抗生物質への耐性は、現在、公衆衛生に関する世界で最も差し迫った課題の一つです。ここ数年で、一般的で致命的になりうる細菌のほぼすべての系統が強固になり、抗生物質による治療に反応しにくくなっています。インドでは、コリスチンのような最後の手段となる抗生物質にさえ耐性を示す感染症の事例が報告されています。そうした事例の数は現在きわめて少ないか、まれではあるものの、その傾向は懸念すべきものになりつつあります。
コリスチンでさえ治療できない感染症の事例を分析した2014年の研究では、インドの首都デリーで記録された細菌感染症の4〜5%が、またインドのプネ市で検査された薬剤耐性細菌感染症799件のうち36件が、コリスチン耐性であることが判明しました。さらに、インド国内の他の都市でも、コリスチン耐性の細菌感染症の事例が報告されています。
コリスチン耐性は、世界のその他の地域ではまだ懸念すべき問題ではありません。その他の地域では、現在市場で入手可能な最も強力な抗生物質の系統であるカルバペネムに対する耐性の問題が、絶えず増加しています。コリスチンは、カルバペネムを用いても感染症が治療できない場合に処方されます。
抗菌薬耐性の世界的な大流行と、インドへの影響
Center for Disease Dynamics, Economics & Policy(CDDEP)が発表した最近の研究結果は、39か国における薬剤耐性の世界的動向と、69か国における抗生物質の使用を分析したもので、インドにおける薬剤耐性感染症と抗生物質使用の憂慮すべき増加を示しています。
2014年の報告によると、スーパーバグであるクレブシエラ肺炎菌による感染症の事例のほぼ57%が、カルバペネム系抗生物質に耐性を示すことが判明しました。これは、2008年に耐性が見られた29%の事例からの大幅な増加です。これをアメリカやヨーロッパにおけるクレブシエラ感染症と比較すると、この問題の深刻さが理解できます。ヨーロッパの大部分ではクレブシエラ感染症の95%、アメリカでは90%の事例でカルバペネムが有効であることが判明しました。セファロスポリン、アミノグリコシド、フルオロキノロンなど、その他いくつかの薬剤系統については、インドではクレブシエラが60%を超える事例で耐性を示すことが判明しました。
何が問題の原因と考えられるか?
抗生物質の不適切な使用が、抗生物質耐性を招く主な要因です。人が抗生物質を服用するたびに、体内の感受性のある細菌の一部は死滅しますが、耐性株の細菌が体内に残り、そこで増殖することがあります。抗生物質耐性を招くもう一つの要因は、医師が処方した服用時間や用量どおりに抗生物質を服用しないことです。
インドでは、多くの抗生物質が市販薬(OTC医薬品)として容易に入手できること、過剰な処方、そして抗生物質の適切な(というより、不適切な)使用とその健康への悪影響に関する認識の欠如が、高水準の抗生物質耐性を招く主な理由です。
既存の抗生物質が驚くべき速さで効力を失い続ける一方で、過去数年間、新たな抗生物質の系統はほとんど開発されていません。スーパーバグとの闘いにおいて新たな進展が見られなければ、抗菌薬耐性は近い将来、健康上の大惨事になると思われます。
なぜこの問題への対応がこれほど不十分なのか?
世界各地から、抗生物質耐性の深刻な影響について警鐘を鳴らす報告が絶え間なく出ています。しかし、この問題の負担と規模、あるいは社会、医療制度、個人に対する直接的な影響に関するデータは、依然として十分ではありません。このことが、政府、消費者、政治家、医療制度改革者から、この深刻な脅威にほとんど対応が示されていない主な理由の一つである可能性があります。科学的な課題が大きく、抗生物質の開発に与えられるインセンティブがごくわずかであることも、1970年代以降、現在に至るまで市場に登場した抗生物質の系統がわずか2つにとどまっている主な理由です。
バクテリオファージは有望ではないのか?
細菌に感染する自然発生的なウイルスであるバクテリオファージ(ファージまたは細菌ウイルスとも呼ばれます)の有効性に関する報告も、近年相次いで出ています。バクテリオファージは、今後のスーパーバグとの闘いにおける有力な手段と呼ばれることもあります。20世紀初頭に発見されたものの、これらの微生物の臨床応用はほとんど見られません。これは、バクテリオファージが大型の生物学的製剤であるため、他の低分子抗生物質の投与ほど簡単ではないことも一因です。また、バクテリオファージと細菌が変異し、後者に対して効果がなくなる可能性もあります。バクテリオファージによる細菌の殺滅方法も問題をはらんでいます。細胞を溶解させる、すなわち破裂させるため、細胞から有害な毒素が放出される恐れがあり、望ましくない副作用が生じる可能性が高まります。
本記事は Healthworksとの協力により掲載されたものです。掲載は、世界経済フォーラムによる見解の承認を意味するものではありません。
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著者:Varsha Jainは、Healthworksに寄稿しています。
画像:Christian LaVallee が、ロンドン北部の Health Protection Agency において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査用の溶液を準備している様子。REUTERS/Suzanne Plunkett
