COVID-19:在宅勤務の影響とは、著名な経済学者が語る

A woman sitting on a sofa at home, working on her laptop.
Employees are likely to see higher job satisfaction levels in the long term if they work from home two days a week.Image: Unsplash/Ave Calvar
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  • ハイブリッド勤務が長期的にもたらす可能性のある影響について、経済学の専門家パネルに意見を求めた。

  • 米国と欧州の経済学者は、生産性、仕事への満足度、ジェンダーに関連するキャリア形成の3つの領域に焦点を当てた。

  • 大多数は、週2日在宅勤務をする従業員は、長期的には仕事への満足度が高まると答える可能性が高いと考えた。

パンデミックにより、業務の全部または一部を遠隔で行える職種に就く人々の間で、在宅勤務への大きな移行が起きた。こうした働き方(または、自宅で働く時間と事業所で働く時間を組み合わせたハイブリッド型)が長期的にどの程度続くのかについて、多くの議論が交わされている。主な論点には、従業員の生産性や仕事への満足度に及ぼす可能性のある影響、そして在宅勤務の大幅な増加によって女性と男性のキャリア形成が異なる影響を受けるかどうかが含まれる(Eberly et al. 2022、Taneja et al. 2021、2022)。

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのIGMフォーラムは、米国と欧州の世界有数の経済学専門家を対象に、公共政策の時事問題についての見解をほぼ10年にわたって定期的に調査してきた。今回、米国と欧州のパネルにこれらの問題について意見を求めた。

標準的なIGMの調査形式に従い、専門家には以下の各声明に賛成か反対か、また賛成または反対の場合はその程度と確信度を尋ねた。

a)週に2日在宅勤務をする従業員は、平均すると、長期的に生産性が高まる可能性が高い。

b)週に2日在宅勤務をする従業員は、平均すると、長期的に仕事への満足度が高まると答える可能性が高い。

週に2~3日在宅勤務をする機会があることは、平均すると、男性の同僚と比べて女性のキャリア形成により有益となる可能性が高い。

米国の43人の専門家のうち41人がこの調査に参加した。欧州の48人の専門家のうち41人が参加し、専門家からの回答は合計82件となった。

在宅勤務が生産性に及ぼす影響

週に2日在宅勤務をする従業員は、平均すると長期的に生産性が高まる可能性が高いかという最初の声明について、パネリストの過半数は判断できないと答えた。各専門家の回答に対する確信度で加重すると、パネルの5%が強く賛成、27%が賛成、56%が判断できない、12%が反対、0%が強く反対だった。

専門家は回答に短いコメントを添えることができる。生産性への好影響に強く賛成した2人のうちの1人は、スタンフォード大学のニコラス・ブルーム氏だ。この分野で多くの研究を行い、その研究は複数のパネリストから引用されている(Barrero et al. 2021)。同氏は次のように述べる。「増え続ける研究、自然実験、RCT(ランダム化比較試験)は、適度な水準のWFH(在宅勤務)が従業員の生産性を高めることを示している。」

賛成する他の専門家の中で、ロンドン・インペリアル・カレッジのフランクリン・アレン氏は次のように述べる。「その人の能力次第だが、それが十分に高ければ、通勤にかかる時間と労力の削減はおそらく利点になる。」フランクフルト・ゲーテ大学のヤン・ピーター・クラーネン氏は、「長期的には、イノベーション効果が薄れるため、生産性はほぼ変わらないと思う」と述べる。また、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のリカルド・レイス氏は、イタリアで「スマートワーキング」の導入が生産性、ウェルビーイング、ワークライフバランスに好影響をもたらし得ることを示す証拠を紹介する(Angelici and Profeta 2020)。

判断できないと答えたパネリストの過半数の中には、イェール大学のジュディス・シュヴァリエ氏の見解に同調する人が複数いた。「確かな意見を持つには証拠が不十分だということは、かなり確かだと思う。」平均的な効果を把握する難しさを指摘する人もいる。カリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン氏は次のように述べる。「分かっているのは、在宅勤務がよい従業員もいれば、そうでない従業員(対人接触が重要な人)もいるということだけだ。平均的な効果はまだ分からない。」また、マサチューセッツ工科大学(MIT)のリチャード・シュマレンジー氏は、「仕事の性質や企業の経営スタイルによるに決まっている。全体の平均に関する証拠は見たことがない」と答える。

他の複数の専門家は、仕事の性質や個人の具体的な職務の重要性を指摘する。LSEのクリストファー・ピサリデス氏は次のように述べる。「仕事の性質や、家で過ごす時間にほかの用途が数多くあるなかで、従業員が仕事に集中できるかどうかによる。」シカゴ大学のロバート・シャイマー氏は、「具体的な職務に大きく左右される。知識労働者には、この主張が当てはまりやすい」と付け加える。LSEのジョン・ヴァン・リーネン氏は、「どのような仕事をしているかによる。創造的な職種では社会的交流が重要なので、在宅勤務が40%を占める方がよいかどうかは明らかでない」と指摘する。

