「仕事の始まりこそ、最も重要な部分である。」—プラトン
話をするとき、聴衆の注意を引きつけ、信頼性を確立し、テーマを理解してもらい、話を聞く意欲を高めるために使える時間は約60秒です、とWell Said, Inc.の社長であり、『Well Said! Presentations and Conversations That Get Results』の著者でもあるダーリーン・プライスは語る。
貴重な冒頭の数秒を、ジョーク、議題の説明、謝罪、事務連絡、感謝の言葉の羅列、あるいは「えー」や「あのー」が散りばめられた、とりとめのない無意味な段落に費やせば、聴衆の意識はそれてしまい、戻ってこないかもしれません。「仕事の最も重要な部分である始まりに、芸術性を持たせる必要があります」とプライスは言う。
これはどんな話し手にとっても高いハードルであり、練り上げられた、注意を引く導入を考案し、リハーサルする必要がある。
プライスは7つの方法を提案する。
1. 心をつかむ物語を語る。
「手持ちの導入手段のなかでも、物語を語ることは、とりわけ強力で、安定して効果を発揮します」とプライスは言う。「人間は物語を楽しみ、そこから学ぶようにできています。寝る前の読み聞かせやキャンプファイヤーから、ブロードウェイの劇場や会議室に至るまで、英雄、悪役、葛藤、筋書き、対話、そして学びは、私たちを引き込み、自分自身の人生を思い起こさせ、注意を引きつけます。」
物語は、自分自身についてのものでもよい。それなら、なぜそのテーマに関心を持ち、情熱を注いでいるのかを、聴衆に自分の経験から伝えられる。あるいは、聴衆が学びを得られる別の人について語ることもできる。「もう一つの方法は、寓話、教訓譚、歴史上の出来事、または逸話を語ることです」とプライスは言う。「要点は、スピーチの幕開けとなり、聴き手を引きつける60~90秒の短い物語から始め、その物語にメッセージの核心を凝縮することです。」
「むかしむかし」を自分なりに組み立てる際、次の問いを考えるよう彼女は勧める。テーマに関連して、あなた(または別の人)はどんな困難に直面したか。あなた(またはその人)はどう乗り越えたか。誰が、あるいは何が助け、または害を与えたか。どんな教訓を得たか。この物語を通じて、聴衆に何を得て、何を感じ、どう行動してほしいか。
2. 修辞的で、考えさせる質問を投げかける。
「シェイクスピアは『ヴェニスの商人』にこう書いています。『われわれを刺せば血が出ないか。くすぐれば笑わないか。毒を飲ませれば死なないか。そして不当な仕打ちを受ければ、仕返しをしないだろうか』」とプライスは言う。「話し手は説得効果を狙って修辞疑問を投げかけます。聴衆に声に出して答えてもらうのではなく、心の中で答えてもらうのです。」
うまく練り上げ、伝えられた修辞疑問は、話し手の立場を信じるよう聴衆に働きかける。「シェイクスピアの登場人物シャイロックは、アントーニオへの復讐を正当化するため、聞き手に4回『はい』と思わせようとしているのは明らかです。聴衆に、何に対して『はい』または『いいえ』と言ってほしいですか。」
はい・いいえで答える質問に加えて、好奇心をかき立て、答えについて考えるよう聴衆を促すこともできる、と彼女は言う。
3. 衝撃的な統計や見出しを示す。
プライスによると、米国を代表するヘルスケアIT企業の営業担当副社長は、次の言葉でプレゼンテーションを始め、病院にソフトウェアソリューションを売り込むことに成功している。
「『Journal of Patient Safety』に掲載された新たな研究によると、患者の死亡につながる医療過誤は、これまで考えられていたよりはるかに多いことが分かりました。予防可能な有害事象(PAE)により、病院で治療を受ける患者が年間最大40万人亡くなっています。つまり、医療過誤は心疾患、がんに次ぐ死因第3位なのです。私たちのビジョンは、医療過誤のない世界をつくることです。そのために、皆さんの力が必要です。」
「統計、強い主張、または見出しは、プレゼンテーションの主な目的に直接結びついている必要があります」とプライスは説明する。「そのインパクトによって、聴衆が話を聞き、提案や次の段階に前向きに応じてくれることが理想です。」
