理論上、従業員が能力を発揮できるようにしたい企業にとって、柔軟性は最優先課題となっている。柔軟に調整できる仕事は、人々が燃え尽き症候群を避け、より長く多様なキャリアを歩む助けになる。また、より公正な職場への道でもある。介護など他の責任と両立できる充実したキャリアがあれば、そこから離れざるを得ない人(とりわけ女性)は減るだろう。
しかし実際には、多くの職場でまだ新しい考え方である柔軟性について交渉するのは、気が重いこともある。献身的でないと思われるのを恐れ、勤務時間の短縮や変更を尋ねることさえ、危険すぎてできないと感じる従業員もいる。管理職の対応が鍵となり得るが、彼らもまた、チーム全体の成果で評価されるため、支援する動機を感じにくいことがある。
新たな研究は、インディアナ州にあるパデュー大学のクランナート経営大学院によるもので、打開策を示唆している。研究者らは2年間にわたり、柔軟な勤務形態の従業員、その従業員を管理する管理職、人事担当者、経営幹部に詳しい聞き取り調査を行い、パートタイム勤務への移行はキャリアの行き止まりでも、孤独な過程でもないと結論づけた。従業員、管理職、企業の緊密な協働に基づき、良好な柔軟なキャリアを「築く」ための3段階の青写真を提案している。
労働時間の短縮をうまく進めるには
6月にJournal of Vocational Behaviorに掲載されたこの研究は、柔軟性の一形態である「業務負荷軽減(RL)」型の働き方に焦点を当てた。これは、給与を減らす一方で労働時間と業務量を減らすよう「再設計」されたフルタイムの仕事と定義される。たとえば、週5日勤務から週4日勤務に移行し、給与をフルタイムの80%にする形だ。(企業や個人が試している他の柔軟な働き方、たとえば給与を減らさない週4日勤務、従業員が勤務時間を自分で決める働き方、あるいは1日の勤務時間を延ばして勤務日数を減らす圧縮勤務週を検討する際にも、この研究結果は参考になる。)
研究者らは、北米の20社で働く従業員に対し、計86件の詳細な聞き取り調査を行った。いずれも柔軟な働き方をいち早く導入した企業だった。柔軟な働き方を機能させるために、移行の細部をすべて個人の責任にしてはならないと結論づけた。うまくいく制度には、従業員に期待される業務量も勤務時間に応じて減らすことが必要だ。そうしなければ、パートタイムの給与でフルタイムの時間働く状況に陥りかねない。
企業が柔軟な働き方を支援するには、従業員が多様な生活を送る複雑な人間であることを認める必要があると、この研究の筆頭著者であるエレン・エルンスト・コセック博士は述べる。仕事を強く重視する企業文化では、人々がキャリア以外の多くのものに動機づけられていることが見落とされるという。一方、家族や他の関心事を大切にする人は仕事に熱心でないというのは「誤解」だとも指摘する。そうした人々は「仕事を非常に重視」しながら、「家族生活や副業の立ち上げなど、他のアイデンティティも重視」できる。
労働人口に占める女性がますます増えるにつれ、仕事を人生の中心とする考え方と、実際に私たちが経験する生活との間に、緊張が高まっているとコセックは指摘する。「私が『二つの中心を持つ人』と呼ぶ人はたくさんいます。多くの人が複数の主要なアイデンティティを持てるよう、仕事の仕組みを設計してきませんでした」と彼女は述べる。
雇用主が抱く懸念には、もっともなものもある。研究に参加した管理職は、柔軟な働き方による生産性の低下について最終的に責任を問われることや、あふれた業務が自分や他のフルタイム勤務のチームメンバーに回ってくることを懸念していた。こうした懸念の一部は、創造的で協働的な思考によって解消する必要があるとコセックは述べる。
研究では、従業員の満足度や構成の多様性が高まる可能性に加えて、企業にとっての利点も明らかになった。企業が人員削減を必要とする際、RL型勤務の従業員がいれば、人員を削減する必要性が弱まる。すでにフルタイム勤務者より人件費が低い従業員がいるためだ。聞き取り対象者は、女性や定年年齢を過ぎた人など、そうでなければ労働市場から退出せざるを得なかった可能性のある有能な人材を引き留められることも挙げた。
3つの段階
管理職、その部下、そして企業は、より柔軟な勤務スケジュールの導入をどのように考えるべきだろうか。研究者らは、聞き取りを行った企業で最も成果につながった3つの段階を示している。
