貧困はどのように測るべきか?

貧困はどのように測るべきか?
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2015年までに1990年の世界の貧困率を半減させたミレニアム開発目標の成功を受け、国際社会はさらなる貧困削減に向けた取り組みを強化してきました。たとえば世界銀行は最近、2030年までに世界の極度の貧困率を3%以下にするという目標を提案し、基準を引き上げました。この野心的な目標の達成には、貧困削減のあらゆる局面で、すべての関係者による一層の努力が必要となることは間違いありません。そこには、(おそらく華々しさには欠ける)貧困測定の取り組みも含まれます。

貧困の動的側面を分析することは、より効果的で効率的な貧困削減政策の設計に重要です。貧困の動態に関する具体的な知見がなければ、たとえば2つの時点で貧困率がともに20%であっても、完全な停滞(すなわち、すべての世帯の厚生に変化がない、移動性ゼロの状態)から極端な変動(すなわち、最初の時点で貧困状態にあった世帯がすべて貧困から脱し、以前は貧困でなかった世帯にすべて置き換わる、完全な移動性の状態)まで、幅広い動態が覆い隠されている可能性があります。こうした状況に対処する政策が大きく異なることは明らかです。貧困の大部分が一時的なものであれば、貧困層ではないものの脆弱な世帯が貧困に陥るのを防ぐセーフティネット・プログラムの設計に、重点を置くべきかもしれません。一方、貧困の大部分が慢性的なものであれば、人的資本への投資やインフラ整備など、構造的かつ長期的な介入に重点を置くほうがよいでしょう。一時的貧困と慢性的貧困には通常、異なる政策手段が必要であり、単一の政策で両方に効果的に対処できる可能性は低いのです。しかし、ほとんどの開発途上国ではパネル世帯調査データが著しく不足しており、こうした分析の実施は非常に困難になっています。

この障害を克服するため、私たちは貧困の動態を測定する合成パネルを作成する新たな統計手法を提案しました(Dang、Lanjouw、Luoto、McKenzie(2014年)、 Dang、Lanjouw (2013年))。これらの手法の大きな貢献は、比較可能な横断面データが2時点分あれば、データが乏しい幅広い状況に適用できることです。(調査データが時点間で比較できない場合の貧困測定という関連テーマについては、別の記事もあります。)私たちや他の同僚 が実施したさまざまな検証では、地理的に多様な場所にあり、所得水準も異なる複数の国において、合成パネルに基づく貧困推計は実際のパネルデータに基づく推計にかなり近いことが示唆されています。実際、一定の条件下では、合成パネルによってデータの質が高まり、より信頼性の高い推計が得られる可能性さえあります。

これらの手法は、世界銀行の地域旗艦報告書にも広く取り入れられるようになっています。たとえば、経済的移動性と中間層に関する2012年のラテンアメリカ・カリブ海地域の 報告書 、不平等に関する2015年の南アジアの 報告書 、および現在進行中のその他の地域・国別報告書が挙げられます。世界銀行外の研究者も、 貧困測定 やプログラムの インパクト評価など、さまざまな目的でこれらの手法を用い始めています。合成パネルが利用可能になれば、パネルデータがない場合でも、貧困以外の分野、たとえば労働移動や国際貿易における望ましい動態を研究する機会が生まれる可能性もあります。

実際のパネルデータが存在しないセネガルにおける貧困の動態についての私たちの最近の 研究 は、これらの手法の例となります。全国を代表する世帯調査(ESPS 1および2)の2時点の横断面データを用いた推計によると、貧困率は2006年の48%から2011年には47%へとわずかに低下しました。しかし、この変化は統計的に有意ではなく、貧困は時を経てもおおむね変わらなかったことを意味します。2年分の世帯消費の分布を相互にプロットすると、時を経てもかなり安定しており、2006年の分布は2011年の分布とほぼ同一です。したがって、横断面データだけを用いた推計では、この期間にセネガルの世帯の貧困状況に大きな変化はなかったと結論づける可能性があります。

しかし、合成パネルを用いた分析は逆の状況を示しています。横断面データで推計された貧困率は比較的安定していたものの、その裏では、この同じ期間にセネガルで貧困から脱する世帯と貧困に陥る世帯の間で大きな「入れ替わり」が起きていました。貧困世帯が貧困から脱する確率(45%)は、非貧困世帯が再び貧困に陥る確率(40%)よりやや高く、消費の伸びが大きい傾向もありました。全体として人口の移動性はかなり高く、半数を超える人々(53%)が上方または下方への移動を経験しました。とりわけ、極度の(食料)貧困層(すなわち、食料貧困ラインを下回る生活を送る人々)の3分の2以上が、厚生カテゴリーを1つまたは2つ上げました。

さらに、貧困への移行に関わる世帯の特徴を検討し、以下の2つの図に結果をまとめました。教育達成度、女性が世帯主であること、都市居住、正式な雇用契約といった要因は、貧困削減と強く相関しています(図1)。先に述べたように、このことは、慢性的貧困への対処には、長期的な所得見通しを改善する介入と、農業など貧困層が活動する部門の経済成長を促進する介入を組み合わせることが、最も効果的である可能性を示唆しています。こうした慢性的貧困世帯の子どもの就学を促す措置や、農村道路の建設・維持も重要です。

2011年に貧困から抜け出す

図1:2006年に貧困状態にあった人々について、2011年に貧困から脱する確率を人口集団別に示す(セネガル)

一方、世帯が貧困に陥るのを防ぐ要因としては、教育達成度、雇用契約、都市居住、女性が世帯主であること、移住、その他の民族集団に属すること、農業以外の部門で働くこと、社会関係資本、災害がないこと、障害がないことが挙げられます(図2)。これらの要因は、社会的保護の提供を目的とする対象選定プログラムの要素として取り入れることができます。

2011年に再び貧困に陥る

図2:2006年に非貧困状態にあった人々について、2011年に再び貧困に陥る確率を人口集団別に示す(セネガル)

各国(または地域)固有の社会政治経済構造によって、貧困の動態に関わる問題はまったく異なるものになる可能性があります。これらの手法の強みの1つは、必要なデータが比較的少ないことです。そのため、同様の状況にある他の地域にも、この研究をより広く展開したいと考えています。

この記事は、 世界銀行のブログ「Let’s Talk Development」 で初めて公開されました。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Hai-Anh H. Dangは、世界銀行開発研究グループの貧困・不平等ユニットに所属するエコノミストです。

画像:2007年4月14日、ラゴス中心部のイサレ・エコ地区で、ナイジェリアの子どもが開放下水溝のそばにしゃがんでいる。REUTERS。

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