発展途上国における外国直接投資(FDI)の影響について、従来は、FDIが雇用を生み出す一方で、国内企業から市場機会を奪い、国内企業の効率性を低下させると考えられることが多い。これらはいわゆるFDIの負の波及効果であり、ベネズエラ(Atkin and Harrison, 1999)、チェコ共和国(Djankov and Hoekman, 2000)、中東欧(Konings, 2001)で確認されている。最近の研究(Kee, forthcoming)で、考慮すべきFDIの正の波及効果、すなわち共通サプライヤーを介した波及効果があり得ることを示した。
私の直感の根拠となっているのは、Goldberg et al.(2010)のよく知られた論文である。同論文は、1990年代初頭のインドにおける貿易自由化により、国内企業がより多様な輸入中間投入財を利用できるようになり、製品範囲と生産性を拡大できたことを示している。FDIの文脈でも、同様の恩恵が生じる可能性がある。通常、外国企業と国内企業は、現地の中間投入財のサプライヤーを共有している。しかし、外国企業は「選り好みが激しい」ことで知られているため、その存在によって現地サプライヤーがより高品質の財を供給するインセンティブが生まれ得る(Javorcik 2004)。その結果、外国企業とサプライヤーを共有する国内企業は、より新しく優れた現地投入財を利用でき、製品範囲と生産性を拡大できる。Rodriguez-Clare(1996)は、FDI企業が現地の中間財を集中的に使用する場合に、こうした正の波及効果を裏付ける理論的メカニズムを巧みに提示している。研究の一環として実施したインタビューで、外国企業と国内の衣料品企業の双方にファスナーを供給するサプライヤーは、正の波及効果がどのように生じるかを次のように説明した。
「FDI衣料品企業への供給は、ダッカEPZに工場を設立する重要な理由でした。当初、総売上高に占めるFDI衣料品企業の割合は約20%でした。現在は35~40%です……。FDI衣料品企業の基準を満たすため、製品の種類、能力、効率を向上・拡大し、コストとリードタイムを削減する必要がありました。さらに、FDI衣料品企業の顧客から得た最新の製品要件やファッショントレンドに関する市場情報を、他の顧客とも共有しています……。そのため、当社から購入する国内衣料品企業は、その情報に基づいてさらに改善できます。」
—LSI Industries Ltd.(バングラデシュ)マネージングディレクター、2010年11月。
FDIの共通サプライヤーを介した波及効果の特定
もちろん、共通サプライヤー効果を実証的に研究するには、現地のサプライヤーを共有する外国企業と国内企業を照合できるデータセットが必要となる。バングラデシュ政府と世界銀行の支援を受け、バングラデシュの衣料品産業について無作為抽出による代表性のある調査を実施した。350社の各企業に、主要な現地投入財サプライヤー上位3社の名称と連絡先を尋ねた。さらに、分析に偏りが生じないよう、バングラデシュ産品に対してEUの「武器以外すべて」イニシアチブの下で無関税・無割当のアクセスが認められたという、外生的な政策ショックを利用した。
調査結果:FDIの拡大に伴い国内企業が恩恵を受ける
本研究は、サプライヤーが共有されている場合、外国企業が国内の取引先企業に恩恵をもたらすことを示している。「武器以外すべて」イニシアチブを活用するために外国企業が投資と市場での存在感を拡大すると、サプライヤーを共有する国内企業の製品範囲と生産性も大幅に向上する。これは、国内企業自身がEUに輸出していない場合でも同様である。この結果は、共通サプライヤーによる波及効果が、1999~2003年の期間に国内企業で生じた製品範囲の拡大の4分の1、生産性向上の3分の1を説明し得ることを示唆している。
本研究はまた、外国企業が中間投入財の現地サプライヤーの育成に寄与したことも示している。外国の衣料品企業の数が増えるにつれて、現地サプライヤーの数も増加する(図1)。
図1.FDIの成長に伴う現地サプライヤーの増加

含意:共通サプライヤー効果を踏まえたFDI政策
FDIを通じて国内企業の振興を目指す政策立案者にとって、共通サプライヤー効果は検討に値する新たな方策である。さらに本研究は、後方連関が大きいFDIを誘致する政策を設計すれば、中間投入財産業の振興と国内の最終財企業への恩恵を同時に実現できるという考えを、実証的に裏付けている。
共通サプライヤー効果は、発展途上国や衣料品部門に限られない。例えば、フォルクスワーゲンが2000年にポルトガルのAutoEuropaを買収した際、ジャストインタイム納入方式を採用し、それに伴うソフトウェアを現地サプライヤーに配布した。これによりAutoEuropaの生産性が向上しただけでなく、ポルトガルの自動車産業も変化した。現在、現地自動車メーカーは、共通の現地サプライヤーを通じてフォルクスワーゲンの在庫管理方式を利用している(Automotive Design and Production)。
最後に、外国企業の存在は共通サプライヤーを通じて国内企業に恩恵をもたらす一方、外国企業が撤退する場合には逆のことが起こる。例えばマレーシアでは、ある現地サプライヤーが、パナソニックのファクス機向けに特殊なプラスチック樹脂を販売すると同時に、現地のカッターナイフメーカーにも販売していた。パナソニックが工場を閉鎖すると、カッターナイフメーカーも打撃を受けた。
「パナソニックがファクス機工場を閉鎖したとき、需要が不足したため、現地サプライヤーもそのプラスチック樹脂の販売を停止しました。その結果、当社のカッターナイフ生産に支障が出ました。現在は、より高いコストをかけて台湾から材料を輸入する方法を検討しており、為替レートや輸送に関する不確実性にも直面しています。」
—SJD Industries (M) Sdn. Bhd.(マレーシア)ゼネラルマネージャー、2011年11月。
参考文献
Aitken, Brian J. and Ann E. Harrison(1999)「国内企業は外国直接投資から恩恵を受けるか?ベネズエラの証拠」American Economic Review 89(3), 605-618。
Djankov, Simeon and Bernard Hoekman(2000)「チェコ企業における外国投資と生産性の成長」World Bank Economic Review 14(1), 49-64。
Goldberg, Pinelopi K., Amit Kumar Khandelwal, Nina Pavcnik, and Petia Topalova(2010)「輸入中間投入財と国内製品の成長:インドの証拠」Quarterly Journal of Economics。
Javorcik, Beata Smarzynska(2004)「外国直接投資は国内企業の生産性を高めるか?後方連関を通じた波及効果の探究」American Economic Review 94(3), 605-627。
Kee, Hiau Looi(刊行予定)「現地中間投入財と外国直接投資の共通サプライヤー波及効果」Journal of Development Economics。
Konings, Jozef(2001)「外国直接投資が国内企業に及ぼす影響」Economics of Transition 9(3), 619-633。
Rodriguez-Clare, Andres(1996)「多国籍企業、連関、経済発展」American Economic Review 86(4), 852-873。
共同発行: VoxEU
著者:Hiau Looi Keeは、世界銀行研究局の貿易チームに所属するシニアエコノミスト。
画像:2014年1月16日、ロンドン市内のイングランド銀行の前を人々が通り過ぎる。REUTERS/Luke MacGregor。



