在宅勤務への移行は見かけほど単純ではないと管理職は理解する必要がある、と認知科学者のシアン・ベイロック氏は述べる。
この時期に雇用主が従業員にプレッシャーをかけず、適切な支援を提供しているかを確かめることが不可欠だ。
適切な期待値の設定から成果を称えることまで、管理職が負担を軽減する方法を紹介する。
多くの管理職は、今年のパンデミックによる在宅勤務への移行を、通常のテレワークと同じように扱っている。しかし、実際はそうではなく、そうだと思い込んで対応すれば、最終的に従業員の士気を損ないかねない。パンデミック下では、オフィス勤務者は一般にエッセンシャルワーカーよりも良好な状況にあるものの、突然のリモートワークへの移行は衝撃的で、その影響を見過ごすべきではない。
リーダーシップの専門家や認知科学者によれば、変化への抵抗は変化そのものよりも、むしろ自分でコントロールできなくなることや、不確実さへの恐れに起因する。人間はもちろん、ほかの動物も、自分の人生に関する決定権を奪われると防衛的に反応する。また、最近の研究では、新型コロナウイルス感染症とメンタルヘルスについて調査した研究者らが、米国と欧州5カ国で調査に参加した成人のうち、自分に起きることは主に他人や偶然によって決まると考える人は、うつ症状もより多く報告していることを明らかにした。
自ら選んでテレワークをすることと、突然在宅勤務を強いられることには大きな違いがある。一方で、毎日の通勤がなくなったことは喜ばしいが、平均的なオフィスワーカーは、これまで外部に委託していた教育、育児、介護の役割も担いながら、自宅を即席のWeWork拠点に変える心の準備も経済的な準備もできていなかった。テレワークに容易に対応できる住環境ではない家庭も多く、従業員によっては家庭内の事情が仕事の成果につながりにくい場合もある。
管理職は、従業員のこうした負担を軽減するために、いくつかの対策を講じることができる。
適切な期待値を設定する:多くの従業員が新たな負担を抱え、複数の方面からプレッシャーを受けている。管理職は、不要な報告書や重複した手続きをなくし、期限についてできる限り透明性を保つことで、従業員に過度な負担をかけずに済む。たとえば、重要な顧客との会議が延期された場合、資料を準備している全員にすぐ知らせれば、その日の業務の優先順位を見直せる。同様に、メールへの即時返信を期待すべきではない。常に急かされている感覚は、従業員の燃え尽きにつながる。勤務時間外(特に深夜や週末)のメール送信は避けるべきであり、勤務時間外に届いたメッセージへの即時返信を従業員に期待すべきではない。ましてや義務づけるべきではない。
従業員に常に「対応可能」な状態を求めない:Zoom疲れは深刻で、家庭内の全員がそれぞれの業務上の通話やビデオ会議に参加できるよう、従業員は静かな場所を確保しなければならないこともある。たいてい女性が不利な立場に置かれ、ある著者は「場所をめぐる争い」のなかで女性を「気乗りしない遊牧民」と表現している。たとえば、パートナーや子どもがリビング、寝室、キッチンで仕事や学校の課題に取り組めるよう、従業員の女性が浴槽の縁に腰掛け、膝の上でパソコンを危なっかしく支えていることもある。また女性は、Zoomでの見た目について不当な批判やプレッシャーを受けやすい。管理職は、会議をなくしたり、短縮したり、ビデオなしで実施したりできないか検討すべきだ。
成果を称える機会を増やす:批判と称賛のバランスを取ることは常に重要だが、従業員はいま、パンデミックに関する悪いニュースが絶え間なく押し寄せるなか、成功体験に飢えている可能性が高い。管理職は士気を高めるため、公に認められる小さな成功を探し、良い仕事を見たら従業員の努力に感謝を伝えるべきだ。感謝を示すのに費用はかからない。ちょっとした前向きなフィードバックが、とりわけつらい日に、誰かがまさに聞きたかった言葉になるかもしれない。
利用できるリソースを活用する:管理職は、すでにある資産を活用しながら、双方にメリットのある状況を生み出す方法を探すべきだ。たとえばバーナード・カレッジでは、教職員の子どもに勉強を教える学生に報酬を支払っている。インターンシップや初級職が少ない時期に、学部生はアルバイトを得られ、常勤職員は多くの業務のうち一つを外部に委託できる。また、既存の外部事業者との契約を通じて、育児・介護給付を拡充している。従業員がどのような支援を必要としているか分からない管理職は、匿名アンケートで直面している最大の課題を尋ね、それに応じてリソースを配分できる。
急な変化への適応には、全員の努力が必要だ。管理職には、在宅勤務をぜいたくなものとして扱うのをやめ、従業員に向き合う責任がある。オフィスは招かれて家に来たのではない。予期せぬ訪問者のように現れ、すぐに去る気配はほとんどない。

