製品に含まれるマイクロプラスチック?生分解性の代替素材となるシルク

“We cannot solve the whole microplastics problem with one solution that fits them all,” says MIT professor Benedetto Marelli.
Researchers have developed a biodegradable system based on silk proteins to replace microplastics added to products.Image: Unsplash/Susan Wilkinson
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  • EUだけでも、推定5万トンのマイクロプラスチックが毎年、農業用製品、塗料、化粧品に意図的に添加されている。

  • しかし研究者らはこのたび、安価で製造しやすい代替品となる、シルクタンパク質を基にした生分解性システムを開発した。

  • この新システムは、幅広い産業、特に農業における有効成分の送達を大きく前進させる。

新しいマイクロプラスチック代替素材に使われるシルクタンパク質は、広く入手でき、より安価だ。Image: 劉慕春

マイクロプラスチックとは、現在、空気、水、土壌中で世界中に見つかっている微小なプラスチック粒子であり、深刻な汚染の脅威として認識されるようになっている。また、世界各地の動物や人々の血流からも検出されている。

こうしたマイクロプラスチックの一部は、農薬、塗料、化粧品、洗剤など、さまざまな製品に意図的に添加されている。欧州化学品庁によると、その量は欧州連合だけで年間推定5万トンに上る。EUはすでに、添加された非生分解性マイクロプラスチックを2025年までに排除すると表明している。そのため適切な代替品が求められているが、現時点では存在しない。

MITなどの科学者チームはこのたび、安価で製造しやすい代替品となり得る、シルクを基にしたシステムを開発した。この新しいプロセスは、論文で説明されている。論文は学術誌Smallに掲載され、MITの博士研究員、劉慕春氏、MITの土木・環境工学教授ベネデット・マレッリ氏、そしてドイツと米国に拠点を置く化学企業BASFの5人の共著者が執筆した。

工業製品で広く使われるマイクロプラスチックは通常、特定の有効成分(または複数の成分)を、必要な時まで空気や湿気による劣化から守る。一定期間にわたって有効成分をゆっくり放出し、周囲への悪影響を最小限に抑える。例えば、ビタミンは錠剤やカプセルに詰められたマイクロカプセルの形で届けられることが多く、殺虫剤や除草剤も同様に包み込まれている。しかし、現在こうしたマイクロカプセル化に使われる素材は、環境中に長期間残留するプラスチックだ。これまで、自然に生分解される実用的で経済的な代替品はなかった。

環境中のマイクロプラスチックの負荷の多くは、ボトルや包装材など大きなプラスチック製品が時間の経過とともに劣化することや、自動車のタイヤが摩耗することなど、別の発生源に由来する。マレッリ氏によれば、拡散を抑えるには、それぞれの発生源に応じた解決策が必要になる場合がある。欧州化学品庁は、意図的に添加されたマイクロプラスチックが環境中の総量の約10~15%を占めると推定しているが、同氏によれば、この発生源は自然由来の生分解性代替品を使うことで比較的容易に対処できる可能性がある。

「すべてに当てはまる一つの解決策で、マイクロプラスチック問題全体を解決することはできません」と同氏は言う。「大きな数の10%は、それでも大きな数です。……気候変動や世界の汚染は、一度に1%ずつ解決していくのです。」

高級な布地に使われる高品質のシルク糸とは異なり、新しい代替素材に使われるシルクタンパク質は広く入手でき、安価だと劉氏は言う。布地に必要な細い糸を作るには、蚕の繭を丁寧にほどかなければならないが、この用途では繊維用の品質に満たない繭を使うことができ、拡張可能な水ベースの工程でシルク繊維を溶かすだけでよい。加工は非常に簡単で調整しやすいため、できた素材を既存の製造設備に適合させられる。既存の工場を活用する、簡単な「そのまま置き換えられる」ソリューションになる可能性がある。

マイクロプラスチックの生分解性代替品となるシルク

シルクは無毒で、体内で自然に分解されるため、食品や医療用途に安全と認められている。研究者らは実験室で、シルクを基にしたコーティング材を既存の標準的な噴霧式製造設備で使用し、標準的な水溶性のマイクロカプセル化除草剤を製造できることを実証した。この製品を温室内のトウモロコシに使用した試験では、既存の市販品よりも効果が高く、植物への損傷も少なかったと劉氏は言う。

他の研究グループも、小規模な実験室レベルで機能する可能性のある分解性カプセル化材料を提案している。しかしマレッリ氏は、「商業利用への道を開くには、有効成分を高濃度で含むカプセル化を実現する必要があります。影響をもたらすには、合成ポリマーを生分解性の代替素材に置き換えるだけでなく、同等、あるいはそれ以上の性能を達成しなければなりません」と述べる。

劉氏によると、この素材を既存設備に適合させる鍵は、シルク素材の調整可能性にある。シルク素材のポリマー鎖の配列を精密に調整し、界面活性剤を加えることで、乾燥して固まった後のコーティングの特性を細かく調整できる。水溶液で作られ加工されるにもかかわらず、この素材は疎水性(水をはじく性質)にも、親水性(水を引き寄せる性質)にも、その中間の性質にもできる。また、用途に応じて、置き換える素材の特性に合わせることもできる。

実用的な解決策を実現するため、劉氏は、カプセル化素材の液滴が形成される過程でそれを凍結し、形成過程を詳しく調べる方法を開発する必要があった。特殊な噴霧凍結システムを使って、カプセル化がどのように起こるかを正確に観察し、より適切に制御できるようにした。カプセルに包まれる「ペイロード」には、農薬、栄養素、酵素などがあり、水に溶けるものも溶けないものもある。それぞれがコーティング材と異なる形で相互作用する。

「異なる素材をカプセル化するには、ポリマー鎖がどのように相互作用するのか、また懸濁状態のさまざまな有効成分と適合するかを調べる必要があります」と同氏は言う。ペイロード素材とコーティング材を溶液中で混ぜ合わせ、噴霧する。液滴が形成されると、ペイロードはコーティング材の殻に包み込まれる傾向がある。コーティング材は従来の合成プラスチックでも、新しいシルク素材でもよい。

劉氏によると、新しい方法では布地に使えない低品質のシルクを利用できる。現在は用途がほとんどないため、大量に廃棄されている。また、使用済みの廃棄シルク布地も使えるため、埋め立て処分される素材を減らせる。

マレッリ氏によると、現在、世界のシルク生産の90%は中国で行われているが、それは主に中国が布地に必要な高品質のシルク糸の生産を極めてきたためだ。しかし、このプロセスでは大量のシルクを使い、そこまでの品質を必要としないため、広く利用されるようになれば、地域の需要を満たすために世界の他の地域でも生産を容易に拡大できると同氏は言う。

「この洗練された巧みな研究は、差し迫った環境課題となっているマイクロプラスチックのカプセル化材に代わる、持続可能で生分解性のシルクベース素材を紹介しています」と述べるのは、本研究に関与していないカリフォルニア大学アーバイン校の化学・生体分子工学准教授、アロン・ゴロデツキー氏だ。「紹介されている素材のモジュール性と製造プロセスの拡張性は大きな利点であり、実社会での応用に向けて期待が持てます。」

「このプロセスは、幅広い産業、特に農業における有効成分の送達を大きく前進させる可能性があります」と述べるのは、本研究に関与していないコネチカット農業試験場の所長、ジェイソン・ホワイト氏だ。「食料不安、農業生産、そして気候変動に関する現在および将来の課題を考えると、このような新しい戦略が強く求められています。」

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