会議では、規範に基づくアプローチが望ましいと強調されました。「世界人口の半分を占める女性は、それが権利であるというだけで参加できるべきです。社会におけるジェンダーの均衡は、和平交渉の場にも反映されるべきです。」
平和調停をめぐる誤解を解く
2018年のストックホルム・フォーラムでの議論は、女性、男性、調停をめぐる根強い誤解こそが、ジェンダーに配慮した平和プロセスへの前進を妨げていると明らかにしました。私たちが使う言葉や表現は、思考や行動を形作ります。平和調停や、そこにおける女性と男性の役割についての語り方を自覚し、批判的に見つめることによって初めて、こうした誤解に切り込むことができます。
ジェンダーの視点は、経済、社会構造、文化的規範、行動、関係性など、社会のあらゆる側面に関わります。すべての問題は女性の問題であり、和平合意で扱われるあらゆる事柄にはジェンダーの側面があります。ジェンダーに配慮した平和調停を実現するため、総会などの場における政策論議で、この点を認識すべきです。
「女性の問題」と煙の立ち込める部屋を超えて:平和調停におけるジェンダーをめぐる誤解を解く。ヨンジュ・チョンとエマ・ビェルテン=ギュンター(ストックホルム国際平和研究所)、ヨハンナ・プータネン、シルヤ・グルンドストレーム、マリア・リスティマキ(危機管理イニシアチブ)