組織内の交流に及ぼす影響に言及する人もいる。MITのダロン・アセモグル氏は、「信頼、協働、組織内の調整に長期的にどのような影響が及ぶかは、まだ分からない」と述べる。シカゴ大学のアニル・カシャップ氏は、「相反する力が働いている。組織の資本はある程度の対面接触に依存する。出社が週3日で十分かどうかは分からない」と指摘する。同僚のクリスチャン・ロイツ氏は、「短期的にはおそらくプラスだが、長期的には不明だ。イノベーションや情報共有への影響はどうか。職務にも左右される可能性が高く、ばらつきも大きい」と付け加える。

在宅勤務が生産性に好影響をもたらすことに反対するパネリストの中で、イェール大学のジョセフ・アルトンジ氏は、「平均すると生産性は下がるかもしれないが、本当に仕事次第だ」と述べる。スタンフォード大学のケネス・ジャッド氏は、「ほとんどの仕事には協働が必要だ。電子メールやZoomといった公式なコミュニケーション手段には、偶発的な会議の価値がない」と付け加える。LSEのダニエル・シュトゥルム氏も、「職場で生じる生産性のプラスの波及効果は、Zoomなどの手段ではおそらく完全には代替できない」と同意する。

在宅勤務が仕事への満足度に及ぼす影響

週に2日在宅勤務をする従業員は、平均すると長期的に仕事への満足度が高まると答える可能性が高いかという2つ目の声明について、パネリストの過半数は賛成と答えた。各専門家の回答に対する確信度で加重すると、パネルの9%が強く賛成、60%が賛成、31%が判断できない、反対または強く反対は0%だった。

賛成または強く賛成する人の中には、証拠を挙げる人が複数いる。MITのデビッド・オーター氏は、「人々がこの働き方を好むことを示す証拠は豊富にある。定常状態では、満足度が高まると思う」と述べる。ニコラス・ブルーム氏は、「RCTでは、WFHの仕事の離職率は対面勤務の仕事の約半分であり、調査データ1も週2日のWFHが好まれることを示している」と付け加える。また、クリスチャン・ロイツ氏は、「本人が選べることを前提とすれば、自己選択から結果が示唆される。ロックダウン中のWFHの評価はまちまちだった。しかし、選択肢があれば、人々は柔軟性を重視するだろう」と指摘し、中国での実験結果に言及する(Bloom et al. 2014)。

選択と自己選択への留保に加え、在宅勤務を好む人が長期的に後悔する可能性を指摘する人もいる。ダロン・アセモグル氏は、「強制ではなく、本人が選択できることが条件だ」と述べる。バリー・アイケングリーン氏は、「賛成だが、単に柔軟性や自分で決められる余地が大きい職種に就く人なのかもしれない(この傾向は自己選択による)」と付け加える。アニル・カシャップ氏は、「組織への投資不足によって、いずれ昇進が遅れれば、後悔するかもしれない」と述べる。クリストファー・ピサリデス氏は、「短期的には、移動が減り、自分の時間が増えるのでよい。長期的には、昇進や昇給が遅れるなら、そうとは限らない」と指摘する。

在宅勤務の増加によって仕事への満足度が高まる可能性がある理由について、複数のパネリストがコメントしている。スタンフォード大学のダレル・ダフィー氏は、「自宅の労働環境次第だが、環境がよければ、従業員にとってプラスになるはずだ」と述べる。リチャード・シュマレンジー氏も賛成し、「多くの人が望んでいるようで、満足度も高まるだろう」と述べる。また、ジョン・ヴァン・リーネン氏は、「通勤が減る。通勤は多くの人にとって一日の中で最もストレスの大きい時間だ」と指摘する。

判断できないと答えたパネリストの中で、シカゴ大学のオースタン・グールズビー氏は、「雇用主は、従業員が常に連絡に応じられることを期待するのだろうか」と尋ねる。同僚のルボス・パストール氏は、「勤続年数によって異なる可能性が高い」と付け加える。また、同じくシカゴ大学のリチャード・セイラー氏は、「やはり、一般化する方法はない。シカゴ大学ブースには出社を強く重視する文化があった。それは簡単に崩れかねず、そうなれば望ましくない」と指摘する。

ケネス・ジャッド氏も、「通勤の減少という利点が、社会的交流の減少を補うかもしれない」と同意する。ロバート・シャイマー氏は、「やはり、ばらつきが大きい。顕示選好からは、多くの労働者が在宅勤務を望んでいることがうかがえるが、仕事への愛着は低下するだろう」と結論づける。

