イタリアの年金判決はどのような影響をもたらすのか?

イタリアの年金判決はどのような影響をもたらすのか?
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4月30日、イタリア憲法裁判所は、モンティ政権が2011年に導入した年金改革について判決を下した。この判決は財政に重大な影響を及ぼす可能性があり、さらに長期的な哲学的メッセージも発している。

イタリア憲法裁判所 は 、危機の最中にモンティ政権が承認した年金改革法の一条が違憲であると判断した。この条項は、最低額の3倍を超えるすべての受給権(すなわち、額面で約1,450ユーロ以上のすべての年金)について、2012年と2013年の年金額改定を一時停止するものだった。裁判所は、この措置は一時的なものであっても、平等と比例性の原則に反すると論じた。

判決は2012年に遡及するため、政府は2012~2013年に失われた改定分として、年金受給者450万人に返金する義務を負う可能性がある。首相 レンツィ とパドアン財務相の発言によると、改革が全面的に撤回された場合の総費用は約180億ユーロに上る。この場合、イタリアの2015年の財政赤字は、政府予測のGDP比2.6%から3.6%へ拡大する。

しかし、この判決の実質的な影響はより複雑で、将来にも及ぶ。2012~2013年分の返金が行われれば、その後の年金額改定の算定基礎も、最近の政府予算文書で想定されていたより高くなる。これにどれほどの費用がかかるかについて、現時点で公表されている詳細は見当たらない。しかし、イタリアがすでに直面している年金支出の極めて高い水準を踏まえると、歓迎すべき話とは言い難い。

図1aおよび1b

年金支出:ブリューゲルの図表(150526)

出典:EUROSTAT

こうした背景のもと、政府は2日前、返金の方針を発表した。憲法裁判所の判決の対象となる年金受給者440万人のうち、返金を受けるのは370万人に限られる。つまり、最低額を上回り、月額3,200ユーロ未満の年金を受け取る人々だ。裁判所は以前、最低額の8倍を超える年金受給権(約4,000ユーロ)について、2008年に実施された改定の一時停止を合法と判断していた。このことから、今回もこの基準を超える受給者には返金しないことが許容されると示唆される。

政府の方針はなお法廷で争われる可能性があるが、その行方は今後数か月で明らかになるだろう。しかし財政面では、今回の判決により政府はすでに非常に難しい立場に置かれている。返金によって、政府がここ数か月で積み上げてきた約20億ユーロの「財政安全余裕」が実際に損なわれる。この資金は、新たな赤字を生じさせずに年金額改定分を支払うために使われ、その結果、欧州委員会から暫定的な支持を得ていた。

しかし、この進展は間違いなくブリュッセルで注意深く見守られるだろう。 IMF も、2015年の対イタリア第4条協議の終了声明で、次のように警告した。「憲法裁判所の判決に従う年金再改定は、今年およびそれ以降の財政運営を変えるべきではない。増税によって景気を損ねることなく財政余裕を積み増すため、安全措置条項は歳出削減によって完全に相殺されるべきである。」

実際、イタリアの予算法は、2017年までに構造的財政収支の均衡を達成するため、自動的に発動され得る付加価値税の2%引き上げと燃料税の増税を定めている(いわゆる「安全措置条項」)。この増税は、イタリアの景気回復が依然として脆弱な時期に、政府が最近実施した限定的な景気拡大策を損なうことになる。これを避けるため、2015年 予算ではすでに100億ユーロの歳出削減が盛り込まれており、総支出を2014年のGDP比51.1%から2015年には50.5%に減らすことになっている。憲法裁判所の判決と、それに伴う財政安全余裕の投入によって、政府には歳出削減を実行する一層強い圧力がかかっている。

しかし、予算を超えて、この判決はより一般的で、おそらくより重要かつ議論を呼ぶメッセージを発している。憲法裁判所は、深刻な経済危機のさなかであっても、年金の改定を一時的に停止することは「平等」と「比例性」の原則に反すると判断した。年金受給者が、危機の間に求められた調整の非常に大きな部分を担わされたのは確かだ。これはユーロ圏「南部」の国々に共通しており、この事実を否定するつもりはまったくない。それでも、より広い視野で状況を捉えることには意味があるかもしれない。

イタリアでは若年層と高齢層の間の格差が大きく、長年続いているが、危機の間にさらに悪化し、世代間の再分配に大きな影響を及ぼした。イタリアの年金支出は欧州で2番目に高く(図1b)、この改革が実施されていた年の一つである2012年にもGDP比16.5%に達していた。さらに重要なのは、明らかな外れ値であるルクセンブルクを除けば、所得代替率が上位3分の1に入ることだ(図1a)。

