地球の生物多様性を守るために必要な年間支出は不足している。
民間投資資金がなければ、この不足はいつまでも解消されない可能性が高い。
森林保全の資金調達に伴う課題と機会を分析することで、社会に有益な成果全般の実現に民間投資資本を活用するための教訓が得られる。
19世紀に始まった保全運動は、その目的を達成するため、主に公的資金と慈善寄付に頼ってきた。Global Canopyによると、これまでの保全への年間支出総額は500億ドルで、その80%超を政府と慈善団体が拠出している。Ecosystem Marketplaceも同様に、保全に流入する民間投資資金は年間数十億ドル規模と推計している。その大半は生息地の保全ではなく、持続可能な食料・繊維の生産に向けられている。
2021年11月、COP26で、11カ国の支持を得て、2021年から2025年までの森林関連の気候変動対策資金として、総額120億ドルを拠出することが発表された。しかし、こうした支出はいずれも、地球の生物多様性を守るために必要な年間支出を大きく下回っている。その額は、クレディ・スイス、マッキンゼー・アンド・カンパニー、世界自然保護基金の推計で3,000億~4,000億ドルに上る。民間投資資金がなければ、この不足はいつまでも解消されない可能性が高い。
保全目標と民間投資を組み合わせる動きやさまざまな要因を背景に、森林地の所有・管理には新たな手法が生まれている。しかし、魅力的な投資収益と望ましい社会的成果をともに実現するには、大きな障壁が立ちはだかることがある。森林保全の資金調達に伴う課題と機会は、社会に有益な成果の実現に民間投資資本を活用する際に生じる問題の一端を示している。
保全資金の第三の資金源への関心が高まり、投資家がこれを機会と捉える理由もいくつかある。民間セクターで保全資金への関心が高まっている背景には、複数の要因がある。民間資本の投資家は、「実物」資産をますます求めている。実物資産は、投資ポートフォリオの大半を占める企業・政府証券への分散投資となり、長期投資家の投資期間にも合致するためだ。
また、これはインパクト投資への関心の高まりも反映している。インパクト投資とは、過去10年間に二桁成長を遂げた投資手法だ。インパクト投資家は、社会的利益と金銭的利益の両方を生み出す投資機会を探している。非公開資産に重点を置くインパクト投資は、ESG(環境・社会・ガバナンス)重視の投資と関連はあるものの、異なる。ESG重視の投資は通常、公開証券を対象とする。
一方、森林保全の資金調達を広く普及させるには、克服すべき大きな課題もある。まず、投資収益をどのように定義するにせよ、保全目標を守りながら魅力的な収益を実現できることを、説得力をもって示さなければならない。
保全目標と投資収益の最大化の間には、ほぼ必然的に矛盾が生じる。その結果、非営利プロジェクトのスポンサーが目標とする年間収益率は非常に低く(大半が5%未満)、営利プロジェクトのスポンサーもそれをわずかに上回る程度だ(大半が5%から10%)。もう一つの課題は、機関投資家から資金を呼び込めるよう、投資機会を組み立てることだった。
森林保全の資金調達
森林保全の資金調達を拡大し、着実に実施するため、これまでの金融商品に関する分析から、3つの教訓を導き出せる。
1. リスクとリターンに内在するトレードオフについて、慎重に議論し分析する
「善いことをしながら成功する」ことの魅力は疑いようがない。しかし、社会に有益な目的のために投資資本を活用しようと熱心になるあまり、インパクト投資の推進者は、社会的利益の追求が投資収益に悪影響を及ぼす可能性を見過ごすことがある。財務面とインパクト面の特性が一部の投資家にとって魅力的な中間領域のプロジェクトが現れると期待しているが、内在するトレードオフについては、慎重に議論し分析する必要がある。
2. 投資家層を広げるため、十分な規模を確保する
投資の世界を特徴づけるものの一つは、資本の偏在だ。そして、大規模な資金を持つ投資家は、ほぼ必然的に大口の小切手を切る必要がある。さらに、格付け機関や投資銀行などの仲介機関が関与するにも、効率的な運用に必要な最低規模が求められる。これらの事例は、森林保全の資金調達のような新興資産クラスにとって大きな課題を示している。規模の拡大がもたらす恩恵である。
3. 先駆者は、資産クラスの正当性を高める大きな波及効果をもたらし得る
こうした新しい投資分野で成功するには、金融と環境の双方の世界を理解し、投資と同時に啓発にも取り組み、目標を損ないかねない「安易な逃げ道」に頼らない力が必要だ。こうした能力の組み合わせは決して一般的ではないが、この分野の先駆者たちは、前向きな取り組みが持つ力を示している。
本稿が明らかにするように、森林保全の資金調達をインパクト投資モデルに「適合させる」には、間違いなく大きな課題がある。しかし、地球が直面する気候と生物多様性の課題は喫緊のものであり、こうした問題の解決は極めて重要だ。
本稿は、アンドリュー・バクスター、コナー・キャッシュ、ジョシュ・ラーナー、ラトニカ・プラサド(2020年)の研究に基づいている。ラーナーは、民間資本ファンドや民間資本グループの機関投資家、および民間資本に関する政策を策定する政府への助言に対して報酬を受け取っている。誤りや記載漏れがあれば、すべて著者の責任である。
本稿は、投資に関するグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーが執筆したブログシリーズの一編で、2040年の投資ポートフォリオを形作る要因を探る。





