心の健康に配慮した職場をつくる7つのステップ

A worker on the IG Group's trading floor looks away from his screens in the City of London, October 4, 2011.
Image: REUTERS/Olivia Harris
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良好なメンタルヘルスがあれば、人々は自らの可能性を最大限に発揮し、日常生活のストレスに対処し、生産的に働き、地域社会に貢献できます。しかし、精神疾患の負担は増大し、深刻さを増しています。世界全体では、4人に1人が生涯のある時点でメンタルヘルスの問題を経験するとみられています。一方、3億人を超える人々がうつ病を患っていると推計されており、これは世界人口の4.4%に相当します。また、毎年80万人が自ら命を絶っています。

うつ病を抱えて暮らす人の数は、2005年から2015年にかけて18%超増加しました。精神疾患、神経疾患、物質使用障害を合わせると、その負担は非常に大きく、全疾病負担の13%を占めています(障害調整生存年、すなわちDALYで測定)。この疾病負担の80%超は低・中所得国に暮らす人々に集中しています。

メンタルヘルスの不調がもたらす経済的影響も、同様に深刻です。世界経済フォーラムとハーバード大学公衆衛生大学院の研究は、精神疾患による経済生産の損失という形で見た世界全体への累積的影響が、2011年から2030年の間に16.3兆ドルに達すると推計しました。インドでは、精神疾患による損失は1兆300億ドル(経済生産の22%)と推計されており、2012年から2030年の間に発生する見込みです。同じ期間に、中国では精神疾患によって4.5兆ドルの損失が見込まれています。こうした推計は、精神疾患への対策が急務であることを示しています。

2012年における世界全体の障害を抱えて生きた年数の分布Image: WHO(2014年)―世界保健推計

生産性の損失がもたらす負担

従業員本人またはその家族の精神疾患が治療されないままだと、職場での生産性低下、労働参加率の低下、課税対象所得の逸失、職場での事故の増加、従業員の離職率上昇、福祉給付の増加につながります。10人中6人が、メンタルヘルスの不調は仕事中の集中力に影響すると答えています。また、推計によると、英国ではメンタルヘルスの不調により、毎年およそ7,000万労働日が失われています。

スティグマが適切な診断や治療を求める人を減らすという、悪影響も明らかになりつつあります。例えば、2008年にカナダで実施された調査によると、精神疾患のある家族がいることを友人や同僚に話すと答えたカナダ人はわずか50%でした。がんの診断について話すと答えた人は72%、家族が糖尿病であることについて話すと答えた人は68%でした。

朗報は、不安障害やうつ病などのメンタルヘルス上の問題の治療が、ウェルビーイングと繁栄を促進するための、手頃で費用対効果の高い方法であることを示す証拠が得られていることです。

うつ病や不安障害の治療に1ドルを投資すると、健康状態と就労能力の向上という形で4ドルの効果が得られます。これは個人、家族、地域社会、経済、そして社会全体にとって有益です。

雇用主は変化を起こす担い手になれます。職場のストレス要因は軽減でき、職場の方針と個々の従業員のニーズに働きかけることで、ウェルビーイングと創造性を促す組織風土を育むことができます。同様に、一般的な精神疾患には有効な治療法があり、雇用主は必要とする人が治療を受けられるよう支援できます。

雇用主にできることは?

世界経済フォーラムは、メンタルヘルスに関するグローバル・アジェンダ評議会の一環として、ビジネス、市民社会、学術界の各分野からメンタルヘルスの専門家を集め、心の健康に配慮した組織づくりを促進する実践的なツールキットを作成しました。このツールキットは、組織内のどの立場にいる人でも、職場の精神疾患に取り組む必要性を示し、対策を推進できるよう支援することを目的としています。心の健康に配慮した職場づくりにつながる7つの重要な行動を紹介します。

1. 職場環境を把握するそして、自分や同僚、組織のメンタルヘルスを向上させるために、どのように改善できるかを考えましょう。職場はそれぞれ異なります。取り組みを始める前に、自分の職場について必要な情報を集め、自社に最も適した方針を見極めることが大切です。

2. 行動を起こした組織のリーダーや従業員の動機から学ぶことができます。動機は通常、ひとつではなく、いくつかが組み合わさっています。従業員のメンタルヘルスとウェルビーイングを守ること、従業員に対して「正しいこと」を行うこと、従業員エンゲージメントと評判の向上、コストや法的責任の管理などが挙げられます。

3. すでにあるものを活用する。行動を起こした他社の取り組みと、その進め方を知りましょう。世界各地の企業や組織は、すでにメンタルヘルス方針を導入しています。このツールキットには、イングランド銀行、ベル・カナダ、BHPビリトン、ブリティッシュ・テレコム・グループ、キング&ウッド・マレソンズなどの事例が含まれています。

4. 自分や同僚にとっての機会とニーズを把握することで、職場のメンタルヘルスに関するより良い方針づくりに役立てましょう。組織ごとに状況は異なるため、従業員のニーズに最も適切に対応できる方針もそれぞれ異なります。そこで、どのようなニーズがあるのか、職場のメンタルヘルス・プログラムによってどのように対応を始められるのかを特定することが重要です。

5. 組織を支援するための実践的な行動を起こす。職場でメンタルヘルスを守り、促進し、課題に対応するための戦略は、一般に社内外の連携を築くことで実施されます。メンタルヘルスに関する取り組みを成功させるには、協働が欠かせません。従業員は、教育資料を探し、地域の研修プログラムを活用し、適切な診断ツールを自ら使用したり、人事部門と連携して活用を促したりできます。また、職場のウェルビーイング戦略の策定、実施、評価を進めることもできます。

6. 自分や同僚が助けを必要とするとき、どこに相談すればよいかを確認する。メンタルヘルスの問題について支援を求めることは、人によっては個人的にも感情的にも難しい課題です。大切なのは、支援を求めることを恐れないこと、そして支援を必要としている同僚に寄り添うことです。

7. 始める
世界保健機関の初代事務局長であり、精神の健康と身体の健康は密接に結びついているという考えを広めた精神科医、ブロック・チザム博士は、次の言葉を残しています。「精神の健康なくして、真の身体の健康はあり得ない」

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