4. 力強い名言を使う。
「よく知られた人物の賢明な言葉を使いましょう。その人物の名前を挙げることで、その人の信頼性、好感度、知名度を活用できます」と彼女は言う。引用は、聴衆にとって意味があり、関連性のあるものでなければならない。
合意形成を促す場や、対立管理についての講演を想像してみよう。次のように始められる。「マーク・トウェインはかつてこう言いました。『二人があらゆることに同意するなら、そのうち一人は必要ない。』私たちのなかにはxyzの問題で意見が異なる人もいますが、解決に至るには一人ひとりが必要です。」
5. 心をつかむ写真を見せる。
写真一枚は千の言葉に値する――「それ以上かもしれません」とプライスは言う。
「可能であれば、文字ではなく写真を使いましょう」と彼女は勧める。質の高い写真は、見た目の魅力を高め、理解を促し、聴衆の想像力を刺激し、メッセージをより記憶に残るものにする。
プライスは、画像を効果的に使った次の例を紹介する。
ある電子機器メーカーの社長は、管理職たちにコスト削減を求めていた。ありきたりな図表やグラフ、表を見せる代わりに、会議の冒頭で「タイタニック号を沈めたのは何ですか」と尋ねた。全員が声をそろえて「氷山」と答えると、彼はスクリーンに美しい高解像度の氷山の画像を映し出した。氷山の先端は水面上にはっきり見え、水面下にはるかに大きな部分がぼんやりと見えていた。
「同じことが、まさに当社にも起ころうとしています」と彼は続けた。「隠れたコスト――水面下に潜む危険――が、当社を沈めようとしています。皆さんの力が必要です。」この視覚的な比喩は、創造的で生産的なブレインストーミングにつながり、各事業部門の管理職が「氷山」と名付けたものを熱心に探すきっかけとなった、とプライスは言う。その結果、数百万ドルを節約し、最終的に会社を救った。
6. 小道具や創造的な視覚教材を使う。
「小道具は、聴衆の心をつかみ、見続ける、あるいは聞き続けてもらうための、人を引きつける道具です」とプライスは言う。視覚教材は、要点を強調する助けにもなる。
プライスは、大手保険会社の営業担当副社長の例を挙げる。彼は熱心なテニス愛好家でもある。彼女によると、彼は年次会議を華々しく始めたいと考え、「テニスラケットを見事に使って、『競争相手にエースを決める』『チームで力を合わせる』『優れた顧客サービスでグランドスラムを達成する』ことを強調しました」。彼女によると、毎年、ほかの話し手たちは、動機づけとなるメッセージを伝えるこのリーダーの創造力と比較された。
「大きな壁掛け時計、色鮮やかなギフトバッグ、ジャグリング用のボール、トランプ一組、ニンジンの束、あるいは別の小道具をどう使えば、テーマを紹介し、聴衆を引きつけ、ユーモアを加え、メッセージを強く印象づけられるか考えてみてください。」
7. 短い動画を流す。
心を動かす顧客の推薦コメントを収めた動画で製品管理会議を始める場面や、野生のアムールヒョウが子どもと遊ぶ映像を見せて、絶滅危惧種のための資金調達イベントを始める場面を想像してみよう。
「動画は感情に訴えかけます」とプライスは説明する。「スライド上のテキストや箇条書きとは違い、人、映像、音声を活用して聴衆を引き込み、ドラマ性を加え、メッセージの要点を素早く伝えられます。」
ウォルト・ディズニーはこう語った。「人々を楽しませ、何かを学んでくれることを願うほうが、人々を教育し、楽しんでくれることを願うよりいい。」
この記事は、 Business Insiderとの共同で掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムによる見解への賛同を意味するものではありません。
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著者:ジャクリーン・スミスは、2014年2月にBusiness Insiderのキャリア担当編集者に就任しました。
画像:無人の会議室。REUTERS。
