今年初め、 当社独自のデータをもとに大胆な予測を発表しました。公式の米国失業率は2015年7月までに5%に達すると推定したのです(当時の失業率は6.3%でした)。このレポートはHBRに掲載されました。 こちらでご覧いただけます。読者からのコメントは辛辣で、多くの人が比喩的に、また1人か2人は文字どおり、私の予測をゴミ箱に投げ捨てるよう促しました。大胆な予測をして勝つことは決してないようですが、この場合、データが示していたのは明白な事実でした。今後生まれる雇用の数を、私たちは大幅に過小評価していたのです。
当時の経済情勢は暗たんとしていたため、予測がいくらか敵意をもって受け止められたのも理解できます。一方では株式市場が上昇し、富裕層はますます豊かになっているように見え、企業利益の伸びにも終わりが見えませんでした。他方では、失業者は仕事を見つけられず、不完全就業者は労働市場から完全に離れ、働く貧困層は生計を立てることができませんでした。しかし、最低賃金の改定という政治面と、中小企業による雇用増加という経済面の双方で、状況が変わりつつある兆しがありました。
最新の報告書はこれを裏付けており、失業率は5.8%に低下しました 。失業率が6%を下回るのは、2008年以来初めてです。これは連邦準備制度の予測を大きく下回り、私の会社が2014年10月について示した積極的な予測である6.0%とおおむね一致しています。それでも、一部のアナリストは、この数字は真の経済成長を示すものではないと警告しています。仕事探しをやめた人を数えないため失業率は無意味だと言う人もいれば、株式市場の激しい変動やその他のマイナス指標がある状況では無意味だと言う人もいます。
こうした意見の不一致を踏まえ、失業率が現在どの水準にあり、どこへ向かっているのか、また健全な経済を示す指標として実際に何を意味するのか、改めて検討することが重要だと考えました。
まず、株式市場の話を片付けましょう。確かに株式市場は急騰も急落も経験しており、特に投資家にとっては不安を招くことがあります。しかし実際には、株式市場が経済を動かすわけではなく、将来を見通す力もそれほどありません。予測するというより、後追いで反応することのほうが多いのです。皮肉なことに、私たちが最初に予測を発表した際、多くの論客は市場の歴史的な成長を反論の材料にしました。株価を維持するため企業は収益増加に一層注力する必要があり、利益増加には賃金の抑制と失業の増加が必要だ、と主張したのです。しかし、株価が日々上昇しようと下落しようと、現在は 記録的な企業収益性 が、採用を続けようとする強い意欲を生み出しているのが見て取れます。
より妥当な懸念は、失業率の算出方法に関するものです。仕事探しをあきらめた人が失業率に含まれないのは事実であり、失業者数を数える方法として精度が低いと言ってよいでしょう。より優れた指標を使っていないのは非常に残念です。しかし、米国で 失業率の測定を始めて以来、この方法が使われてきました。これは私たちが持つ最も妥当な指標であり、過去の時期と比較するために使える唯一の指標です。これは失業の相対的な指標であり、労働力人口の規模にかかわらず、大幅な低下は依然として健全さを示す強い指標です。仕事探しをあきらめた人は多くいますが、そのために相対的な失業率が実質的に変わるほどではありません。
労働参加率を考慮しても、失業率が5%以下であれば、測定が不完全であっても比較的低い水準であり、望ましいことだと分かります。仕事を見つけるのが非常に難しい人は常に存在します。私たちはそうした人々に心を寄せ、支援する政府の取り組みを支持します。しかしマクロの観点では、失業率が5%に達することは重要な節目です。これは進展を示し、失業の循環のどの段階にあるかを教えてくれます。この循環は予測可能であるだけでなく、歴史的にも経済の健全さを示す確かな指標となってきました。
賃金デフレも近年の課題ですが、ここでも進展が見られます。CEOが法外な賃上げを受け続けているのは事実ですが、大不況以来初めて、雇用の最下層で成長の兆しが現れ始めています。 企業は徐々に賃金を引き上げており、 政府も国、州、地方の各レベルで、最低賃金の引き上げに向けて積極的な動きを始めています。連邦政府は政府請負業者の最低賃金を 7.25ドルから10.10ドルへ引き上げ 、オバマ大統領は同様に全国最低賃金を引き上げようとしています。私の住む州では、 カリフォルニア州知事が法案に署名し 、2016年までに州全体で最低賃金を25%引き上げることになりました。サンフランシスコ市は最低賃金を 15ドルに引き上げる取り組みを進めており 、 ロサンゼルスもこれに続いています。この考え方に賛成であれ反対であれ、ようやく最も貧しい勤労者に目を向けているのは事実です。さらにできることは確かにありますが、物事は少しずつ正しい方向へ進んでいます。
私たちは今も大不況から回復の途上にありますが、これまでの成果を祝ってはいけないということではありません。失業の定義が正しいか、十分な雇用があるか、最低賃金が十分な水準かについて議論することはできます。あるいは、多くの場合、状況が好転していることを認め、そうでない分野では課題の解決に注力することもできます。失業について言えば、要点は予測より速いペースで失業率が低下していることであり、それは利用可能な仕事が増え、経済を循環する資金が増えていることを意味します。まだ望む水準に完全に達したわけではありませんが、将来は確実に明るくなっています。
以下との共同掲載: ハーバード・ビジネス・レビュー
著者:ダン&ブラッドストリート・クレディビリティ・コーポレーションの会長兼CEO、ジェフリー・スティベル。
画像:トロントで「雇ってください」と書かれた看板を持つ電動マネキン。REUTERS/Mark Blinch。



