2015年:ユートピアへ向かうのか、それとも悪夢なのか?

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最良の時代であり、最悪の時代であり、知恵の時代であり、愚かさの時代であり、信念の時代であり、不信の時代であり、光の季節であり、闇の季節だった……

チャールズ・ディケンズ著『 二都物語

危機や災害、感染症の話が伝えられる一方で、今日の世界は人類史上のどの時点よりも良い状態にある。 ビル・ゲイツ や ハンス・ロスリングなどは、死亡率、公衆衛生、教育、富に関する世界の変化をめぐる神話や誤情報を払拭してきた。そして彼らの指摘は正しい。疑いなく、世界では紛争やそれに伴う死者が減り、繁栄と平均寿命が向上し、貿易、商取引、技術によるつながりはかつてないほど強まっている。

しかし、別の物語も進行している。それは厳しい現実を突きつけ、潜在的に不吉であり、世界の進歩を脅かす物語だ。そこに描かれるのは、脆弱なグローバル・ガバナンスと、大きな問題を解決する制度の限界、政治的・経済的権力の分断と競争の激化、脆弱国家に集中する極度の貧困、そして複雑な人道危機の前例のない多発であり、その結果、 第二次世界大戦以降、暴力によって避難を余儀なくされた人の数は最多となっている。世界の人道支援システムは明らかに対応能力を超えている。

現代の大きな課題が不安定、格差、持続不可能性であるなら、人類の進歩という物語はますます危機にさらされている。極度の貧困、紛争、脆弱なガバナンスが交わる地点に閉じ込められた「脆弱な」状況や国々ほど、このことが当てはまる場所はない。脆弱国は少数派ではあるものの、脆弱性が根強いこうした地域で目に見える変化が起きるまでは、世界の進歩を真に祝うことはできない。

私たちは今、歴史の転換点に立っている。必要なのは勇気あるリーダーシップだけではなく、市場と民間セクターの力を、政府、多国間組織、市民社会の広がり、資源、影響力と組み合わせるための、大胆で協調的な行動である。脆弱性を解消し、レジリエンスを築く万能薬も、即効策も、目新しい解決策もない。しかし、 マーシー・コーが世界で最も困難な地域で積み重ねてきた経験は、協働による大きな成果を生む機会について、いくつかの示唆を与えてくれる。

脆弱国家のレジリエンスを高める

予算が限られ、優先課題が競合するなかで、脆弱国家に追加援助を「報いる」ことは直感に反するように思えるかもしれない。しかし、相互につながった世界の性質上、近隣地域やより広い世界も、直接的な悪影響を免れない可能性がある。ISISやエボラを考えてほしい。

自然災害、紛争、政変、経済崩壊などの危機は、現状に異議を唱え、大きな変化の機会が生まれる局面である。人道危機への対応は国際社会にとって道義上の責務だが、単なる安定化の取り組みや災害復旧だけでは脆弱性に対処できない。効果的な取り組みは、まず命を救い、差し迫った苦しみを軽減することに重点を置き、すみやかに地域社会の危機からの回復を支援する段階へ移行し、その後、繰り返し起こるショックや後退を乗り越えるための仕組みを地域社会とともにつくる。

良好なガバナンスとレジリエンスが切っても切れない関係にあることは、証拠から明らかだ。私が所属するNGO、マーシー・コーと国連開発計画が近く発表する論文の調査によると、シリア難民の流入によって人口が25%増加したレバノンでは、中央政府も地方自治体も負担が増している。レジリエントな制度には分権的なアプローチが必要である。地域の住民であれ難民であれ、地域社会の人々に迅速に対応できる能力を地方政府が備え、国の政府には危機に対処し、次のショックに備える柔軟性が求められる。

暴力の連鎖を断つために

マーシー・コーが近く発表する調査報告書は、雇用機会の拡大によって若者が暴力的な運動を支持する傾向が弱まるという広く受け入れられた仮定に反する、増えつつある証拠を裏づける。私たちの調査が示すのは、若者が政治的暴力に加わるかどうかを異文化間で最もよく予測する要因は、不正義だということである。

たとえば、ソマリアでは若者の就業状況と、政治的暴力への支持または参加との間に関連は見られなかった。アフガニスタンでは、若者の雇用が増えても、武装反政府勢力への支持に大きな変化は生じなかった。コロンビアでは、元少年兵への主要情報提供者インタビューから、雇用の増加が武装反政府勢力への支持に大きな変化をもたらさなかったことが分かった。サハラ以南アフリカの13か国で若者の政治的暴力を引き起こす要因を分析した結果、経済状況は紛争の主要な要因ではないことが示された。

根深い社会的・政治的疎外、差別、汚職への対処には、単一の投入や研修だけでは不十分である。安定化には、多面的な戦略と、心理社会的支援、教育、経済開発、ガバナンス改革を提供する長期的なプログラムへの取り組みが必要だ。

脆弱国家でのビジネス

新興市場では、民間セクターが変革をもたらす力を持つことが証明されてきた。しかし不安定な環境では、投資に値するだけのリスクとリターンの均衡が必要となる。この欠けているピースに、正面から取り組まなければならない。

企業は、脆弱な環境において市民社会の担い手を助成金の受給者ではなく、企業のバリューチェーンに不可欠な存在と捉え直すことで、利益を得られる。成功の見込みを示す何らかの根拠がなければ投資に踏み切れない企業にとって、国際非政府組織(INGO)は貴重なパートナーとなり得る。地域社会で何年、あるいは何十年も活動してきたマーシー・コーのようなINGOは、社会課題に同時に対処し、不安定な環境で受け入れを得るプロセスにも資する、持続可能な事業利益を得る機会と課題を熟知している。

たとえばマーシー・コーは、 MasterCard と緊密に連携し、最も支援を必要とする人々への援助提供の安全性、効率性、迅速性を高める、商業的に成り立つ緊急電子送金ソリューションを開発してきた。ビジネスおよび金融リテラシーに関する共同の取り組みとあわせ、7か国で拡大する一連の活動を通じて、大規模かつ長期的な金融包摂を促進するための、熟慮された方法を理解しようとしている。

単純な解決策も即効策もないが、私たちは二つに分かれていく世界という語りから、世界的な協力と責任の共有が深まるという語りへと転換しなければならない。国際社会として、長期的なレジリエンスを築くため、最も脆弱な地域に共同の資源を集中させる必要がある。そうすることで、大胆なビジネス手法、新技術の活用、社会イノベーション、創造的なパートナーシップが結集し、変革をもたらす機会を生み出すための共通基盤を見いだせる。

著者:ニール・ケニー=ガイヤーは、 マーシー・コー

の最高経営責任者。

画像:シリア・トルコ国境に隣接するアトマ難民キャンプの上空を飛ぶ鳥。ロイター/Khalil Ashawi

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