なぜ世界は貿易で協力する必要があるのか

なぜ世界は貿易で協力する必要があるのか
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現在、制裁と報復制裁が、ロシアとEUおよび米国の間の貿易動向に影を落としている(van Bergeijk 2014)。これは、1950年代から1990年代にかけて東西貿易に非常に大きな影響を及ぼした冷戦の記憶を呼び起こす。東側の経済相互援助会議(COMECON)は、ソ連に対する米国と英国の経済制裁への対応として設立され、ソ連と当時の衛星国であるブルガリア、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアで構成されていた。冷戦期、欧州大陸の貿易は、COMECONが自給自足に依存していたこと、東側にハードカレンシーおよび交換可能通貨がなかったために課された困難、そして西側が特に軍民両用物資、先端技術製品、食料に禁輸措置を課したことによって、大きく歪められた。開放度(世界輸出額の総地球生産(GPP)に対する比率と定義)に対する政治的摩擦の影響は大きく、1985年にはGPPの3.5%と推計されている(van Bergeijk en Oldersma 1990。旧東西ドイツ間の貿易についてはWolf and Nitsch 2009も参照)。デタントによって欧州域内、さらには世界全体の貿易が急増したことは、観察から分かっている(Afmann and Maurel 2010)。ロシアとの緊張の高まりは、今度は貿易の縮小につながるのだろうか?

潜在的な影響

もちろん、1990年代についての知見をそのまま用いて、新たな超大国間の対立が何を意味するかを推し量ることはできない。鉄のカーテンとベルリンの壁の崩壊後、ドイツは統一され、計画経済下にあった中欧諸国はEU加盟国となり、多くの国、とりわけ中国が世界貿易システムの重要な担い手となって、代替的な供給市場と輸出市場を提供するようになった。それでも、クリミア危機とロシア・西側関係の冷え込みが及ぼす潜在的な影響は大きい。たとえば、CPBオランダ経済政策分析局による最近の研究(Veenendaal 2014)は、政治的不確実性の高まりによって、主要なEU諸国と北米で短期的に工業生産が約0.5パーセントポイント低下すると報告している。欧州に新たな壁ができること――目に見えない壁であっても――は、ベルリンの壁が築かれた1961年以前よりはるかに想像しにくい。それでも、現在の地政学的状況において、政治的対立が冷戦型の貿易シナリオに似た状況を再び生み出し得ることは認識されている。本稿は、そのようなシナリオに伴う経済的コストを示す。

政治的な貿易障壁

冷戦型の貿易戦争が再び起きた場合の潜在的影響を推計するため、いわば思考実験として、2008年の世界貿易システムを対象とする重力シミュレーションモデルに、東西間の目に見える壁と目に見えない壁を再び導入する(van Bergeijk 2012)。まず、東西間の政治的緊張が依然として非常に強かった1988年について、特に政治的な貿易障壁を含む重力モデルを推計する。1988年の政治的な貿易障壁に関する重力パラメータの推計値に基づき、2008年の人口とGDPのデータを用い、旧共産主義国の分裂、ナイジェリアとドイツの首都移転、ドイツ統一を考慮して、政治的な貿易障壁がある場合とない場合の世界貿易パターンをシミュレーションする。このシミュレーションによれば、(ロシア連邦の国境に)鉄のカーテンが仮に再建された場合、貿易開放度はGPPの約1.5%低下する(図1)。

図1 貿易開放度に対する鉄のカーテンの推計影響(GDP比、1988年および2008年)

明らかに、政治的な貿易障壁の要因は鏡像関係にはなく、その帰結は西欧とCOMECON(1988年)/ロシア連邦(2008年)で異なる。政治的な貿易障壁のコストと便益は、東西間でかなり不均等に分配される。第二に、二つのシミュレーションから、壁の影響は壁の両側の地域的な状況だけでなく、壁のない場所にある主体との、またそうした主体間の経済交流の機会にも左右されることが分かる。第三に、壁の影響は壁に近いほど明らかに強いものの、ベルリンの壁と鉄のカーテンがオーストラリアとニュージーランドに及ぼした影響が示すように、地域を越えた影響も無視できないことが多い。

より広い意味合い

これらの結果は正確な予測とみなすべきではなく(Breuss and Egger 1999)、むしろ近年の歴史で大きな役割を果たした壁が及ぼし得る影響の規模を明らかにしようとする真剣な試みと捉えるべきである。政治的動機に基づく貿易の歪みがもたらす潜在的コストは無視できないが、現在の状況におけるその影響ははるかに小さい。したがって、政治的な防衛と安全保障の側面が相対的により重要に見えるとも論じられる。こうした観点から重要なのは、欧州統合の歴史が、相互の経済的便益を増やすことは、かつて交戦したドイツとフランスを和解させる重要な手段であったという考えを裏付けている点である。さらに近年では、統合プロセスは東欧諸国の民主主義を支え、確立し、政治的緊張を緩和することに寄与したと評価されており、中欧のアフガニスタン化を防いだとまでは言えないにしても、その抑止に貢献した。こうした相互利益を減らせば、国際的な安全が損なわれるおそれがある。

以下との共同掲載: VoxEU

著者:Peter A.G. van Bergeijkは、社会研究所(Institute of Social Studies)の国際経済学・マクロ経済学教授。

画像:2009年3月6日、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーのバラード入り江を出航するコンテナ船。REUTERS/Andy Clark

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