メキシコのカボ・プルモでは、地域主導の取り組みによって、枯渇したサンゴ礁が再生しました。
この事例は、海を保護しながら地域社会の繁栄を後押しする「海洋繁栄地域」の概念を生み出す一助となりました。
フレンズ・オブ・オーシャン・アクションは、世界経済フォーラムのイニシアチブであり、海が直面する喫緊の課題に取り組むため、地域社会を結び付けています。
メキシコのカボ・プルモの海は、海洋生物でにぎわっています。サメ、エイ、ウミガメ、ザトウクジラなど、多くの種が、活気あふれるサンゴ礁を頼りに生きています。
いつもそうだったわけではありません。1990年代、バハ・カリフォルニア半島東岸の小さな町の隣に位置し、約2万年前に形成されたと考えられているサンゴ礁は、何十年にもわたる乱獲で壊滅的な被害を受けました。
しかし、そこに暮らす人々の行動によって、カボ・プルモのサンゴ礁の物語はそこで終わりませんでした。
今日、地域主導でかけがえのない海洋生態系を再生させようとする人々の取り組みは、「海洋繁栄地域」という概念の着想につながりました。これは、海洋の再生と人々の繁栄を両立させる、新たな海洋保全のアプローチです。

保護から繁栄へ
海の健全性を大切にすべき理由は数多くあります。海は、世界の野生生物の94%が生息する場所であり、大量のCO2を吸収し、地球上で熱を移動させることで気候を調節しています。
その価値は世界のGDPの約3~5%と推定され、世界中に雇用や財、サービスももたらしています。海洋地域の人々がこうした恩恵を受けられるようにすることが、海洋繁栄地域の概念の中核です。
「何十年もの間、私たちは生物多様性の保全が重要であるため、海の保護に力を注いできました」と、世界経済フォーラムの海洋アクション・アジェンダ責任者で、最近の研究の共著者でもあるアルフレド・ヒロン氏は述べます。この研究は、海洋科学者と経済学者からなる国際チームが、海洋繁栄地域の概念を提唱したものです。「理論上、これによって漁業を活性化し、収入を生み出せます。しかし、常にうまくいくとは限りません。」
海洋保護区は、保全を目的として海の一部を指定した区域であり、海洋生態系の回復に有効な手段であることが示されています。しかし、ヒロン氏によれば、世界で最も成果を上げている海洋保護区は、カボ・プルモのように、地域社会が当初から関与し、関与を望んでいた場所です。
地域主導の保全が持つ力
海洋繁栄地域とは、海域ベースの保全措置が実施される区域であり、「生態系の回復に受動的に頼って社会変革や経済成長を促すのではなく、社会と生態系がともに繁栄することを優先する」ものと定義されています。
これを実現するには、次の9つの「介入の柱」が必要です。
地域による管理
地域社会のウェルビーイング
戦略的提携
保全を主導するリーダーシップ
強固なガバナンス
持続可能な資金調達
協働型の管理
効果的な法執行
継続的なモニタリング
地域のリーダーシップ、地域住民の積極的な参加、多様な協力者のネットワークなどを通じて、カボ・プルモは9つの柱のうち少なくとも6つを満たしています。
1990年代初頭、カボ・プルモに1世紀にわたって暮らしてきた漁師一家は、サンゴ礁を救うには生計を諦めなければならないと悟りました。地域社会やほかの漁師たちの支持を得た後、政府に働きかけて保護区の指定を実現し、科学者と協力して指定に最適な区域を決めました。
こうして、サンゴ礁の70平方キロメートルを超える範囲を保護するカボ・プルモ国立公園が設立されました。1995年の設立時、公園の35%が禁漁区域に指定されました。地元住民はその割合を保護区域全体の100%に引き上げるよう働きかけ、自ら禁漁区域の規則を執行しました。
変化はすぐには起きませんでしたが、10年後には魚類のバイオマスが463%増加しました。公園設立から15年後には、小型の草食魚から中型の肉食魚、頂点捕食者まで、あらゆる魚群が戻ってきました。
他の地域も参考にできるモデル
ヒロン氏によると、カボ・プルモの地域社会が得た恩恵も同様に目覚ましく、エコツーリズム産業が生まれ、年間約800万ドルの収入をもたらしています。
「これこそが、この取り組みの目的です。繁栄とは、保護するだけでなく、そこから恩恵も受けることです」と同氏は述べます。「種の保護だけを考えるわけにはいきません。それは極めて重要です。しかし、人々のこと、社会への恩恵、経済への恩恵についても考えなければなりません。」
保全に成功した一方で、カボ・プルモは今も課題に直面しています。観光の増加に伴う人口構成の変化、不動産投機の拡大、資金不足などのガバナンス上の問題が挙げられます。
しかし、カボ・プルモは他地域の手本となっており、ヒロン氏によると、2030年までにメキシコ全土で海洋繁栄地域をさらに10か所設ける提案もあります。実現すれば、周辺地域社会に大きな恩恵をもたらします。
「そしてもちろん、それは[世界経済フォーラムの]フレンズ・オブ・ジ・オーシャンネットワークが特に重視していることです。立場も関心も異なる、各地の多様な声を結び付け、海を大切にするよう働きかけています。」
カボ・プルモの事例が示すように、地域社会とそのウェルビーイングを中心に据えた、政府、科学者、地域社会の協働によって、長続きする保全プロジェクトを実現できます。
「これは夢ではありません」とヒロン氏は述べます。「願望でもありません。すでに実現しつつあるのです。」