第1段階:検討
柔軟な勤務スケジュールを成功させるには、仕事の範囲を適切に「見極める」ことが欠かせないとコセックは述べる。この段階を怠ることが、柔軟な働き方の試みが失敗する原因となる場合が多い。
研究によると、すべての関係者が率直に対話し、対象となる仕事を柔軟性を取り入れる形に「再設計」できると合意する必要がある。この点について研究者らは、すべての仕事が労働時間の短縮に同じように適しているわけではないと指摘した。たとえば、成果が予測可能で定量化できる仕事は、厳格な外部締め切りや毎日の対面時間が多く求められる仕事より、調整しやすい。しかし多くの場合、再設計は不可能ではない。たとえば、フルタイムの職務1人分を、2人のパートタイム従業員で分担するなど、別の仕組みを検討することもできる。
研究者らはまた、柔軟な働き方を導入するための「方策」を、全員で協力して見極めることを勧めている。たとえば、他のチームメンバーに不公平な負担をかけずに済むよう、管理職は従業員の責任範囲を工夫して調整したり、業務を他の人に振り分けたりする必要があるかもしれない。この段階では、締め切り、成果の評価基準、計画どおりに進まない場合の対策についても話し合える。研究によると、予算配分においては管理職にも柔軟性が必要だ。チームにパートタイム勤務者がいる場合、総人員数ではなく「フルタイム換算」の勤務時間で業務量を表せると、最もうまく機能した。
第2段階:実施
研究者らはこの段階で、従業員と雇用主が分担できる3つの主な責任を特定した。
第一に、両者が過重労働の防止に努める必要がある。たとえば、問題が起こりそうな箇所を予測し、繁忙期に備えて事前に計画する。第二に、勤務時間を短縮した従業員は境界線を管理し、管理職はその境界線を尊重する必要がある。第三に、「業務再設計の方策を機能させる」には、良好なコミュニケーションが欠かせないと研究者らは記している。
常に容易とは限らない。「柔軟な働き方について耳にしても、企業はときに、試行錯誤を重ね、うまく導入する方法を見つける時間を取らないと思います」とコセックは述べる。「最初の壁にぶつかると、すぐに手を引いてしまうのです」。問題の兆候が見えた途端に後退する傾向の一因は、柔軟な働き方をする人についての誤解だと彼女は指摘する。企業は、従業員の勤務時間を減らすと「割に合わない」と考えるが、実際には彼女の研究によると、「パートタイム勤務者はより集中的に働く」。
第3段階:定着
研究者らは性別を問わず業務負荷軽減型の働き方を調査したが、見つけて聞き取りを行った従業員の95%は女性だった。パートタイムのキャリアにおける大きな問題の一つは、収入を見ると明らかになる。キャリア初期には男女の給与推移は似ているが、女性は子どもを持つと賃金が下がる傾向にある。その主な理由の一つは、女性の労働時間が短くなりがちなことだ。
研究者らによると、柔軟な働き方の管理方法や受け止め方を少し工夫すれば、こうしたキャリア上の不利益を軽減できる。第一に、関係者全員が問題の発生時に解決に取り組み、従業員の勤務スケジュールを理由に困難を責めないことが必要だ。第二に、雇用主は、偏見を避け、真の支援を示すため、母親だけでなく父親にも適用するなど、より広く柔軟な働き方を推進すべきだ。
最後に、企業は給与以外の業績関連指標もすべて検討する必要がある。たとえば、報奨やインセンティブ制度、評価、目標設定などを見直し、勤務時間を短縮した人が不利な扱いを受けないようにする。研究者らによると、理想的には企業が率先してデータを記録し、その分析結果を共有して、今後の柔軟な働き方の設計に役立てる。
柔軟な働き方が可能かまだ確信が持てない人や、チームへの影響を心配する人に向けて、この研究はいくつかの心強い事例を紹介している。ある企業では、半日勤務ではなく週の半分の時間働く高業績の女性税務部長が、会社に数百万ドルの節約をもたらす専門的で珍しい税法を見つけた功績により、「年間最優秀従業員」賞を受賞した。さらにその賞として、初めての子どもを養子に迎える旅を兼ねた世界一周旅行も贈られた。研究者らはこれを、「高い能力を持ち勤勉な従業員に柔軟な働き方を認め、創造性を発揮して集中できる業務量を与えることが、雇用主と従業員の双方に利益をもたらした」事例だと記している。



