新興国市場への資本フローを左右する要因とは?

新興国市場への資本フローを左右する要因とは?
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世界金融危機以降、新興国経済への資本フローは大規模かつ変動が激しくなり、その決定要因を明らかにする取り組みが再び活発化するとともに、こうした国境を越える資本フローのリスクを抑える政策をめぐる議論が始まりました。増加する研究は、新興国経済への資本フローを左右する主要因として「グローバル金融サイクル」の役割を強調しています。このグローバル金融サイクルは、各国における総資本フロー、レバレッジ、資産価格の共通した変動によって特徴づけられ、さらに、世界的なリスク回避姿勢と不確実性を測る指標であるVIXの変動に強く左右されることが示されています(Rey 2013、Bruno and Shin 2012、2013)。既存の研究はまた、大規模な資本流入が為替レートの大きな変動につながり、マクロ経済運営を難しくする可能性があるほか、突然の資本流入停止が起きれば金融危機を引き起こしかねないことも示しています(Gourinchas and Obstfeld 2012)。

新たな研究

私たちの最近の研究(Nier et al. 2014)は、次の2つの問いを取り上げ、既存の研究を発展させています。

  • 第一に、VIXで測定される世界的なリスク回避姿勢の変化は、各国の特性とどのように相互作用し、新興国市場への資本フローの動向を形づくるのでしょうか。

  • 第二に、世界的な資本フローの流入と流出から自国を守るため、各国はどのような政策を採用できるでしょうか。

2002年第1四半期から2012年第4四半期にわたる、新興国経済とG4以外の先進国経済の大規模な標本について、パネルデータ手法を用います。相互作用モデルにより、VIXの変化が資本フローに及ぼす影響を分析し、成長見通しや債務水準などの受入国の特性、およびその影響を緩和または増幅する政策を検討します。特に、リスク回避姿勢の高まりによって引き起こされる資本流出を食い止めるうえで、金利引き上げが有効かどうかを問います。また、資本規制が世界的なショックによる資本流入への影響をどの程度抑えられるかも検証します。

VIXの影響はファンダメンタルズとどのように相互作用するのか?

重要な発見の一つは、VIXが資本フローに及ぼす影響が非線形であることです。これは、既存研究の多くが想定する、VIXが資本フローに線形の影響を及ぼすという見方とは対照的です。さらに、成長見通し、公的債務の水準、金融市場の発展度といった国固有の要因の限界効果も、その時点のVIXの水準に強く左右されることが分かりました。

図1は、VIXの値が低い範囲では、VIXが資本フローに及ぼす影響が統計的に有意でないことを示しています。つまり、平穏な時期には、VIXのわずかな変化は新興国経済への資本フローの規模に実質的な影響を及ぼしません。

  • むしろ図2に示すように、VIXが低いとき、新興国市場への資本フローは、新興国とG4経済の平均とのGDP成長率の差や、その他のファンダメンタル要因に強く左右されます。

図1 VIXの水準を条件としたVIXの限界効果

注:網掛け部分は条件付き信頼区間(95%)を示します。パラメーターは、2002年第1四半期から2012年第4四半期における新興国経済の大規模な標本を対象としたパネルデータ回帰(論文の表5、固定効果)に基づいています。

  • 対照的に、VIXが高いとき、すなわち金融不安や「パニック」の時期には、VIXが資本フローを左右する支配的な要因となります。成長率の差を含むファンダメンタル要因の重要性が低下し、選別を伴わない資本流出につながります。

図2はこの発見を示し、VIXの水準を条件とした成長率の差の限界効果が、VIXの水準が高くなるほど小さくなることを示しています。私たちの説明では、投資家がパニックに陥ると投資の時間軸が短くなり、投資判断において長期的な成長の可能性(その他のファンダメンタル要因も)を気にかけなくなります。

図2 VIXの水準を条件とした成長率の差の限界効果

全体として、平穏な時期の資本フローはVIXではなく、各国のファンダメンタルズに左右されます。一方、ストレス時にはファンダメンタル要因の重要性が低下し、VIXが新興国市場への資本フローを左右する支配的な要因になります。

資本流入と金利引き上げ

各国は資本流出を食い止めるため、金利を高く維持したり、さらには引き上げたりすることがよくあります。私たちの結果は、これがある程度有効であることを示唆しています。実際、図3に示すように、短期金利差は、資本フローの方向を決めるうえで長期的な成長見通しがより重要な平時よりも、投資家の時間軸が短くなる危機時のほうが大きく影響します。問題は、金利による防衛策が流出を食い止める効果を示す一方で、コストが伴うことです。金利上昇は経済成長を損ない、国内借り手のバランスシートを圧迫する可能性があります。

図3 VIXの水準を条件とした短期金利差の限界効果

世界的な金融環境と資本規制の導入

私たちの結果は、資本取引に対する段階的な規制、すなわち「資本規制」を追加しても、VIXが資本フローを左右する力は実質的に変わらないことを示唆しています。これは、すでに資本取引を自由化した国では、資本がこうした規制を回避して流れるという考え方と一致します。VIXの影響が有意な程度に緩和されることが分かったのは、実質的に完全に閉鎖された国に限られます(図4)。つまり、各国が世界的な金融ショックから完全に自国を隔離するには、国際金融システムを共同で分断するほかありません。

図4 資本規制の水準を条件としたVIXの限界効果

こうした政策上のジレンマは、時間の経過とともに改善するのでしょうか、それとも悪化するのでしょうか?

私たちの結果は、金融の発展によって、VIXが資本フローを左右する力が強まることを示唆しています。図5は、金融発展の指標として各国の株式時価総額を用い、その水準を条件としたVIXの限界効果を図示しています。新興国が、先進国市場が成長にもたらす恩恵を得ようと金融セクターを発展させ続けるにつれて、資本フローは外部要因の影響をますます強く受けるようになる可能性があります。相互作用モデルの結果と一致して、G4以外の先進国を含む標本では、金融発展とVIXの影響がより強いことも分かりました。金融センターも含めた標本では、これらの影響はさらに大きくなります。つまり、各国が金融セクターを発展させるにつれて、資本フローによる金融安定へのリスクが増幅し、金融政策の独立性がさらに損なわれる可能性があります。

図5 市場時価総額の水準を条件としたVIXの限界効果

新興国に希望はあるのか?

新興国経済への資本フローの決定要因に関する私たちの発見を総合すると、新興国の政策担当者にとってかなり厳しい状況が浮かび上がります。すなわち、多大なコストを負わずに資本フローを制御することはできません。しかし、これは新興国に希望がないという意味ではありません。むしろ、世界的な金融環境の変動に対応できるよう、金融システムの強靭性を高めることができます。

マクロプルーデンス措置の有効性を正式に検証したわけではありませんが、原理的には、こうした措置によってシステムの防御力を高め、変動の激しい資本フローに対処できる余地があります(IMF 2013、Forbes et al. 2013)。その他の政策バッファーも、強靭性を高めるのに役立つ可能性があります。これには、十分な外貨準備による輸入カバーを確保することや、大規模で変動の激しい資本フローがもたらす金融危機を乗り切る助けとなる財政バッファーの構築が含まれます。

この記事は、 Vox EUとの共同で掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。

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著者:Erlend W Nierは、IMFの金融資本市場局の副課長です。

画像:ジャカルタのビジネス地区を上空から撮影した景色。REUTERS/Beawiharta

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