イタリアで貧困や社会的排除のリスクに直面している高齢者(65歳以上)の割合は約22.6%である。同じ年齢層で比較すると、ユーロ圏でも高い水準で、最も高い国々の一つだ。若年層では、18~24歳の割合が36.3%に達し、こちらもユーロ圏で最も高い水準の一つとなっている。貧困や社会的排除のリスクに直面する人の割合は、18~24歳で5.4ポイント、25~49歳で5.3ポイント上昇した。一方、高齢者では2.7ポイント低下した。

これはイタリアに特有の現象ではない。 Darvas et al.(2014) によると、危機の間、欧州では世代間格差が拡大し、若い世代が高齢世代よりも大きな打撃を受けた。深刻な物質的困窮率は、子どもでは2007年の10.1%から2012年には11.7%に上昇した一方、高齢者では同じ割合が2007年の8.6%から2012年には7.5%に低下した。2012年には、親が働いていない世帯で暮らす子どもが11.1%に上った。

出典:EUROSTATおよび独自の計算

しかし図3は、若者の雇用見通しに非常に深刻な影響を及ぼしてきた(そして今も及ぼしている)深刻な経済危機に苦しむ国という、より広い文脈の中で見る必要がある。イタリアの若年(25歳未満)失業率は2014年末に40%で、ユーロ圏で3番目、EUで4番目に高かった(図3a)。若年失業率が2013年から2014年にかけて低下せず、なお上昇した国はイタリアを含めごくわずかである。さらに、入手可能な最新の国立統計研究所のデータによると、2015年3月には43%にまで上昇しており、憂慮すべき傾向が止まるどころか、反転する見込みもまだ遠いことを示している。

図3aおよびb

出典:EUROSTAT

すでに 以前論じたとおり、さらに懸念されるのは、この極めて高い若年失業率が、主として長期失業によるものでもあることだ。2014年には、失業中の若者の60%が1年以上にわたって失業していた。EU全体では40%未満だった。この状況は、こうした若年労働者が将来再び雇用される確率を大きく左右する。時間がたつにつれて技能が劣化していくからだ。また、より長期的な影響も及ぼす。1995年に確定給付方式から確定拠出方式へ移行した年金制度のもとでは、若年失業率が40%のまま長期間続くと、今日若いイタリア人のかなりの割合が、将来ごく低額の年金しか受け取れなくなることも意味する。

それでは、状況を広い視野で捉えてみよう。イタリア憲法裁判所は、欧州で年金支出が2番目に高く、所得代替率が3番目に高い国において、最低額の3倍を超える年金受給権の改定を一時停止することは、「平等と比例性」の原則に反すると判断した。その結果、政府は年金額に反比例する形で、370万人に対して総額20億ユーロの返金を実施する。年金を一つだけ受給する人の場合、2015年の年間返金額は280~750ユーロ、月額にすると23~62ユーロとなる。受給者側の消費を刺激できると言う人もいるだろう。そうなる可能性はある。しかし同時に、これによって積み上げられていた財政余裕は確実に失われ、今年の付加価値税引き上げのリスクが高まる。そうなれば、限られた受給者だけでなく広く消費が打撃を受け、おそらくなお脆弱な景気回復も危うくなる。

こうしたすべてのことは、現在、若年失業率が43%に達し、そのうち60%が長期失業で、構造的な問題となる恐れがある国で起きている。この判決はまた、予算上の制約が事実上意味をなさなくなる可能性を示すメッセージも発しており、欧州の財政均衡ルールをイタリア憲法に明記した第81条の堅牢性について、興味深い疑問を提起するかもしれない。さらに、2011年のような深刻な国家的緊急事態においてさえ、政府が予算に関して断固たる措置をとることの正当性にも深刻な疑問を投げかける。当時はイタリアだけでなく、ユーロの存続も危機にさらされていた。裁判所の論拠は法的観点からは盤石かもしれない。ローマ人が言ったように、「法は厳しい。だが、それが法である」。しかし、一介の経済学者の目には、これは時機を逸しており、「比例的」とは言い難く、「平等」という言葉の独特な解釈を伝えているように見える。

この記事は、ブリュッセルを拠点とするシンクタンク、Bruegelに最初に掲載された。記事は同団体のウェブサイトの こちらで読める。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しない。

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著者:イタリア国籍のSilvia Merlerは、2013年8月にBruegelのアフィリエイト・フェローに就任した。

画像:引退した女性が杖を使いながら散歩している。REUTERS/Christian Hartmann。

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