夜が長くなり、空気が冷たくなると、夕方に外出するのをやめ、居間に引きこもって、本を読みながら丸まったり、テレビの前でくつろいだりして暖かな夜を過ごす人が多い。11月の初めまでには、どんなに倹約家でも、たいていはセントラルヒーティングをつけざるを得なくなる。残念ながら、自宅を暖めるという基本的な必需品をまかなう余裕がある人ばかりではない。
従来、十分に暖かい生活水準を保つため、総所得の10%を超える額をエネルギーに費やす必要がある世帯は「燃料貧困」にあるとみなされてきた。政府の年次燃料貧困報告書によると、現在、英国の世帯のうち 200万世帯 が燃料貧困にあり、人口の10.4%を占める。当然ながら、失業者が最も深刻な影響を受けており、ほぼ3分の1が燃料貧困にあると記録されている。エネルギー料金を払えないために、昨年、英国人が実に1万人も命を落とした。
交通貧困
英国の燃料貧困率は容認できないほど高いが、交通貧困にも目を向けるべきだ。燃料貧困にある200万世帯に比べ、モータリングロビー団体RACの報告によれば、可処分所得(かつて燃料貧困の指標として用いられた基準)の10%を超える額を交通に費やしている世帯は 2100万世帯 に上る。RACによれば、交通費は平均的な世帯にとって最大の支出項目で、可処分所得の14%を占め、その大半は自動車の保有と維持に費やされている。車を持たない人の移動回数は、平均してその半分だ。
交通貧困はまだ広く議論されておらず、研究もほとんどなく、一般に受け入れられた定義もない。家庭のエネルギー費を交通支出に置き換えてこの現象を追跡するのが最も適切なのかもしれないし、あるいは、より高度な測定方法があるのかもしれない。
持続可能な交通を推進する慈善団体Sustransは、 3つの要因を組み合わせている。それは、必要不可欠なサービスへのアクセスにかかる時間、最寄りのバス停または鉄道駅までの距離、そして世帯収入だ。この考え方に基づき、同団体は、英国の地方自治体の半数で、交通貧困のリスクが高い地域(主に農村部)が見られると推計している。
農村部の自動車依存
英国国家統計局の調査によると、 英国で最も貧しい世帯 (世帯所得の下位10分の1)は、収入の31%を自動車の購入と維持に費やしている。この割合は、自動車関連費用の上昇に伴い、毎年増加している。
交通貧困が最も顕著なのは、自動車の保有がぜいたくではなく必需品とみなされる農村部だ。人口密度が低く、仕事やサービスの場所が住居から遠く離れているのが一般的な地域である。公共交通機関が概して不十分で、距離が長いため徒歩や自転車での移動も現実的でなく、村や集落に住む人にとって、車が唯一の選択肢となることがある。
英国の農村部に暮らす人々にとって、交通貧困はすでに大きな問題だ。RACによる 通勤習慣 の調査では、農村部では車の必要性がはるかに高いことが示されている。都市部の通勤者は半数以上が車ではなく徒歩や自転車で通勤するが、農村部で同じことができる人はわずか31%だ。公共交通機関は都市や町では簡単に利用できるが、それ以外の地域ではまれである。さらに残念なことに、農村部では燃料がより高く、 生活費の上昇に拍車をかけている。
交通貧困を深刻に受け止める
つまり、深刻に受け止める必要のある農村交通の問題がある。燃料貧困が政治課題に上り始めている今、交通貧困についても同様の動きが起きることを期待したい。
自家用車を所有するのが当然という私たちの考え方は、環境面で明らかに持続可能ではない。ガソリン車やディーゼル車のエンジン効率が向上しても有害な排ガスをまき散らす一方、電気自動車でさえ、その電力の大半を化石燃料発電所に頼っている。
交通貧困は、車を所有し、維持することへの執着が、社会的にも経済的にも持続可能ではないことを示している。若者、高齢者、失業者、低賃金で働く人々は、車中心の仕組みを利用する余裕がないというだけで、普通の社会生活から締め出されるおそれがある。車を買えるだけのお金がある人の多くも、それが重荷となり、ほかの活動をする余裕を失うことになる。
とりわけ農村コミュニティは、人々が移り住まざるを得なくなり、残された地域が二層社会になることで、壊滅の危機にさらされている。21世紀の社会に全面的に参加できる裕福な人々と、取り残される下層階級に分断されてしまうのだ。現在の車中心の仕組みを乗り越える必要がある。 おそらく農村部のカーシェアリングクラブ が、車両を共同所有・共有することで、その道筋を示してくれるだろう。
以下との共同制作で公開 The Conversation
著者:ダニエル・ニューマンは、カーディフ大学サステナブル・プレイシズ研究所のリサーチアシスタントである。
画像:2004年7月20日、西ロンドンのM4高速道路で、夕方のラッシュ時に列をなす車。REUTERS/Toby Melville