在宅勤務が女性のキャリア形成に及ぼす影響

週に2~3日在宅勤務をする機会があることは、平均すると、男性の同僚と比べて女性のキャリア形成により有益となる可能性が高いかという3つ目の声明について、各専門家の回答に対する確信度で加重すると、パネルの1%が強く賛成、25%が賛成、55%が判断できない、17%が反対、2%が強く反対だった。

好影響に賛成する人の中には、仕事の柔軟性が女性のキャリアにもたらす価値についてコメントする人が複数いる。イェール大学のピネロピ・ゴールドバーグ氏は、「柔軟性が高まることは女性のキャリアによい。特に幼い子どもがいる場合はそうだ」と述べる。デビッド・オーター氏は、「クラウディア・ゴールディンは、仕事の柔軟性のなさによる経済的なコストが、現在、最も重く女性にのしかかっていることを記録している」と指摘する。

賛成する人の中には、家庭における女性の役割への社会的期待に言及する人もいる。バリー・アイケングリーン氏は、「伝統やジェンダー役割を理由に、女性が今も家事や育児のより多くを担っている限り、この見方は当てはまる可能性が高い」と述べる。ダレル・ダフィー氏は、「少なくとも歴史的には、多くの女性が子育てにより大きな責任を負ってきた。これにより、柔軟性が高まる可能性がある」と指摘する。

ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのカール・ウィーラン氏は、「これが事実でなければよいと思う。理想的には育児の責任を平等に分担すべきだが、実際にはおそらくそうなっている」と述べる。ダロン・アセモグル氏は、「女性が家庭より仕事を優先する姿勢を示すために、さらに懸命に働くことを期待されるような逆効果の誘因がないことが条件だ」と留保を付け加える。

判断できないと答えた人の中で、ニコラス・ブルーム氏は、「正しいかもしれないが、これを裏付ける確かな証拠を私は知らない。実際、この点についてさらなる研究が行われれば非常に有益だ」と述べる。イェール大学のラリー・サミュエルソン氏は、「こうした重要な問題は、今後の労働条件を形作るうえで役割を果たすため、慎重な研究が必要だ」と指摘する。

結果がどちらにも転ぶ可能性を説明する人もいる。フランクフルト・ゲーテ大学のニコラ・フックス=シュンデルン氏は、「プラス面では、女性の労働時間が増えるかもしれない。マイナス面では、職場の人間関係のネットワークへの関与が薄れるだろう」と述べる。クリストファー・ピサリデス氏は、「利点:職場での仕事と家事を両立しやすい。難点:職場よりも家庭の仕事から離れにくい」と答える。

同じく判断できないとするダニエル・シュトゥルム氏は、「リモートワークは女性と男性双方のキャリアを同程度に妨げる可能性がある一方で、女性の方がこの選択肢をより多く利用するだろう」と指摘する。在宅勤務が女性にとって有益になることに反対するジョン・ヴァン・リーネン氏は、それが問題になり得る理由を次のように説明する。「労働参加にはよいが、女性は職場で目立ちにくくなる可能性がある。」2 ロバート・シャイマー氏は、「多くの人、特に女性にとって、在宅勤務は仕事中の育児を意味する可能性が高い」と付け加える。

反対する他の人々は、証拠に言及する。クリスチャン・ロイツ氏は、「育児における従来のジェンダー役割が続いていることを示す証拠(例:COVID)が豊富にある。それによってWFHにジェンダー差が生じ、[女性の]キャリア形成を損なう可能性がある」と述べる(Barber et al. 2021)。最後に、リカルド・レイス氏は、米国における多様な働き方に関する証拠を挙げている(Mas and Pallais 2020)。

参考文献

Angelici, M and P Profeta(2020)、「スマートワーキング:制約のない柔軟な働き方」、VoxEU.org、3月28日。

Barber, B M, W Jiang, A Morse, M Puri, H Tookes and I M Werner(2021)、「パンデミック中の金融研究の生産性の差は何によって説明されるのか?」、Journal of Finance 76(4):1655-97。

Barrero, J M, N Bloom and S J Davis(2021)、「在宅勤務が定着する理由」、NBERワーキングペーパー28731。

Bloom, N, J Liang, J Roberts and Z J Ying(2015)、「在宅勤務は機能するのか?中国での実験による証拠」、Quarterly Journal of Economics 130:165-218。

Eberly, J C, J Haskel and P Mizen(2021)、「『潜在的資本』、在宅勤務、経済のレジリエンス」、NBERワーキングペーパー29431。

Mas, A and A Pallais(2020)、「多様な働き方」、Annual Review of Economics 12(1):631-58。

Taneja, S, P D Mizen and N Bloom(2021)、「在宅勤務が英国の労働市場に革命を起こしている」、VoxEU.org、4月15日。

Taneja, S, P D Mizen and N Bloom(2022)、「オンライン会議と対面会議の比較」、VoxEU.org、4月15日。

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