野生動物に対する寛容さは、世界各地で異なります。スウェーデンや米国のような国では、オオカミが一頭目撃されただけで、その動物が「問題」を引き起こしたかどうかにかかわらず、ただちに殺されることがあります。インドのような国では、作物や家畜、財産に損害が出ても、人々はしばしば高い寛容さを示し、誰かが死亡したり負傷したりした場合にのみ報復します。
2009年以来、人と野生動物の相互作用を理解するための私の取り組みでは、研究チームと市民科学者がインドの数千の村にある農村世帯7,000戸を訪れてきました。7州の草原、低木地、森林の周辺にある14地域で、人と野生動物の衝突を調査しました。そこで明らかになったのは、驚くべきことでもあり、懸念すべきことでもあります。
効果のない対策
人々の68%が野生動物との「衝突」を経験し、61%が作物被害を、26%が家畜の損失を報告していることが分かりました。幸い、人の負傷や死亡は2%未満と少数でした。野生動物の近くに暮らす人口密度が比較的高い(1平方キロメートル当たり94~312人)ことを考えれば、これは注目すべきことです。また、夜間の見張り、柵、照明、威嚇装置、番犬など、多くの防護策が効果を上げていないことも分かりました。その結果、政府や非政府機関が現在、被害軽減策に投じている巨額の資金について、再評価が必要です。
2000年から2010年にかけて、インドのある州、カルナータカ州では、少なくとも10万件の衝突事例が申告されたことが分かっています。また、補償を申請した人のうち、実際に受給したのは8.5%未満でした。こうした申請は実際の事例の一部にすぎないことを踏まえ、私たちは控えめに見積もっても、インドだけで補償申請は年間100万件を超えると推定しています。場所によって生息地の分断が進み、別の場所では野生動物の個体数が回復するなか、トラ、ヒョウ、オオカミ、ゾウなどの大型動物が分散したり、生息域に戻ったりすることで、人と野生動物の接触は増える一方でしょう。
こうした損失にはどう対処すればよいのでしょうか。被害を受けた人々に直接補償を行うべきでしょうか。この方法は、損失の評価と資金の支給が迅速に行われる地域では一定の成果を上げてきました。一方、遅れが不満を募らせ、野生動物へのさらなる報復につながった地域では、うまくいっていません。
革新し、適応する
最も脆弱な人々や地域に焦点を当て、作物や家畜を守る保険制度を導入すべきでしょうか。この方法もまた、成果は一様ではありません。人口密度の低い地域では機能する一方、多くの人々に行き渡らせることができていません。医療保険や自動車保険など、他の多くの分野では保険制度が整備されてきました。人と野生動物の衝突にも、こうした制度を革新し、適応させる時です。
変化が必要であることは明らかです。野生動物と人はこれからも空間や資源を共有し、そこでは必ず衝突が生じます。都市部に暮らし、野生動物と接する機会がほとんどない私たちも、人々の命と財産を守るための解決策づくりに参加しなければなりません。補償制度の改善、保険の選択肢の拡充、警告システムの強化、衝突を報告するためのポータルなどが、現在、アジアとアフリカで開発されています。野生動物の保全に実質的な価値をもたらすには、そのすべてに社会全体からはるかに大きな投資が必要です。
著者:クリティ・カランスは、野生生物保全協会の保全科学者(アソシエイト)であり、 世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズ2015年選出メンバーです
画像:2008年2月29日、インドネシア・リアウ州ミナスのゾウ訓練センターで、スマトラゾウが調教師と遊んでいる。ロイター/Beawiharta



