イタリアの取締役会改革がジェンダー格差について示すこと

General Motors production worker Dina Mays works on the 10-speed transmission assembly at the General Motors (GM) Powertrain Transmission plant in Toledo, Ohio, U.S. March 6, 2019. Picture taken March 6, 2019. REUTERS/Rebecca Cook - RC12110DE000
Closing the gap.Image: REUTERS/Rebecca Cook
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イタリアでは、義務的なジェンダー・クオータ制により取締役会の女性数が増加しました。しかし、関連法は時限措置で、対象企業も少数に限られます。本稿は雇用と所得のデータを用いて、経営幹部層や高所得者層における女性比率は上昇していないことを示します。これは、規範や認識の変化に時間がかかるため、あるいは上級職に新たに任命された女性の権限が限られているためかもしれません。

女性は労働力人口のほぼ半数を占めますが、所得分布の上位に行くほど女性は少なくなります。また、指導的地位に就く女性も著しく少数です。このガラスの天井を打ち破るため、義務的なジェンダー・クオータ制を提案する声があります。2003年、ノルウェーは公開有限責任会社の取締役会に各性別を少なくとも40%含めることを義務付ける法律を、世界で初めて制定しました。その後、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、アイルランド、アイスランド、イタリア、ドイツ、オランダ、スペインが同様の規制を導入しました。

ジェンダー・クオータ法は一般に、企業の取締役会に占める女性の数を増やす効果があります。EUの大手上場企業では、女性取締役の比率が2010年の12%から2016年には23%に上昇しました。一方、クオータ法が取締役会に属さない女性にも影響を及ぼすかどうかは、まだ明らかではありません。

Matsa and Miller(2011)は、女性取締役の比率が高い米国企業ほど、女性を経営トップに採用する可能性が高いことを示しています。しかし、これが因果関係なのか、あるいは観察されていない要因が両方の結果を生んでいるのかは、完全には明らかではありません。Bertrand et al.(2019)は、ノルウェー法による準実験的な変動を利用し、クオータ規制の対象企業で働く他の女性に同規制が恩恵をもたらしたという証拠は見つからなかったと報告しています。高度な資格を持つ女性への影響も確認されませんでした。

イタリアの取締役会構成を調べる

最近の研究(Maida and Weber 2019)では、2011年のイタリア法を評価しています。この法律は、上場有限責任会社の取締役会改選3回にわたって有効となるよう、取締役会のジェンダー・クオータを段階的に引き上げました。本研究では、企業単位の取締役会構成や取締役選挙日と、個人単位の雇用・所得記録を結び付けた詳細なデータを用いています。このデータは最近、イタリア社会保障機関(INPS)が提供するVisitINPS奨学プログラムを通じて利用可能になりました。

ジェンダー・クオータ規制が段階的に導入されたことと、企業ごとに取締役会改選の時期が異なることを利用し、取締役会のジェンダー構成が上級職におけるジェンダー多様性の指標に及ぼす4年間の影響を評価します。

他国と同様、イタリアの上場企業は法律の施行後、速やかにジェンダー・クオータに対応しました。女性が占める取締役席数は2011年から2017年の間に4倍になりました(図1)。また、企業がクオータ規制の段階的導入を活用したことを示す証拠も見つかりました。一部の企業は法律の施行を見越して対応し、法律が拘束力を持つ前の2012年に予定されていた取締役選挙で、ジェンダー・クオータを引き上げ始めました。

図1イタリアの上場有限責任会社における女性取締役の比率、2008~2017年

Image: INPS。

取締役会における女性比率の波及効果

取締役会の女性比率の急上昇が、労働力における複数のジェンダー格差指標に及ぼす影響を調べたところ、義務的な女性取締役クオータが経営幹部層や高所得者層における女性比率の上昇につながったという証拠は見つかりませんでした。少なくとも短期的には、そのような効果はありません。

図2~4では、法律の対象となった上場有限責任会社における女性の状況を、法律の影響を受けない非上場有限責任会社から選んだ比較対象グループと比べています。

図2イタリアの有限責任会社で働く従業員のうち女性管理職が占める割合、2008~2016年

Image: INPS。

全従業員に占める女性管理職の割合は、いずれの企業グループでも2%未満で、時間の経過とともにわずかに上昇しています。しかし、改革の効果を示すような、2012年以降の上場企業における目立った変化はありません。図3は、改革後、上場企業が女性管理職の一人をCEOに昇進させる可能性が高まったことを示唆しています。

図3女性CEOがいるイタリアの有限責任会社の割合、2008~2016年

Image: INPS。

しかし、図4に示すように、こうした昇進は社内の高所得者層における女性比率の上昇にはつながりませんでした。

図4イタリアの有限責任会社で働く従業員のうち、賃金上位10%に入る女性の割合、2008~2016年

Image: INPS。

改革前の女性取締役比率を用いて、追加の異質性分析を行いました。女性CEOの新規任命は、2012年の時点ですでに女性クオータを満たしていた企業でのみ行われました。この結果も、改革の広範な波及効果がなかったことを裏付けています。女性に関するより幅広い成果指標を調べても、改革による労働力全体のジェンダー構成の変化を示す証拠は見つかりませんでした。

本研究の結果は、Bertrand et al.(2019)が示したノルウェーの証拠と一致しています。イタリアはノルウェーより女性の労働参加率が低く、男女間賃金格差が大きく、所得分布の上位に占める女性の割合も低いものの、ジェンダー比率を厳格に適用しても、女性を取り巻く労働市場全体の状況に変化は生じません。

波及効果が見られない理由

考えられる理由はいくつかあります。

  • 改革によって新たに生まれた注目度の高いポストは少数です。法律がほぼ全面的に施行された2017年、イタリアでは758人の取締役ポストが女性によって占められていました。国内の高度な資格を持つ女性全体の数と比べると、これは象徴的な規模にすぎません。このことから、法律の対象をはるかに幅広い企業に広げるべきだと考えられます。

  • より広範な効果が認識や社会規範の変化を通じて現れるのであれば、短期的な効果を分析した本研究では、法律の影響全体を捉えきれていない可能性があります。しかし、規範の変化に時間がかかるのであれば、時限法の有効性を問う必要があります(イタリア法は取締役選挙の3回目の後に失効する予定です)。

  • 新たに任命された女性取締役は、企業レベルの変化に影響を与えられるほど強い権限を持つ地位にいない可能性があります。Rebérioux and Roudaut(2016)は、フランス企業の取締役会に新たに任命された女性は、男性の同僚より要職に就く可能性が低いことを示しています。そのため、ジェンダー・クオータ制がもたらし得るプラスの効果は弱まります。

企業の取締役会で女性の比率がより平等になることは望ましいものの、本研究の結果は、ジェンダー・クオータだけでは企業内のジェンダー格差を縮小する有効な手段にならないことを示唆しています。伝統的なジェンダー観が根強いイタリアでは、特にそう言えます。取締役会のジェンダー・クオータ制の長所と短所を幅広く論じたSmith(2016)の見解に同意します。同氏は、「政策立案者は、組織の上層部にクオータを義務付けることから、家庭内でのキャリア選択におけるジェンダーのより公平な分担を実現するという、はるかに広範な課題へと焦点を移す必要があるかもしれない」と結論付けています。

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