2021年、資産保有者は、気候変動をポートフォリオと組織に影響を及ぼす最大のシステミックリスクに位置づけました。
世界経済フォーラムとマーサーが3年間にわたって実施した調査から、先導的な投資家はシステミックリスクを克服するために3つのステップを踏んでいることが分かりました。
調査結果をもとに、他の投資家が自らの実績を評価し、これらのステップを自身の投資慣行に取り入れるための「気候ベンチマーク」ツールが開発されました。
本報告書では、気候変動投資における最も一般的な4つの障壁を克服するために、すでに実施されている解決策も紹介しています。
世界各地の資産保有者は、気候変動に関連するリスクと機会に対応するため、投資プロセスの適応を急いでいます。最近の調査で、世界経済フォーラムとマーサーは、気候変動投資を妨げる最も一般的な課題に取り組むため、先導的な資産保有者が行っている具体的な活動を特定しました。こうした課題には、次のものがあります。
1. 移行ロードマップの策定と実施
2. 達成度と成功の測定
3. 投資先企業への積極的かつ効果的な働きかけ
4. 資産クラスおよび運用機関ごとの気候関連報告指標の策定
最も高度な投資家でさえ、必要とされる多岐にわたる活動に苦慮しています。この分野を先導する投資家に焦点を当てることで、本調査は気候変動投資に関する投資コミュニティ全体の進展を加速させています。すでに数十の資産保有者が気候ベンチマーク・ツールを活用し、世界各地の同業者と比較して自らの活動を測定しています。これにより、自らの不備を明らかにし、投資戦略に気候変動を組み込むための活動について、ビジョン、ガバナンス、実施を強化することができました。
気候変動などのシステミックリスクを克服するために投資家が踏む3つのステップ
世界の資産保有者と運用機関は、絶対リターンとリスク調整後リターンの追求に向けた変革的投資の課題に日々直面しています。世界経済フォーラムとマーサーは、調査を3年間にわたって実施し、気候変動や地政学に関連する、投資家が直面する最も一般的な課題への対処方法を明らかにしました。特に、投資家がビジョン、ガバナンス、実施に関する活動をどのように活用し、これらの課題を投資機会へと転換するかに焦点を当てました。
3つのステップは次のとおりです。
1. すでに気候変動投資に取り組んでいる世界各地の投資家による先進的な実践を理解する。
2. 現在の実践を先進的な実践者の活動と照らし合わせ、現状の不備を明らかにする。
3. 戦略目標、ステークホルダーの要件、受託者責任に沿って、気候変動投資の要素を継続的な投資意思決定に組み込むビジョン、ガバナンス、実施プロセスを改善する。
本調査では、ビジョン、ガバナンス、実施の体制が十分に整った資産保有者は、自らの「あり方」を明確に認識しており、システミックリスクに対して断固として対応できることが分かりました。
進捗をベンチマークする方法
本調査では、気候要因を投資意思決定に組み込む80を超える投資関連の活動を特定しています。先進的な実践を同業者間で比較できる気候ベンチマークにまとめることで、資産保有者コミュニティはこのツールを使って現在の活動を評価できます。

数十の資産保有者を対象としたベンチマークにより、ツールの調査結果が確かなものとなり、投資家が直面する気候変動投資の主要課題が裏付けられました。先駆者:先進的な気候変動投資の歩調を定めると題する報告書では、気候変動投資における最も一般的な4つの障壁を克服するため、すでに実施されている解決策を紹介しています。
気候変動投資を妨げる主要な4つの課題を克服する方法
1. 移行ロードマップの策定と実施
低炭素または脱炭素の世界経済への移行の速度や性質をめぐる不確実性は、リスク調整後リターンの最大化を目指す投資家に課題をもたらします。移行ロードマップは、世界経済の脱炭素化に伴う本質的に複雑で相互に関連する課題を、資産保有者固有の目標やステークホルダーの要件に応える、投資家が実行可能なステップへと落とし込みます。ロードマップの策定は、組織内の考え方を統一し、将来を見据えた方針やガバナンス上の行動計画を生み出すことにもつながります。
2. 達成度と成功の測定
標準的な投資パフォーマンス指標では、気候変動投資の活動から得られた成果を効果的に測定できません。達成度と成功を測るには、他の投資家による先進的な気候関連の実践を理解するとともに、気候関連投資の成果をどのように定義、監視、報告しているかを把握する必要があります。気候ベンチマークは、気候変動投資を投資意思決定に組み込む活動を捉えます。こうした活動への取り組みは、測定プロセスと、気候変動投資の実践を効果的に進める方法の両方に大幅な見直しを促します。
3. 投資先企業への積極的かつ効果的な働きかけ
多くのセクターで、企業への働きかけと投資引き揚げの判断は、ますます複雑になっています。投資先企業全体の長期的価値の向上に取り組む資産保有者は、自らに可能な幅広いスチュワードシップ活動を行います。社内で実施するか外部運用機関に委託するかを問わず、プログラムの成功に欠かせない特徴として、受け身ではなく、重要なリスクを特定して企業に積極的に働きかけること、そして働きかけの量より質を重視することが挙げられます。
4. 資産クラスおよび運用機関ごとの気候関連報告指標の策定
指標の策定における課題には、標準化、情報開示、ベストプラクティスの認知度の不足があります。現在、資産保有者は入手可能なデータを積極的に投資意思決定に取り入れています。データの財務的重要性とそれに伴う制約を理解することは、移行ロードマップ、運用機関のパフォーマンス、コミットメントに照らして進捗を追跡するうえで重要です。
資産保有者がこれらの分野で採用しているアプローチについて詳しくは、関連報告書先駆者:先進的な気候変動投資の歩調を定めるをご覧ください。
世界経済フォーラムの取り組みについて、金融・通貨システムの未来を形作るをご覧ください。



