デジタル金融サービス(DFS)の利用可能性と人気が、より多くの開発途上国で高まるなか、適切で均衡の取れた金融規制の実施を目指す政策担当者や意思決定者には、こうしたサービスに伴うリスクを特定し、評価することが求められている。あらゆる革新と同様、予期せぬ問題が生じるのは避けられない。たとえば、数百万もの新たなデジタル決済口座が開設されることで、システムへのハッキングやネットワーク障害への懸念が生まれ、金融包摂という政策目標と金融システムの安全性・安定性との均衡を図る責任を負う規制当局、行政機関、組織の間に不安や不確実性が広がっている。
DFSのエコシステムには、従来型の実店舗を中心とする金融システムに特有の力学、仕組み、認識を変えつつある新要素がいくつもある。新しい種類の商品、新たな流通モデル(代理店ネットワークなど)やチャネル(携帯電話など)、従来とは異なる事業者(移動体通信事業者、すなわちMNOなど)、そして独自のニーズや状況を抱える顧客(貧困層)には、革新的な規制のアプローチと解決策が必要だ。
こうした背景を踏まえ、Financial Services for the Poorチームは、今日発表される新たな報告書『 デジタル決済におけるリスクの評価』に情報を提供するため、独自の広範な調査を実施した。主な目的は、デジタル金融サービス、とりわけモバイル決済に内在するリスクの主な種類と発生源を特定し、これらのリスクがその文脈に固有のものかどうかを判断し、最もリスクにさらされるステークホルダー(消費者、事業者、そして/またはシステム全体)を特定することだった。
古くからあるリスク、新たな文脈
初期調査の結果、DFSに伴うリスクは、従来の銀行サービスに関連するリスクと根本的に異なるものではないことが示された。結局のところ、従来の銀行サービスの多くも、すでにデジタル化・モバイル化されている。給与の直接振込、オンライン取引、モバイルアプリ、登録済みのクレジットカードを使ったサブスクリプション料金の自動引き落とし、NFC取引などがある。こうしたシステムや手続きに関わるリスクは、開発途上国のモバイル決済システムに影響するリスクと性質が似ている。
このように複雑な調査の結果としては、単純すぎる、あるいは「期待外れ」に聞こえるかもしれないが、その意味を過小評価すべきではない。このような新興分野に取り組む際、適切な理解が不足していると、厳格でコストのかかる要件が課され、結果としてビジネスモデルが損なわれ、成功や収益性が脅かされることがあまりにも多い。したがって、適切に理解することで、事業を萎縮させずに方向づける要件を考案し、適用できる。
モバイル決済に関連するリスクは全体として新しいものではないと分かった一方で、この文脈でリスクを引き受ける特定の事業者にとっては、新たなリスクとなる場合があることも認識している。たとえば、MNOがモバイル決済システムのプラットフォームを提供する場合、代理店の流動性など、銀行にとってはより馴染み深いリスクを管理することになる。一方、銀行がサービスを提供する場合は、個々の代理店やキオスクが広範に分散していることなど、通信事業者にとってより馴染み深いリスクを引き受けることになる。
デジタル金融システムは依然として発展途上だが、規制当局や民間セクターは、この分野の他の事業者が得た重要な知見や先例を活用し、新たに引き受けるリスクへの備えを進めることができる。言い換えれば、銀行と通信事業者は、双方にとって新たなリスクであっても、相手にとっては馴染み深いリスクの管理方法を学び合える。今後、解決策や教訓を相互に応用することは、モバイル決済システムをより多くの国でより多くの人々に広げるなかで、その設計や規制に携わる政府や組織間の議論において、重要な要素となるだろう。
利用者レベルにおける「ノイズ」
本報告書では、運用リスク、支払能力・流動性リスク、そしてより高度な金融サービス(融資や保険商品など)に関連するリスクという、3つのカテゴリーを評価している。調査から、発生可能性と深刻度の両面で最大のリスクは運用リスクであることが明らかになった。利用者の誤操作(顧客側または事業者側)による誤送金、インフラの停止によるサービスへの脅威、システムへのハッキングなどだ。こうしたリスクのなかでも、エンドユーザーのレベルで日常的に起こりうる不測の事態を過小評価すべきではない。
システムの末端には、多くの「ノイズ」がある。利用者がPINを忘れることもあれば、代理店が追加料金を水増しして差額を着服するなど、発覚しない小規模な不正を働くこともある。また、顧客が銀行に預ける現金を1日または1週間分積み上げ、毎日届けなければならない代理店は、盗難の標的になることもある。モバイル決済システムの状況において、ここは偶発性と不確実性が最も大きい領域だ。規制は難しいものの、必要とする数十億人に安定して安全なサービスを提供するため、ここに重点を置くべきである。
今後の展望
銀行口座を持たない25億人に決済サービスを提供する利益率は極めて低く、事業者がシステムの設計や関連リスクの管理に慎重を期すのは当然だ。本報告書を通じて、こうした新たなシステムを形づくる視点や議論を前進させたい。リスクを整理し、その管理方法を示すことで、デジタル金融サービスが利用者と事業者の双方にとって、安定性、健全性、安全性を備えて機能する世界の、より強固な基盤づくりに貢献する。
この記事は Impatient Optimistsとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムによる見解への支持を意味するものではありません。
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著者:Jason Lambは、Bill & Melinda Gates FoundationのFinancial Services for the Poor担当副ディレクター。Sacha Polveriniは、Bill and Melinda Gates Foundationのシニア・プログラム・オフィサー。
画像:ベルリンで撮影されたこの写真イラストでは、コンピューター画面の前に手のシルエットが映っている。REUTERS/Pawel Kopczynski



