パンデミックが私たちの仕事生活に及ぼした影響は、信頼の重要性が高まっていることを浮き彫りにしています。
リモートワークを成功させるには、従業員と雇用主の双方において、また両者の間に、より高い水準の信頼が求められます。
長期的には、より高い水準の信頼を育む組織ほど、この新たな時代に繁栄するうえで有利な立場に立つでしょう。
2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックを振り返るとき、ウイルスがもたらした人的・経済的損失だけでなく、重要な収穫も目にすることになるでしょう。それは、信頼の価値に対する世界的な認識の高まりです。
この春、企業が急激な需要の落ち込み、不安を抱える従業員、変動の激しいコストに対処するなかで、リーダーシップの優先課題が、すべてのステークホルダーからの信頼を維持することへ移ったのは明らかでした。2008年の金融危機と同様、長期的に生き残る企業は、強い免疫システムに相当するものを備えている傾向があります。それは貸借対照表だけでなく、ステークホルダーとの間に築いてきた信頼の水準にも表れます。
離れていても、共に働く
この春、私たちは遠く離れたところから信頼を築く方法を改めて学ばなければならないと気づきました。集団の健康が、私たちがどれだけうまく距離を保てるかにかかっている世界で、信頼を築き、取り戻すにはどうすればよいのか、まだ答えは出ていません。
この4か月で学んだことの一つは、仕事の話し合いに加えて、同僚や顧客と少し余分に時間を過ごすことの価値です。特定の目的があるわけではなく、この困難な時期をどう過ごしているかを尋ねるだけです。こうした短い雑談は、対面での会話に代わる最善のものではありませんが、一つの良い効果をもたらしました。パンデミック以前よりも、同僚や顧客を一人の人間として、その暮らしを深く理解できるようになったのです。
たとえば最近、ビデオ通話中に幹部の息子さんが画面に入ってきたので、一緒に話そうと声をかけました。数か月前なら、誰にとっても少し気まずかったかもしれませんが、今では3人で、とりとめのない話を楽しく交わしました。同僚の息子さんに会い、その人の生活について知っていることに背景情報が加わったことで、私たちの仕事上の関係はより豊かになりました。
移動が制限され、普段のように人々と会うことができなくなりました。その埋め合わせとして、ビデオ通話にずっと多くの時間を費やしています。この新しい管理スタイルに適応するのは容易ではありません。世界的なパンデミック下で働くことに関しては、私も人類のほかの誰もがそうであるように、まだ初心者だからです。
忍耐が求められる時
同僚たちの暮らしを垣間見ることで、誰もが今直面している課題にも気づかされました。一人暮らしか、小さな子どもと暮らしているか、あるいは年配の親族の健康を心配しているかにかかわらず、今、多くの人は手いっぱいです。在宅勤務をする人にとって、本業は数ある優先事項の一つです。管理職として、また同僚として、互いに辛抱強く接し、それぞれが自分なりの境界線や予定を決められるようにする必要があります。そうすれば、仕事と家庭生活を両立できるでしょう。
そのためには、同僚、顧客、投資家、規制当局など、あらゆる仕事上の関係において、より高い水準の信頼を築くことに、いっそう強く取り組む必要があります。この信頼を実現するには、私たち全員に前例のない水準の透明性が求められます。来年の先行きが不透明であることを率直に伝える管理職であれ、母親の体調が悪く常に支えが必要なためプロジェクトが遅れると説明する従業員であれ、率直さと忍耐をもって共に課題に向き合えば、私たちはまだ成功できます。
もちろん仕事はやり遂げなければなりませんが、誰もがすべての責任を果たせるよう、必要な柔軟性を与える必要があります。そのためには、細かく管理しすぎるのをやめることが大切です。勤務時間や勤務時間帯に注目して人を管理することは、もともとあまり理にかなっていませんでした。半分がリモート勤務となった今、それはもはや実務上も成り立ちません。従業員の5%の問題行動を理由に100%を監視するのではなく、その難しい5%に対処する方法を見つけなければなりません。
今日の管理職は、勤務時間ではなく成果にもっと重点を置く必要があります。従業員も、管理職がパンデミックへの対応にまだ慣れていないことを認め、多少の余裕を持って接する必要があります。チームのメンバーは、置かれた状況のなかで最善を尽くし、チームのために率先して動くことで、リーダーが示す柔軟性に応えることができます。
「彼ら」などいない
結局のところ、分散型の働き方が成功するかどうかは、分散して働く人々の間に信頼があるかにかかっています。「彼ら」がやり方を変えるのを待つわけにはいきません。「彼ら」などいません。いるのは私たちだけです。これからは、どの優れた企業も、強い当事者意識の文化を築いて初めて成功できます。つまり、あなたの会社で働いているのは「彼ら」ではなく、一人ひとりの人間です。私たち自身が率先して変化を推し進めることで、変革を実現できるのです。
今ほど、優れた組織文化が一人ひとりの最善の努力と最高のアイデアを求めている時はありません。

